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三菱自動車、2020年度通期決算発表「選択と集中を柱とした構造改革は計画を上回る実績を出せた」と加藤社長

2021年5月11日 発表

2020年度通期実績説明会はオンライン形式で行なわれた

 三菱自動車工業は5月11日、2020年度(2020年4月1日~2021年3月31日)通期実績と、2021年度見通し、中期経営計画進捗についての説明会を行なった。出席したのは代表執行役社長兼 最高経営責任者 加藤隆雄氏と、代表執行役副社長(CFO)池谷光司氏、代表執行役副社長 長岡宏氏と矢田部陽一郎氏の計4名。

 冒頭で加藤氏は「2020年度は創立50周年を迎えるとともに、新中期経営計画の初年度となる変革の1年で、選択と集中によるコスト構造改革を最優先課題とし、即座に着手したところ想定以上にスムーズに進捗して最初のステップをうまく踏み出せたと」あいさつした。

主力地域の回復遅れが響いた2020年度

 続いて池谷氏より2020年度通期の実績報告が語られた。販売台数実績は、80万1000台となり前年度比29%減となった理由を「主力地域のアセアンをはじめ全体的に回復が見られず、引き続き厳しい状況が続いている」と説明。また、全体的に市場の回復に沿った販売数に留まったとした。

 売上高も得意としている市場の回復が遅れたため厳しい状況が続いたが、第3四半期より徐々に回復を見せ、2020年度通期の売上高は1兆4555億円で前年マイナス8148億円(前年比36%減)、営業損失は構造改革の推進によりインパクトを軽減して953億円、経常損失は1052億円。親会社株主に帰属する当期純損失は3123億円と説明した。ただし、全般的な改善傾向は続いていて累計でのマイナス幅は縮小できているとともに、販売台数も1Qが13万9000台、2Qが21万2000台、3Qが21万8000台、4Qが23万2000台と期を追うごとに回復していることを付け加えた。

 また、営業利益変動要因については「販売台数減の影響がマイナス1360億円だったが、MIX/売価や構造改革、研究開発費の効率化などによりマイナス953億円に収められた」と解説した。

 続けて2021年度の業績見通しについても池谷氏が解説。2021年度は新型コロナウイルスの影響もある程度は回復すると予想しつつも、新型コロナウイルスの変異株、材料高騰、半導体供給不足などのリスクがあり、引き続き不安定な状況が続くとした。しかし、主力エリアの販売回復や構造改革により、売上高2兆600億円、営業利益300億円、経常利益260億円、当期純利益100億円を見込む。

 また、自動車市場は回復傾向にあり、主力エリアのアセアン市場も一部地域を除いて回復をみせ、さらにフラッグシップモデルの新型「アウトランダー」の投入や商品の刷新などを織り込み、販売台数は前年度約20%増の95万7000台を目指す。特に2021年度の反転攻勢の試金石となるのが新型アウトランダーで、北米のアマゾンオンラインサイトで行なったワールドプレミアでは、リアルタイム視聴者が約60万人、その後のサイト閲覧者数2021年3月末時点で44万人を超えるなど、いずれも想定の2倍を超えているほか、店頭での評判もよく「大きな手応えを感じている」と述べた。

 新型アウトランダーのPHEVモデルは、日本を皮切りに順次世界へ展開し、アセアン地域では大幅刷新した新型「エクスパンダ―」を投入するほか、新型パジェロスポーツ、ミラージュの新モデルの展開も進めていくと明言。新型エクスパンダーについては、アセアンからメキシコなど他地域への拡大も視野に入れていると今後の戦略を語った。

欧州ではルノーからのOEM供給で2車種を投入

 中期経営計画のアップデートについては加藤氏より語られた。まず「2020年7月に発表した構造改革の中でも、固定費削減に関しては2年間で20%以上を削減するという当初の計画を1年前倒しで達成できた」と報告。それにより今年度以降は、新車投入に向けた宣伝広告費や2023年度以降の新商品開発など「成長に向けた投資を積極的に行なう」と説明した。

 また欧州における事業については、2023年を目途に新車販売事業を32か国から17か国へと規模を縮小するほか、商品ラインアップを最適化させるために、アライアンスパートナーであるルノーから2車種のOEM供給を受けることが明かされた。

 続けて加藤氏は「中期経営計画発表以降、強みを発揮できるコア地域への注力といった選択と集中を行ないながら、環境とともに安全・安心・快適を提供することが三菱自動車らしさだと再定義し、電動化技術とオフロードの高い走破性を持ったSUV技術、機能的で楽しい空間での快適性能を体感できるクルマ造りを目指す」と述べた。そして2030年までのすべての車種に電動車を設定するとしたうえで、各国のインフラ整備状態に合わせた車種を投入することで競争力を高めていくとした。

 また、2009年に投入した量産型EV「i-MiEV」やSUVタイプ初のPHEVとなるアウトランダーPHEVなど、早くから電動車の開発に着手してきたことと、今のアライアンスパートナーのユニット(日産自動車のe-POWERなど)やコンポーネント共通化ができるのが今の強みであるとし、これにより三菱自動車らしさのある魅力的な商品が開発できると説明。

三菱自動車工業株式会社 代表執行役社長兼 最高経営責任者 加藤隆雄氏

 さらに脱炭素社会への取り組みに関しては、すでに40社以上の企業と全国の自治体など計9000台以上を納入してきた「ミニキャブMiEV」で、これまで10年に渡り培ってきた経験と信頼をベースに、さらに日本郵便をはじめ、物流、通信、電力会社など20社、200台以上の納入を予定しているという(2021年6月から)。また、アセアン地域でも商用EVの商談が動き出していることを明かした。ただし、インフラが整っていないエリアに関しては、電欠を気にせずに走れるPHEVの展開もあわせて検討しているという。

 同時にEVやPHEVによる社会貢献も積極的に取り組んでいて、4月には東京都港区にアウトランダーPHEVを「新型コロナワクチン巡回接種用車両」として無償貸与したことを紹介。現在も他の自治体から問い合わせがあり、順次対応すると説明した。これらの取り組みは、三菱自動車が掲げている「電動コミュニティサポートプログラム」の一環で、今後も推進してモビリティの可能性を追求すると解説した。

 また、三菱自動車らしさの具現化の一例として、スポーツブランドであった「ラリーアート」を復活させ、純正アクセサリーとして展開することを名言したほか、モータースポーツへの関与も検討すると述べた。さらに2022年からアセアン地域では、既存商品の刷新に加え、アセアンプラットフォームを活用したまったく新しい商品を投入することでブランド力を高めるとし、アセアン以外でも三菱自動車らしさを具現化した商品を投入する計画があると語られた。

 最後に加藤氏は「2020年度は選択と集中を柱とした構造改革を最優先事項として取り組んだ結果、改革は想定以上のスピードで進み、当初の計画に対し上回る実績を出せた。この構造改革の効果は、今年度以降も収益改善に貢献すると考えている。一方、グローバル自動車需要はワクチン接種の進む先進国を中心に回復している国と、変異ウイルスにより以前経済活動が停滞している国もある。さらに、半導体供給不足や材料価格高騰の影響も深刻であり、今年度も取り巻く環境は厳しく不透明な状況であるが、それでも収益力は確実に昨年より向上していると考えている」と締めくくった。