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フォルクスワーゲン初の電動SUVとなる「ID.4」はグローバル戦略車として世界中で発売

フォルクスワーゲン ブランドCEO ラルフ・ブランドシュテッター氏 記者会見レポート

2020年9月17日(現地時間) 開催

9月17日(現地時間)にフォルクスワーゲンの記者会見が行なわれた

 独フォルクスワーゲングループは、9月17日(現地時間)にオンラインで記者会見を開催し、フォルクスワーゲン乗用車ブランド CEO(最高経営責任者) ラルフ・ブランドシュテッター氏により、同社のEV(電気自動車)としては初のSUVとなる「ID.4(アイディーフォー)」などのEV戦略に関して説明を行なった。

 ID.4はフォルクスワーゲングループとしては初めての電動SUVで、同社がMEB プラットフォームと呼ぶEV向けの開発プラットフォームに基づいており、すでに発売済みの「ID.3」や、今後グループ企業のアウディから登場する「Q4 e-tron」、そしてEVに関してパートナーシップを組んでいるフォードなどからもMEBベースの車両が登場する見通しになっている。フォルクスワーゲングループはID.4の生産を欧州はツヴィッカウとエムデンで、中国では安亭(上海郊外)と仏山(広東省)で、さらに米国ではチャタヌーガ(テネシー州)のグローバル計5か所で生産する計画だと説明し、2020年までに順次生産を開始する。

 フォルクスワーゲンが実現を目指している2050年までに「Net climate neutral」(気候変動への影響ゼロ)を実現したモビリティの実現を目指すという、カーボンニュートラル(経済活動などにより排出されるCO2が吸収される量と同じになること)戦略をさらに加速していくという方針を打ちだしており、すでに導入済みのID.3や今回説明されたID.4、そして来年以降に導入が計画されている「ID.5」など、矢継ぎ早にEVを導入していくロードマップを着実に実行していく計画だ。

77kWhのバッテリーを搭載して520kmの航続距離を実現。フォルクスワーゲン初の電動SUVとなるID.4

フォルクスワーゲン乗用車ブランド CEO ラルフ・ブランドシュテッター氏

 フォルクスワーゲン乗用車ブランド CEO ラルフ・ブランドシュテッター氏は「地球の気候変動はわれわれにとって依然として大きな問題であり、われわれのこの問題に対する姿勢は何も変わっていない。フォルクワーゲングループは、グループ全体として2050年までに気候変動への影響ゼロを目指してCO2削減を推進していく」と述べ、ここ数年フォルクスワーゲングループが積極的に打ちだしている「気候変動への影響ゼロ」(Net climate neutral)、CO2の削減などといって長期目標には何も変わりが無いと説明した。

2050年までに気候変動への影響ゼロを目指すフォルクスワーゲンの企業戦略

 その中の短期的な目標として、2025年までに新しい電動化技術によるe-モビリティを実現するために、コアビジネスの再編や製品出荷の構成の変更、デジタル技術の導入といった急速な戦略の変更を打ち出しており、それを実現する手段の1つが今年発表を計画しているID.4になる。すでにフォルクスワーゲンはコンパクトEVとなるID.3の量産出荷を欧州などで開始しており、ID.4はそれに次ぐ同社EVの第2弾として計画されている。

2025年までの短期目標
CO2排出ゼロを目指す

 ID.3がハッチバックスタイルのCセグメントの車両であるのに対して、ID.4はSUVセグメントの製品で、同社のEVとしては初めてのSUVとなる。ブランドシュテッター氏によれば、標準で77kWhのバッテリーを搭載して、航続距離は最大520kmに達する。最大で125kWの急速充電も可能で、30分の充電で320kmの航続距離を実現する。パワーユニットの出力は150kW(204PS)で、快適な運転のためにアダプティブシャシーコントロールの機能が搭載されている。

MEB
ID.4のスペックなど

 このID.4は、同社がEV向けの共通基盤(プラットフォーム)として開発したMEB プラットフォームに基づいて設計、生産が行なわれる。MEBはすでに量産車の出荷が行なわれているID.3にも使われているプラットフォームで、ID.4のほか、今後はアウディのQ4 etron、EVの開発でパートナーとして提携することが明らかになっている米国のフォードも、2023年から欧州でのEVの生産にこのMEBを利用して、6年間に60万台が生産される計画であることがすでに発表されている。

 ブランドシュテッター氏によれば、フォルクスワーゲングループは2029年までに2600万台のEVの出荷を見通しているが、そのうち2000万台がMEBベースになる見通し。また、2025年までの75の新型車両は、米欧中という3つのコアマーケットで販売される計画だ。なお、フォルクスワーゲングループはこのEMBの開発に330億ユーロ(約4兆920億円)の投資を行なっているという。

ID.4

 ブランドシュテッター氏は「われわれはこのID.4を欧州、北米、中国などの主要市場で生産し販売していく。もちろん他の地域を忘れているという訳ではなく、他の市場でも投入を検討していきたい。例えば、iPhoneがまさにそうであるように、長い航続距離や急速充電などの優れた技術はグローバルに受け入れられると考えており、ID.4はフォルクスワーゲンにとっての最初のグローバルに販売されるEVとなるだろう。ID.4のワールドプレミアは来週計画している」と述べ、ID.3は欧州のみをターゲットにした製品になっているが、ID.4は欧米中で生産と販売が行なわれ、日本のようなその枠に入らない市場でも販売される可能性があることを示唆した。

グローバル戦略車のID.4。製造は欧米中それぞれで行なわれ、中国でも2020年末までに量産を開始し、2021年に販売へ

フォルクスワーゲンブランド e-モビリティ担当取締役 トーマス・ウルブリッヒ氏

 次いで登壇したフォルクスワーゲンブランド e-モビリティ担当取締役 トーマス・ウルブリッヒ氏は、同社のEV車両の取り組みとID.4に関して説明した。

フォルクスワーゲンによるEVの取り組み
充電器の取り組み

 ウルブリッヒ氏によれば「2019年にID.3の量産を開始し、今年の夏に販売を開始した。そしてこの秋にはID.4のワールドプレミアを執り行ない、今年末までに中国で量産を開始する。市場への投入は来年になるだろう」と述べ、ID.4の今後のスケジュールに関してまずはワールドプレミアが来週に行なわれ、その後年末までに中国の工場などで生産が開始され、2021年に製品が市場に投入される計画だと説明した。またそれに向けて、フォルクスワーゲングループとしても充電器やそれを利用するためのスマートフォンアプリなど、充電インフラの充実に力を入れていると説明した。

フォルクスワーゲンの2019年の生産数の3分の1はすでにSUVに
2025年に年産150万台のEV生産を目指すフォルクスワーゲンにとって、その3分の1がSUVになると、ID.4は2025年に年産50万台となる

 また、「ID.4はフォルクスワーゲングループにとって最初のSUVタイプのEVとなる。2019年の段階でフォルクスワーゲングループ全体の約3分の1はSUVになっており、2025年にはそれが50%に達する見通しだ。そうしたSUV市場にフォルクスワーゲンのEVとして初めて投入されるID.4は、2025年に年産150万台に達するEVの中で、大まかに言って年産50万台に達するだろう」と述べ、フォルクスワーゲングループにとって、ID.4はフォルクスワーゲンが生産するEVの中で約3分の1のボリュームを占める重要な製品になる見通しだとした。

ID.4はグローバルに生産が行なわれる戦略車両に

 そして、ID.4はフォルクスワーゲングループにとってグローバル戦略車としての役割が与えられているため、生産もグローバルに行なわれると説明した。最初に生産が開始されるのは中国の上海郊外にある安亭(アンチン)と広東省の仏山(フッサン)にある2か所の工場で、2020年末までに生産が開始される計画だ。また、2022年には米国のテネシー州チャタヌーガの工場でも量産が開始される計画になっている。

 同社のお膝元である欧州では、ツヴィッカウですでに生産が開始されており、そのノウハウが中国の2つの工場と米国の工場にコピーされて生産される。また、チェコにあるグループブランドの工場などにもそのノウハウはコピーされる見通しだとウルブリッヒ氏は説明した。

まとめ

 ウルブリッヒ氏は最後に「ID.4はゲームチェンジャー(筆者注:競争のルールを変えてしまうような革新的な製品という意味)な製品になる。CO2削減やEV戦略にとって非常に重要な製品になるだろう」と述べ、ID.4がフォルクスワーゲンの企業戦略である2050年までに気候変動への影響ゼロを実現する上で重要なグローバル戦略車になると強調した。