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ホンダ、社長交代記者会見 八郷現社長「やり残したことはない」、三部次期社長「自らをチャレンジャーとして職務に臨む」

2021年2月19日 発表

ホンダが社長交代に関する記者会見を行なった

「やり残したことはない」と現社長 八郷隆弘氏

 本田技研工業は2月19日、専務取締役の三部敏宏氏を、2021年4月1日付で代表取締役社長とし、現代表取締役社長の八郷隆弘氏を同日付で取締役とする人事を発表。同日17時から社長交代に関する記者会見が行なわれた。また、6月に開催予定の定時株主総会にて、三部氏は取締役代表執行役社長に就任し、八郷氏は退任する予定という。

本田技研工業株式会社 現 代表取締役社長 八郷隆弘氏

 記者会見で八郷氏は、2015年のまさに業界全体が100年に1度の大転換期に突入するタイミングで前任の伊東孝紳氏から引き継いで就任。また、そんな時代の中でホンダが存在を期待される企業であり続けられるように、既存事業の盤石化と将来の成長に向けての仕込みに重点を置いて進めてきたと回顧。

 特に四輪事業については「CASE」や「MaaS」など新しいサービスが生まれるなか、自然災害などかじ取りの難しい6年だったが、事業体質強化のための商品開発体制の大変更、グローバルでの生産能力の適正化など、従来のやり方にはとらわれない抜本的な改革を進めてきたという。また、それと同時に狭山や欧州などグローバルでの工場の終了など大きな決断もしてきたことを紹介。

 それでも中国では、この5年で倍近くまで生産能力を拡大させるなど、グローバルでの選択と集中をしてきたことで、打つべき手は出揃い、これからは施策の確実な実行とその成果の刈り取りの段階に入っていると判断したことを明かした。また、もう1つの重要なポイントとして、ホンダの原点である「社会の役に立つ」という想いと、モビリティメーカーの責務として「2050年カーボンニュートラル」と「2050年交通事故死者ゼロ」の実現。さらにユーザーの夢を実現する新しいホンダの価値を提供するために、2020年4月に研究所の体制も大きく進化させたという。

 そして、こうした一連の取り組みにより、新しい時代に向けてホンダが走り出す準備が整ったと判断し「新しい出発は新たなリーダーで」と、タスキを託す考えに至った経緯を語った。

 2050年のカーボンニュートラルと交通事故死者ゼロの実現は決して簡単なものではないことも踏まえたうえで、三部氏とは以前から議論も進めてきたことを明かし、「三部氏は豊富な知識と力強いリーダーシップ、バイタリティーと行動力を持った環境対応とエネルギーのエキスパートなので、すべてを乗り切って成果の花を咲かせてくれると思いバトンタッチすることを決断した」という。

 八郷氏は最後に、「研究所を新しい体制に変え、自分の思い描いた体制に変更できた。経営陣の意思統一もできたので、やり残したことはない」と語り、早く電動化を加速させるためにもバトンタッチを急いだという。また、2021年6月に新体制に移行するにあたり「取締役」「相談役」は必要ないと決まり退任を決意したと明かし「6年間ありがとうございました」と深く頭を下げて締めくくった。

「自らをチャレンジャーとして職務に臨む」と三部敏宏氏

2021年4月1日付で代表取締役社長になる三部敏宏氏

 八郷氏からタスキを引き継ぐ決意を固めた三部氏は冒頭で「重責だが自分の持ち味を最大限に発揮し、新しいホンダをリードしていきたい」と決意を語った。

 三部氏は自分の役割について「これまで八郷社長が固めてきてくれた地盤の上に、ホンダの将来や未来となる建物を建てることだと理解していて、具体的には2050年のカーボンニュートラルと2050年交通事故死者ゼロを実現するための取り組みを具体化し、加速させる。そして、日々の暮らしが豊かになり、生活の可能性を広げる新しい価値を生み出し、提供し、ユーザーや社会から存在を期待される企業であり続けることを目指す」と宣言。

 また三部氏は、これまで研究所の社長として、2030年以降のホンダを作る新たな技術や価値創造の研究開発を進めてきたが、今度はホンダの社長としてこれまで仕込んできたものを魅力のある「コト」や「カタチ」にしていきたいと語った。

 電動化について聞かれると、「技術的な難しさは充分理解しているが、ただただEVいう商品を作ればいいというものではなく、調達戦略、生産戦略、販売戦略を同時に進めていくことで、EVの事業性が成立すると考えている」と述べ、加速させる認識はしているが、インフラ側とのタイミングもあり、事業として成立させるには、台数もそれなりに出す必要があると述べるに留めた。

 また、自身の考える“ホンダらしさ”を問われると、商品そのものではなく、社会の課題や新しい価値、競合相手に立ち向かう企業姿勢がホンダらしさだと思うと回答。課題は常に変わっていくものなので、チャレンジしていき、その過程を経てできた商品には、ホンダらしさがあると思うとした。

 さらに、カーボンニュートラルを目標にする中でのエンジンの方向性について聞かれると、「この先エンジンはなくなるとは思っていない。燃料とセットで内燃機関もカーボンニュートラルを実現できるかもしれないし、現時点で答えを出すのは時期尚早である」と持論を述べた。

 最後に、「自分に課せられているハードルの高さも認識しているが、ホンダ全体で大きな転換とスピードが求められる今、それを早期に実現するためには、必要であれば外部の知見を活用し、アライアンスの検討も踏まえて躊躇なく決断実効していく。かじ取りを任されたからには、自らをチャレンジャーとして職務に臨む」と締めくくった。