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マツダ初のEV「MX-30 EV MODEL」説明会 バッテリー容量35.5kWhはCO2削減とユーザーニーズを両立する最適解
販売面での独自の取り組み、環境面で今後目指していく方向についても説明
2021年1月28日 11:30
- 2021年1月28日 発売
- 451万円~495万円
マツダは1月28日、EV(電気自動車)「MX-30 EV MODEL(エムエックス サーティ イーブイ モデル)」を発売した。グレードは「EV」「EV Basic Set」「EV Highest Set」の3種類で、価格はEVが451万円、EV Basic Setが458万7000円、EV Highest Setが495万円。
MX-30 EV MODELの発売に先駆けて行なわれたオンライン説明会では、マツダが目指すカーボンニュートラルへのロードマップにおけるMX-30 EV MODELの位置付けや、同社初となるEVの販売面での取り組み、さらに、同社が目指す環境や心豊かな人・社会の実現を目指す取り組みなどが紹介された。
MX-30 EV MODELと過ごす時間を通じて、日々をより豊かにする生活体験を届けたい
説明会では、2050年のカーボンニュートラル化に向けたロードマップにおけるMX-30 EV MODELの位置付けについて、マツダ 商品本部 MX-30主査の竹内都美子氏が解説。
マツダでは、MX-30 EV MODELを「カーボンニュートラル化に向けた考え方を取り込んだ新しい考え方に基づき進化していくEVの第一歩」と位置付けており、開発の企画段階から製造過程や発電時の電源構成を考慮して、走行中のCO2だけでなく燃料の発掘や発電といったエネルギーの生成過程を含むWell to Wheel視点でのCO2削減が重要と考え、自動車の製造、物流、廃棄、リサイクルまでを含むLCA(ライフサイクルアセスメント)の考え方に基づいて、CO2の削減とユーザーニーズを両立する最適な電池容量を検討。電力の再生エネルギー比率が高い欧州において、LCAでCO2をディーゼル車以下にすることを目指し、LCAのCO2の目標を達成しながら使用環境において実用的な航続距離を確保するための最適なバッテリー容量を35.5kWhとしたという。
使用環境は主に通勤や街中での買い物といったデイリーユースを想定。また、今後も市場環境の変化や技術進化に応じてEVの最適な姿は変化していくと考えているといい、日々変化していく生活状況の中で、少しでも自分の目で見て、手で触れて、体験することの楽しさを、クルマと過ごす時間を通じて手伝いたいとした。
MX-30は価値観やライフスタイルに合わせてパワーユニットを選べるよう、マイルドハイブリッドやEVなど電動マルチソリューションを準備。「乗り込んだ瞬間から心がほっと落ち着く静けさに加え、MX-30 EV MODELでは走行中も運転とお客さまとの会話をお楽しみいただける空間を目指しました。EVの特徴を活かして、お客さまがご使用されるさまざまなシーンで、見たままを思い通りに運転でき、よりスムーズで洗練された意のままの走りをお楽しみいただきたい」と竹内氏は語った。
1デイモニターや専用フリーダイヤルなど、購入に不安を抱えやすいEVだからこその販売施策
日本ではまだあまり普及が進んでいないEVを販売するにあたり、EVを購入するにあたっての不安を少しでも取り除き、「わたしらしく生きる」をサポートしていくための活動について、マツダ 執行役員 国内営業担当の田中浩憲氏が説明。
田中氏は「新しいモビリティあるEVは、日本ではまだ普及フェーズに入るスタート地点にあります。また、EVにおける技術や周辺環境においても、変化している途中段階にあります。そのため、お客さまはまだまだEVを使うことへの不安や心配を持たれており、今後の技術進化も予想されることから、いまEVを購入するべきか悩まれている状況であると認識しております」とEVを取り巻く現状を紹介。この状況における購入検討者の不安や悩みを少しでも取り除き、安心してEVを購入し、購入後の保有もサポートする4つの取り組みについて説明した。
1点目は、購入前に航続距離や充電方法などに関する不安を払拭できるよう、MX-30 EV MODELを1日試乗できる機会を提供。実際に充電を体験してみたり、生活圏で航続距離の感覚をつかんだり、走行性能を体感したり、EVならではの使用環境を自由に確認できるようにするという。
2点目は、初めてEVを検討・購入する人も安心できるように、購入前の検討段階から購入後まで、すべての困りごとに対応する専用フリーダイアルを設置。不明点や悩みについて、オペレーターが迅速に応えるとした。
3点目は、購入後のユーザーにバッテリーに優しい使い方をお伝えする仕組みを導入。EVの駆動用バッテリーは車両の保管状態や充電方法などによって寿命が変化するため、バッテリーに優しい使い方をすることで劣化を抑制し、航続距離を長いまま維持することで資産を守るという。これらのサポートはサービス入庫時やスマートフォンを通じて、ユーザーに伝えていく。
4点目は、EVの買い方として、購入時に3年~5年後の車両残価を保証する残価設定型クレジットの「マツダスカイプラン」を提案。マツダスカイプランを活用することで、MX-30 EV MODELに乗り続けることも、ライフスタイルや使い方に合ったクルマ、新しく進化したクルマに乗り換えることも可能。「変化の激しい時代だからこそ、いつでもお客さまが“わたしらしく生きる”ことを応援します」とした。
なお、マツダスカイプランで購入した場合、登録乗用車すべてにおいて3年後の残価55%を保証する取り組みを2017年から継続。MX-30 EV MODELに関しても、EVの残価設定としては破格となる3年残価率55%として、月々の支払いを抑えることで、買いやすさと買い換えやすさの両方を提供し、EVライフをサポートするとした。
「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」に基づくマツダの環境・人に対する取り組みとは
また、2017年に発表した「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」に基づいた取り組みについて、マツダ 執行役員 R&D管理・商品戦略・技術研究所担当の工藤秀俊氏が説明。
この宣言では「美しい地球と心豊かな人・社会の実現を使命と捉え、クルマの持つ価値により人の心を元気にすることを追求し続けます」と表明。地球環境保護について目指す理想の姿として「温暖化の抑制」「大気汚染のないきれいな空気」を実現するとして、2050年のカーボンニュートラル化に挑戦しているという。
そのソリューションの1つとして、地域の発電事情に適した多用な電動車を準備し、再生可能エネルギーの高い地域にEV、プラグインハイブリッドを導入。さらに、将来のEVシフトに備え、EV専用プラットフォームの開発にも着手する計画であるとともに、エネルギー密度に優れる再生可能液体燃料の普及に向けて産学官連携で取り組みを推進。これにより、Well to Wheel、LCAの視点でのCO2を網羅的に削減可能と考えているという。同時に、製造時のCO2の削減を進めるために、工場やオフィスのグリーン化を行なう投資を実行し、第1弾となる太陽光発電によるEVの充電設備が5月に稼働予定と紹介した。
これらの考えに基づき、2030年に生産するすべてのクルマを電動化することを宣言し、電動化マルチソリューションを準備。工藤氏はMX-30 EV MODELのことを「LCAにおけるCO2削減の考え方と実際の使われ方を考慮した上で企画した、新しい考え方に基づくEV」と紹介。MX-30 EV MODELは35.5kWhという比較的容量の小さいバッテリーを搭載し、大容量電池を搭載したEVに比べると航続距離は短くなるため、不安なく長距離を走りたいと希望する人に対しては、ロータリーエンジンを発電機として活用するマルチ電動化技術を準備することで、多用なニーズに応えていくとした。今後、電池の技術進化や工場のグリーン化の進捗によって、LCAへの最適値が変化するため、電池容量はそれに応じて最適化していくとのこと。
また、2018年に公表していた電動化比率については、EV、プラグインハイブリッドの普及において市場環境の変化により加速していると言い、電動化比率を正確に予測することは難しいとしながらも、「今後増えるであろうということは間違いない」と述べ、「最終的な電動車の割合はお客さまが選ぶ結果でありますが、私たちはそのお客さまの要望に迅速かつ柔軟にお応えできるよう準備する」と表明。生産施設の汎用化・フレキシブル化を行ない、有効活用することで電動化比率の変化に機敏に対応する準備を進めていくとした。
人・社会への貢献については、コロナ禍における新しい生活スタイルへと変化する中で、クルマの持つ安心・安全でパーソナルな空間、移動手段といった価値において、貢献していくと紹介。また、かねてより多様な人材が活躍する社会に貢献できると考えており、働く場所や時間に囚われない新しい生き方が定着する中で、人々の能力を活かす時代が加速しつつあると認識。それを考える上で、数年前に「ロードスター」の手動運転装置を開発する際に下肢障がい者の方が「助手席や後席、自動運転車などに乗るというオファーではなく、自分で操作するチャンスをいただけたほうが嬉しい。なぜなら失ったものを取り戻せるからだ」というコメントがヒントになったという。
工藤氏は最後に「マツダはクルマを必要としているすべての人々に寄り添える自動車企業でありたい」と願っていると述べ、1961年に発表した「R360クーペ」の手動運転装置に込めた当時の経営者や先輩の想いを継承し、クルマをこよなく愛し、クルマを通じて地球、社会、人への貢献を誓ったコーポレートビジョンを実現するため、「いかなる時代においてもこの信念をぶらすことなくクルマづくりを行なっていきたい」と結んだ。