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自工会、2050年カーボンニュートラルに向けた取り組み説明会 総理方針に貢献するため自動車業界を挙げて全力でチャレンジ

2030年半ばに政府がガソリン車の新車販売を禁止するとの報道について「多彩なシナリオを持つ必要がある」

2020年12月14日 開催

菅総理の2050年カーボンニュートラルを目指すとの宣言について、自工会として自動車業界を挙げて全力でチャレンジすると語られた

 自工会(日本自動車工業会)は12月14日、2050年カーボンニュートラルに向けた基本的な考え方について、オンラインで説明会を開催した。

 政府は10月26日の所信表明演説で、製品が製造されてから廃却されるまでの全体CO2排出量と吸収量をプラスマイナスゼロにする“カーボンニュートラル”を、2050年までに達成するという政策目標「2050年 カーボンニュートラル宣言」を打ち出した。

 この一環として、12月上旬には「2030年半ばに政府がガソリン車の新車販売を禁止する」との報道が行なわれ、これを追うように東京都からは2030年までに都内で販売される新車を電動車に切り替える方針が打ち出されるなど、衝撃的なニュースが相次いでいる。

 今回の説明会はこうした一連の報道を受け実施されたもので、環境技術・政策委員会 委員長の三部敏宏氏が出席し、改めて2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みについて紹介した。

環境技術・政策委員会 委員長の三部敏宏氏(写真は「クラリティ フューエルセル」発表会のときのもの)

 三部氏はまず自工会としての基本的な考え方について触れ、「菅総理が2050年カーボンニュートラルを目指すと宣言されたことは、わが国の国際ポジションを高める英断であったと考えています。総理方針に貢献するため、自動車業界を挙げて全力でチャレンジしていきます」とする一方で、2050年カーボンニュートラルは画期的な技術ブレークスルーなしには達成が見通せない大変むつかしいチャレンジとし、「欧米中と同様の政策的・財政的措置等の支援が必要」と述べる。また、自工会会員各社も年3兆円に上る研究開発費を投じて最大限の努力をしているものの、「研究開発および設備投資支援の維持・拡充」「欧米中並みの脱炭素エネルギーインフラ整備」「電動車の需要喚起(補助金、減税制度の維持・拡充等)」といった政府の支援が必要だと訴える。

 一方、自動車のカーボンニュートラル化に必要なこととして、クルマを使用(走行)する段階でCO2排出量を抑えるだけでなく、材料や部品・車両の製造、ガソリンの燃料製造やEV車で用いる電気の発電など、全ての段階で発生するCO2をゼロにしていく必要があるという。そのため、「自動車のカーボンニュートラル化は自動車業界の取り組みだけでは対応がむつかしく、国のエネルギー政策そのものと関連があることをご理解いただきたい」と述べる。

 また、カーボンニュートラルの実現に向けた課題として、サプライヤーを含む生産の脱炭素化が進まなければ欧米への輸出が阻害され、競争力を喪失する可能性がある。そのため部品/車両の製造、燃料の製造時を含めたCO2削減(再エネ化)は必要だが、再エネの入手性やコスト面の課題が産業競争力に大きく影響するとしており、「日本でも安価な再エネの普及が必要になる」と三部氏はいう。

自動車産業の日本での位置付け
自動車のカーボンニュートラル化のポイント

 日本の運輸部門のCO2排出量の推移を見ると、2013年を基準年としてパリ協定における2030年度目標(2030年度までに2013年度比で26%削減するという目標)に向けて着実に削減が進んでおり、鉄道、船舶、航空をのぞいた道路交通におけるCO2排出量の内訳(2018年度実績)をみると、乗用車が58%、貨物(普通24%、小型16%)が40%となっており、「乗用車、貨物車の削減を進めていく必要がある」(三部氏)。

 その乗用車のCO2排出量の削減が進んできた背景として、次世代自動車(HEV[ハイブリッド車]、EV[電気自動車]、PHEV[プラグインハイブリッド車]、FCEV[燃料電池車]、CD[クリーンディーゼル車]が政府による普及促進策が開始された2009年から四輪車販売に占める割合が大きく増加し、2019年度の乗用車新車販売台数に占める割合は38.9%。この数字をもって「2019年度の日本における電動車比率は約4割に達しており、電動車比率は世界2位、電動車の台数では世界1位と決して日本が出遅れているということはありません。2050年に向けた過渡期では引き続き高性能HEVの普及を進め、足下のCO2排出量削減を進めることによって大気中に蓄積されるCO2量をできるだけ少なくしていくことが重要と考えます。今後ゼロエミッション車が大量普及していくためには、充電ステーションや水素ステーションといったインフラ設備の整備やそれらの促進策が必須になる」と三部氏は説明した。

運輸部門のCO2排出量推移
次世代自動車の販売台数比率
クルマからのCO2排出を減らすには

 自工会は3月に地球温暖化対策に係わる長期ビジョンを策定。2015年12月にCOP21で地球温暖化対策の国際枠組み(パリ協定)が採択され、日本政府は「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を2019年6月に策定。最終到達点としての脱炭素社会を掲げ、それを今世紀後半のできるだけ早期に実現することを目指すとともに、2050年までに80%の削減に取り組む。その中で、自動車については2050年までの長期ゴールとして、1台あたり温室効果ガス8割程度削減を目指し、究極的なゴールとして“Well-to-wheel Zero Emissionチャレンジ”に貢献するとしている。

地球温暖化対策に係わる長期ビジョン
ゼロエミッション化に向けた具体的な取り組みと課題
世界の電動化の状況と課題について
水素社会の実現に向けて
次世代自動車の特性と活用事例

 なお、説明会のあとに行なわれた質疑応答で、2030年半ばに向け政府がガソリン車を販売を禁止するという報道があるが、その点について自工会としてどのような考えをもっているか聞かれた三部氏は、「2030年半ばに電動車となっていくという話ですが、自工会として現段階でお答えできないですが、マイルストーンについては地域地域のエネルギー事情やクルマの用途もさまざまで、2050年のカーボンニュートラルに向け多彩なシナリオを持つ必要があると考えています。マイルストーンについては十分な議論をした上で明確にしたいと考えている」とコメント。

 また、国内で販売される自動車のうち4割が軽自動車であり、軽自動車におけるハイブリッド化が進んでいない状況の中で2050年のカーボンニュートラルに向けてどのように取り組んでいくか聞かれ、「軽自動車についてはハイブリッドがどう、EVがどうという話を政府としているわけではなく状況を承知していないので、現段階ではコメントできないですが、どの領域も聖域なく2050年に向けてやっていかないと達成はむつかしいと考えているので、軽自動車に関しても十分な議論をして目標を定め、カーボンニュートラルに向けて進んでいきたいと考えている」と述べている。

まとめ