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佐藤琢磨選手、インディ500優勝をファンに伝えるTCOM開催 松本カメラマンらもゲスト出演

Zoomウェビナーで250人以上のファンが参加

2020年8月28日 開催

米国イリノイ州マディソンのWorld Wide Technology Racewayから参加した佐藤琢磨選手

 8月23日(現地時間)に開催された2020インディカー・シリーズ第7戦「第104回インディアナポリス500マイルレース」で、自身2度目のインディ500優勝を成し遂げた佐藤琢磨選手は、そこから1週間もたたない28日22時(日本時間)にTCOM(Takuma Club Online Meeting)というファンクラブ向けのオンラインイベントを緊急特別開催した。

 通常のTCM(Takuma Club Meeting)は年末にリアルな会場で行なわれるイベントだが、佐藤琢磨選手はインディ500から続けてイリノイ州マディソンのWorld Wide Technology Racewayで今週末開催されるレースに向けての準備(同日にはフリー走行が行なわれる)をしているという忙しい中の参加となった。

 このTCOMでは、長年佐藤琢磨選手を撮影し続けている松本浩明カメラマン、オートスポーツ編集長 田中康二氏がゲスト出演するなど充実した内容になった。またイベントの後半にはファンが直接佐藤琢磨選手に質問するコーナーが用意され、レース中の無線で使われる用語についての質問が飛び出すなど、とても濃い内容のイベントとなった。

「ファンに直接報告したい」という佐藤琢磨選手の思いで実現したオンラインミーティング

ビデオ会議ソフトのZoomを利用して行なわれたTCOM、250名以上のファンとコミュニケーションしていた。司会は川崎かおりさん

 今回のTCOMのイベントは、ビデオ会議ソフトウェア「Zoom」を利用して行なわれた。Zoomはビジネスシーンでも一般的に利用されているビデオ会議ソフトウェアで、少人数のビデオ会議だけでなく、ウェビナーと呼ばれるオンライン形式のイベントも開催できる。

 今回はそうした機能を活用し、放送に近い形で行なわれた。参加したのはファンクラブの会員など。イベントでは毎年年末にオンサイトで行なわれているTCMの司会としてファンにはおなじみの川崎かおりさんが司会を担当した。

 川崎さんによると今回のイベントはシーズン中ではあるが佐藤琢磨選手に、「どうしてもファンの皆さんに優勝を報告したい」という気持ちがあり、それが形になったとのこと。300名近くの申し込みがあり、最終的には250名を超える参加者があったことが報告された。

松本浩明カメラマン(下)がインディアナポリスから登場

 イベントには佐藤琢磨選手ゆかりのゲストが何名か登場した。最初に呼ばれたのは、佐藤琢磨選手のオフィシャルカメラマンを務める松本浩明カメラマン。松本カメラマンはインディアナポリス・モーター・スピートウェイにそのまま居残っていて、なんとスピードウェイのゲート前からの生中継だ。松本カメラマンは「アメリカに入国するのも、インディに来るのも大変だった。お客さまが入れないのは残念だった、レースの中身は面白く、いい結果だった。そうした現場の状況を逐一伝えないといけないと考えて、noteにまとめた」と述べた。松本カメラマンが現地から佐藤琢磨選手のファンに伝えたかったことは自身のnoteにまとめていると紹介した。

【INDY】インディ500レース決勝 コロナの向こうに見えた感謝のチェッカー|ヒロ松(松本浩明)|note

https://note.com/900750/n/n520e69a579d0

 次いで、モータースポーツ総合誌「オートスポーツ」の編集長である田中康二氏が登場し、「その日は昼間に国内レースのSUPER GT第3戦があり、それをまとめたりしてからGAORAの中継を見て、ファンの皆さんと一緒に大喜びした。これを超えるインパクトを出すにはもう1勝いくしかないのではないか(笑)。ちょっと表現に困ってしまう、それぐらいの偉業だと思う。今日はこのTCOMの中で独占インタビューをさせていただけるという話で、次の金曜日に発売される予定の次号(9/18号)では、もちろん佐藤琢磨選手が表紙で、インディ500関連のページを増やして作っているところだ」と述べた。

三栄 オートスポーツ 編集長 田中康二氏(下)
auto sport 9/18号 (No.1536) | 三栄

https://www.sun-a.com/magazine/detail.php?pid=11520

2017年の優勝後よりはややゆったりとしているが、前回はなかったリモートインタビューで忙しい

佐藤琢磨選手が登場

 その後、佐藤琢磨選手が参加した。佐藤選手は「みなさん沢山のお祝いありがとうございました。感謝の気持ちしかない。素敵なチームで走って、メカニックの力もすごかった。走るからには2勝目を狙っていたけど、まさか実現されるとは。17年はいくしかないと考えてイケイケだったが、今回はフロントローから走っていてプランを立てながら走っていた。スコット・ディクソンとのレースになって最後はイエローでゴールにはなかったが、自分としてはこれ以上のリザルトはない」と冒頭のあいさつをした。

 司会の川崎さんからこの数日大変だったのでは?とふられると「17年のときは勝ったときから自分の体ではないのではというぐらいに忙しかった。今年は17時半ぐらいにレースが終わって、夜の22時にボルグワーナーと写真を撮るまでノンストップで、牛乳も汗も乾いてガビガビになった。レースの夜は何も食べないで1時ぐらいに寝て、3時に起きてカップ麺を食べたけど、興奮しているから寝ることができなくて、翌朝は7時からインタビュー。本来であればバンゲットというセレモニーがあるのだけど、今年はそれがオンラインで撮影だけだった。17年はシリーズのプライベートジェットでニューヨークなどに連れ回されて大変だったが、今年はこういう状況なので体は楽。ただし、Zoomでのオンライン取材は多い。ひっきりなしに朝から夜までスケジュールされており、お礼のメッセージも1日数通しかかけないほどだった」と述べた。

佐藤琢磨選手、オートスポーツ 田中編集長、川崎かおりさん

 その後オートスポーツの田中編集長が参加すると、(オンラインで公開される)独占インタビューが始まった。田中編集長は「時間5分とのことなので、質問は1つに絞った。レーススタートから序盤、中盤と来て最後の2スティントをどう戦ったか教えてほしい」という質問に佐藤選手は答えていた。

ミックス1がレースセッティング、ミックス2がパワーベスト、ミックス3はリスタート、ミックス4-8がリーン

 その後再び松本カメラマンが再登場し、「話長いよ!」というお約束のツッコミを入れたあと、レース後に佐藤琢磨選手のインディアナポリスの自宅で松本カメラマンと一緒にお肉を食べて、簡単なお疲れ様会を行なったことなどが明らかにされた。また松本カメラマンは「熱田カメラマンも見ているらしい、彼はまだ約束を守っていないので、ドボンする約束を守ってほしい。男の子は約束を守らないといけない、名前も”まもる”なので、熱田さんが約束を実行してもらうでいいか?」というと、佐藤選手は「いいと思います(笑)」と応じた。

再び松本カメラマンが登場

 その後、ファンの質問の時間になると、ファンからは「Car Watchという媒体に勝つ作戦について詳しく佐藤選手が話していることが全文書き起こされていた。そんな詳しいことをしゃべってしまって、ほかのチームに真似されたりしないのか?」という質問が出た。

インディ500、2度目の優勝をした佐藤琢磨選手がリモート会見 「最後まで爪を隠し、余裕を持ってレースを運べた」 - Car Watch

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1272875.html

 それに対して佐藤選手は「それは考えてなかったが、大丈夫でしょう、そんなの(笑)。僕ら関係者が見れば、何をやろうとしていたかは分かるけど、そんな簡単には真似できないと思う。例えば同じレイホールでもグラハムと僕は車若干違っていた。同じチームでデータは共有しているけど、エンジニアとドライバーのスタイルの違いが出るので、クルマは違っている。今回もう1台参加していた45号車(スペンサー・ピゴット選手)はセッティングを見失っていたので、カーブデーから30号車のセッティングをコピーした。同じクルマにして走っていた、ミーティングでもこういう走りをするよということを話しているのだけど、同じことはできない。スペンサーも才能あるドライバーだけども、ときどきの状況に順応しながら、その先どうかということを考えないとやっていくことができない。そういうことができるのがエリオ(エリオ・カストロネベス選手)であり、ダリオ(ダリオ・フランキッティ選手)のように3回以上インディ500を勝っているドライバーだ。まぁなによりも、まだ来年の契約はないので、来年走れるか分からないし(笑)」。

 また、別のファンからは「インディカーのアプリでチームの無線を聞いていると、分からない言葉がいくつかあった。燃料セーブの時はミックス2などがあったのだが……」という質問があった。

 それに対して佐藤琢磨選手は「ミックス2がパワーベスト、ミックス1がレースセッティング、そしてミックス3はリスタート用に、オーバーブーストになってしまうとペナルティモードになるのでそれにならないようにコンサバになっているモード。ミックス4~8までがリーン(筆者注:燃料が薄めの燃料節約向けセッティングのこと)。それをピットから指示されることはほとんどない。クルマには、市販車でいうところの燃費計算機に近いモノがついていて、1周ごとにアップデートされることになる。そこから出てくる数字を見ながらドライブする。フィットナンバーという言い方をするのだが、その数値よりも多く走るとガス欠になってしまうので、それを下回るようにドライブする。セナがF1を走っていたときにホンダが持たないよと言っているのに飛ばして飛ばしてガス欠になるようなペースで走っているけど、最後に帳尻を合わせてくるレースをしていた。僕もそれと同じで、最後一番大事なときにパワーベストにできるようにデジタルディスプレイを見ながら調整して走っている」と説明した。

 最後に、佐藤選手、川崎さん、そして参加したファンの皆さんがカメラをONにしてデジタル的な記念撮影が実際され、インディ500優勝をファンに伝える初めてのオンラインイベント「TCOM」は終了した。

最後はファンも参加して記念撮影