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予選でフロントロー独占のホンダ NSX-GT、チーフエンジニア 佐伯氏「鈴鹿は比較的NSX-GTと相性がいいと考えている」

GT100戦目の塚越選手へ「最終戦ではチャンピオン争いの真ん中に入れるように」

2020年10月24日~25日 開催

本田技術研究所 HRD Sakura LPL チーフエンジニア 佐伯昌浩氏

 SUPER GT 第6戦「2020 AUTOBACS SUPER GT Round6 FUJIMAKI GROUP SUZUKA GT 300km RACE」(以下、第6戦鈴鹿)が、10月24日~25日の2日間にわたり鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開催されている。10月24日には予選が行なわれ、GT500は8号車 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組、BS)がポールポジションを獲得、2位にも64号車 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/大津弘樹組、DL)が入りNSX-GTがフロントローを独占した。

 そのほかにもホンダ勢は16号車 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀/笹原右京組、YH)が6位、ポイントランキングでランキング6位の100号車 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組、BS)が8位、ポイントランキング3位の17号車 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット組、BS)が9位と、ウェイトハンデが重い組となるランキング上位の中では比較的上位グリッドにつけている。決勝レースではランキング上位のGRスープラ勢との直接対決となり、できるだけ上位を目指すレースとなる。

NSX-GTがフロントロー独占、SUPER GT第6戦鈴鹿 予選で8号車 ARTA NSX-GT(野尻/福住組)が2戦連続3度目のポールポジション

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1285069.html

 ホンダ NSX-GT開発をリードする本田技術研究所 HRD Sakura LPL チーフエンジニア 佐伯昌浩氏の予選後オンライン会見をお届けする。

最大ウェイトの鈴鹿で、比較的ウェイトが小さい2台が確実にフロントローに来たことの意味は大きい

第6戦鈴鹿でポールポジションを獲得した8号車 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組、BS)

──それでは冒頭に佐伯氏より今日の振り返りを。

佐伯氏:第6戦鈴鹿は、シーズン最大のウェイトハンデになる。その中で8号車、64号車の2台がウェイトハンデも小さいと言うことも影響して、予選でワンツーとしっかりフロントローに並べることができた。ほかに目をやると、ホンダの中でランキング最上位の17号車は、3段階リストとリクター制限という苦しい中でもしっかり9位に入り、同じようなハンデのライバル勢の前からスタートすることができる。100号車、16号車の2台もハンデウエイト相当の順位をしっかり確保することができている。明日は予選順位から順位を落とさないレースができればと考えている。

 鈴鹿は比較的NSX-GTと相性がいいと考えているので、明日は少しでも前にいってポイントランキングを上げることを目指すので応援よろしくお願いしたい。

──前回のレース(第5戦富士)では16号車のエンジンを2基目に変更していましたが、今回のレースでは残りの4台もすべて2基目に変更したのか?

佐伯氏:はい、16号車以外の4台にも2基目のエンジンを入れている。

──前回のレースでは16号車で2基目のエンジンでは設定に苦労しているという話が出ていたが?

佐伯氏:前回16号車で苦労した分、今回ほかの4台は比較的順調にいっている。しかし、台数が増えた分だけ、マップ調整とか制御データのチューニングという部分はやはり残っており、すべてが2基目のエンジンの性能を出し切っているという状況にはまだいけていないと考えている。

──2基目のエンジンではストレートで遅れをとっている分を取り返したいというお話しだったが、それは実現できているのか?

佐伯氏:前回の鈴鹿とはウェイトが違ったりしているので、そこの評価は難しい。ただ、大きなビックステップではないという部分は感じているので、この先上がってきたデータとかマップの見直しなどにより今回出し切れなくても、次のレースにはあわせられる形で合わせこみをしていきたい。

──第2戦富士に次いで、NSX勢がフロントローを独占したが、こうした結果が出ると思っていたか?

佐伯氏:第3戦鈴鹿の状況を見ていて、NSXと鈴鹿、この一発のタイムという部分に関しては相性がよいと考えてきた。その時と比べて車体のセットアップも見えてきて、自分達の良いところがわかってきたこともあり、ハンデウェイトが軽い車両は前に並べることができたと考えている。

 明日は気象条件や各タイヤメーカーさんが用意したタイヤに依存する部分もあり、実際ロングランをしてみないとわからない部分もあるが、各タイヤメーカーさんもこの気候、路面温度に合わせたタイヤを持ち込んでいるので、それが大きく外れない限りは上手くいくのではと考えている。

──ブリヂストンを履く8号車と横浜ゴムを履く16号車はウェイトハンデがあまり離れてないのに差がついている。そこの差はエンジンの燃料マップなどのセッティングによるものなのか? それともタイヤによるものなのか?

佐伯氏:タイヤメーカーさんが変わると、車両側のセットアップも持ち込んだタイヤに合わせたセットアップになってくる。その意味で、各タイヤメーカーさんが持ち込んだタイヤにどう合わせこんでいくか、それがベストタイムの差となって現われていると考えている。

17号車と100号車は鈴鹿ともてぎで上位を目指し、ポイントをリードして最終戦富士を迎えられればチャンピオン争いの可能性がある

NSX-GT勢の中でランキングトップに立つ17号車。ドライバーの塚越広大選手は、第6戦鈴鹿がSUPER GT100戦目。特別なマーキングがボンネットに施されている

──今回のレースで17号車の塚越広大選手がSUPER GT100戦目の区切りを迎えることになる。それに対してコメントを。

佐伯氏:自分でもあれと思ったのだが、塚越選手がもう100戦目を迎えるとは……感慨深い。SUPER GTではホンダ一筋、所属チームのリアルレーシング一筋というこでやっていただいていて、金石監督の下でずっとリアルレーシングを盛り上げようとがんばってきていただいていて、今年はこのままホンダ勢のランキングトップをキープしてもらい、最終戦ではチャンピオン争いの真ん中に入れるようにがんばってほしい。

──予選2位に入った64号車だが、夏の気温の高い鈴鹿でもポールを獲り、今回異なる気温、路面温度の鈴鹿でも2番グリッドを獲得している。午前中の公式練習でも速かったし、64号車は鈴鹿で調子が良いという印象があるが、その辺りは佐伯氏としてはどう見ているか?

佐伯氏:鈴鹿で暖かいときでも、涼しいときでもしっかりタイムが出せるようになっているのはダンロップさんの進化だと考えている。今年は鈴鹿が第3戦と第6戦ということでウェイトハンデの部分が影響していることも否定できず、そこを考慮に入れるとこの半分ぐらいなのかという感触はある。もうちょっと欲しいかなというのと、ロングラン性能というのがついてくると、チャンピオン争いの中に加わっていけるポテンシャルがあると感じています。

──64号車だけ鈴鹿で良いセットを見つけているとかそういうこととは違う感じか?

佐伯氏:セットアップがそんな大きく違うっていう話も聞こえてこないので、このコースのマッチングが主要因だと思う。

──明日の決勝レースに向けては,8号車と64号車はもう優勝を狙っていくという戦いなるが、チャンピオン争いに関しては17号車と100号車が重要になる、その周囲には直接争っているGRスープラ勢がいる。明日はそのあたりを意識しながら戦う感じになるか?

佐伯氏:ホンダとしてはこの予選の順位のままチェッカーを受けてくれればいいのにぐらいの並び(笑)。ただ、実際にレースになると、予選順位から落ちていくクルマもあれば、最近のレースでのGRスープラがそうであるように重いクルマが上位に上がってくるということになると思う。

 その中でも17号車と100号車が他のメーカーのランキング上位の車両よりも前のグリッドにいることは重要だと考えている。ただ、勢力図ということを考慮に入れると、我々はまだチャレンジャーの側だと考えている。

 特に最終戦は富士で、開幕戦のようにノーウェイトのレースになるし、すでに3戦戦ってきて厳しいレースになるということも見えてきているので、なんとか今回の鈴鹿と次のツインリンクもてぎ(第7戦)で食らいついていかないといけないと考えている。

──そうすると、鈴鹿とツインリンクもてぎの2レースで可能な限りポイントを稼いで貯金を少しでも多くして最終戦を迎えたい、そういうイメージか?

佐伯氏:そのとおりだ。できればランキング的には上に立った状態で富士を迎えられれば、チャンピオンを獲る可能性はまだあるという状態で迎えられると思っている。その意味でこの2レースが非常に重要だ。