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フォルクスワーゲン、初のフルEVコンパクトSUV「ID.4」の生産をツヴィッカウ工場で開始

約12億ユーロを投資してEV専用工場へと改装

2020年8月25日(現地時間)発表

ツヴィッカウ工場で「ID.4」の最初の生産車の横に立つフォルクスワーゲンブランドCEOのラルフ・ブランドシュテッター氏

 フォルクスワーゲンは8月25日、初のEV(電気自動車)SUVである「ID.4」の生産をツヴィッカウ工場(ドイツ・ザクセン州)で開始したと発表した。なお、ID.4は9月末に世界初公開される予定。

 ID.4の量産はフォルクスワーゲンが“e-モビリティ”において世界のマーケットリーダーになるという目標達成に向けた重要な一歩という。そしてフォルクスワーゲングループは、2024年までに約330億ユーロを投資し、そのうちの110億ユーロをフォルクスワーゲンブランドに割り当てると発表。さらに、フォルクスワーゲンブランドでは、2025年に150万台のEVを生産するという目標を掲げている。

 フォルクスワーゲンブランド最高経営責任者(CEO)のラルフ・ブランドシュテッター氏は「フォルクスワーゲンは今回のID.4をもって、世界最大の成長セグメントであるコンパクトSUVクラスに新たなEVで進出します。ID.4は、ID.3に続き、モジュラーエレクトリックドライブマトリックス(MEB)をベースにした2番目のモデルです。将来的にこのモデルは、ヨーロッパおよび中国で、その後は米国でも生産・販売する予定です。これにより、世界規模でMEBプラットフォームのスケールメリットを生かし、“ID.”ファミリーを成功に導くための経済的基盤を構築します」と述べている。

ツヴィッカウ工場でID.4のドアアセンブリの生産ラインを見学するラルフ・ブランドシュテッターCEO

 また、e-モビリティ担当取締役のトーマス・ウルブリッヒ氏は「フォルクスワーゲンブランドにおけるe-モビリティへの変革プロセスは、予定通りに進んでいます。今回、ID.3に続き、ID.4の生産が開始されました。この数か月間で直面した大きな社会的課題を考えると、ID.4の生産を開始できたことは、大きな成果と言えるでしょう。特にフォルクスワーゲンザクセンのIDチームのすべてのメンバーに感謝します。“ID.”ファミリーの2番目のモデルは、つい最近まで内燃エンジン搭載車を生産していたこの工場から、既にラインオフしているのです」とコメントしている。

 ツヴィッカウ工場は、e-モビリティへの移行において重要なポジションであり、このような大規模な自動車工場が、e-モビリティ専用工場へと全面的に改装するのは初めてのことで、改装への投資額は約12億ユーロという。

 すべての改装作業は予定通りに2020年内に完了し、EV専用工場としてフル稼働する最初の年となる2021年には、モジュラーエレクトリックドライブマトリックス(MEB)をベースにする約30万台のEVが、ツヴィッカウ工場からラインオフする予定となる。そしてこの拠点は、ヨーロッパ最大かつもっとも効率的なEV工場となり、フォルクスワーゲンのグローバルな生産ネットワークの変革を先導する役割も果たすという。

 また、ID.4を世界レベルで展開する準備も本格化させていて、すでに中国の安亭工場では、ID.4の量産試作を開始していて、米国のチャタヌーガ工場では2022年からID.4の生産を開始する予定となっている。

フォルクスワーゲン初の電動SUV「ID.4」の概要

2020年3月に公開されたID.4のプロトタイプ

 ID.4は、フォルクスワーゲンのモジュラーエレクトリックドライブマトリックス(MEB)がベース。MEBは、e-モビリティが提供する可能性を最大化するために開発された、EV専用のプラットフォーム。

 また、0.28の低い空気抵抗係数(Cd値)と、拡張可能なバッテリーシステムにより、500km以上(WLTP)の航続距離を実現。さらに広々とした室内スペースも確保し、力強いプロポーションによる非常にモダンなエクステリアデザインを特徴としている。

 最初は後輪駆動モデルが発売され、後日電動4輪駆動バージョンが追加されるという。サンドイッチ構造の高電圧バッテリーをアンダーボディに搭載したことで、ドライビングダイナミクスの面で理想的な低重心を実現したと同時に、非常にバランスの取れた車軸荷重配分を達成。

 新しいモジュラーエレクトリックドライブマトリックス(MEB)をベースにするすべてのモデルと同様、ID.4は、コンパクトな電気駆動テクノロジーにより、非常に広々とした室内となっている。コクピットは広範囲にわたりデジタル化され、各種機能の操作は、主にタッチパネルと直感的な操作が可能なボイスコントロールで行なうという。

2020年3月に公開されたID.4のプロトタイプ

「ID.4」のカーボンニュートラルでの生産

 パリ協定の気候目標に従い、2050年までに完全にカーボンニュートラルな企業になるという目標を設定しているフォルクスワーゲンブランドにとって、ID.4とID.3は重要な節目となるモデル。ID.3同様、その姉妹モデルとなるSUVタイプのEVであるID.4も、持続可能性に関して新たなベンチマークが設定されている。

 ザクセン州で行なわれている生産は、カーボンニュートラルであり、電動SUVはカーボンフットプリントがゼロの状態で、ユーザーに納車される。多くのエネルギーを必要とするバッテリーセルの生産は、グリーン電力のみを使用して行なわれている。

ID.3

 動画ではツヴィッカウ工場の改装工事の模様やラルフ・ブランドシュテッターCEOを始め、工場のスタッフなどのインタビューの模様も公開されている。

Volkswagen steps up electric offensive: Series production of ID.4 begins in Zwickau(17分20秒)