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パジェロ製造の生産停止など、三菱自動車の新中期経営計画「Small but Beautiful」で固定費20%以上削減へ

欧州市場への新規商品投入を凍結など、ASEANを基軸とした事業体制に移行

2020年7月27日 発表

20%以上の固定費削減を目指す新中期経営計画「Small but Beautiful」

 三菱自動車工業は7月27日、2022年度までの新中期経営計画「Small but Beautiful」を発表した。パジェロ製造(岐阜県加茂郡)での生産停止など構造改革を実施、ASEAN地域に向けた商品に経営資源を集中投入していく計画となる。

 新中期経営計画の営業利益目標としては、2022年度に営業利益500億円、営業利益率2.3%の達成を目指すとともに、2025年度に営業利益率6.0%という目標を掲げた。

新中期経営計画の営業利益目標

 新中期経営計画の地域戦略では、ASEAN地域を事業中核地として経営資源を集中、オセアニア、南アジア、南米、中東・アフリカにおいてはASEAN向け商品を最大限活用して事業展開するなど第二の柱に育てる考え。

 一方、欧州では新規商品投入を凍結、北米では固定費抑制、日本では生産・販売体制再編など、収益性改善に取り組む。中国についても現地パートナーとの協業を通じて、収益性改善に取り組むとしている。

 同日開催されたオンライン決算説明会に出席した、同社代表執行役CEOの加藤隆雄氏は「中期経営計画の施策を着実に実行することにより2025年度には営業利益率を6%まで回復させる考えです。収益回復イメージはU字型を想定しており、ファーストステップとして2022年度には営業利益500億円、営業利益率2.3%の達成を目指します」と、U字回復を目指すことを強調。

 加えて、加藤氏は「皆さんもご存知の通り新型コロナウイルス感染拡大に伴う各国の移動制限や経済活動停滞は自動車事業にも甚大な影響を及ぼしました。各国の制限は徐々に緩和されていますが、今後第2波の拡大、第3波の到来も予想され回復への道筋は容易ではなく、経済活動がコロナ前の水準に戻るには一定の時間がかかると想定しています」との見通しを述べた。

 新中期経営計画で実施される構造改革について、加藤氏は「当社にとっては将来の安定的な収益確保のため、選択と集中を柱とした構造改革を、不退転の決意として実行して、業績回復の土台をしっかりと作ることが、中期経営計画の最優先事項であると認識しております」などと、構造改革には痛みを伴うことを示唆した。

2021年度までに2019年度比固定費20%以上削減

 新たな中期経営計画では、2021年度までの2年間で、2019年度比で固定費20%以上削減することを目標に掲げている。具体的な固定費削減に向けた取り組みとしては、ASEANを基軸とした事業体制に移行するとともに、低採算事業縮小による営業利益改善を目指す。

ASEANを基軸とした事業体制への移行を目指す

 また、PHEVを軸とした環境技術の強化を進めるとともに、自動運転技術などはアライアンスの先進技術を活用するなど、コア地域・商品に投資を集約する。

2020年度から2022年度に向けては環境対応車のラインアップ強化を実施
2022年度以降はASEAN地域に向けた商品強化期間と位置付けた
自動運転などの先進技術は日産自動車の技術を採用するなどアライアンスを活用した商品戦略を展開する
ASEAN地域を事業中核地として経営資源を集中するとともに、オセアニア、南アジア、南米、中東・アフリカにおいてはASEAN向け商品を最大限活用して事業展開を目指す

パジェロ製造での生産停止して岡崎製作所へ生産を移管

 国内事業再編としては、パジェロ製造の生産停止して岡崎製作所へ生産を移管、地域戦略に基づく生産ラインの統合を実施。稼働率や生産性を向上させて国内工場の稼働率を76%から83%へ向上させるという。

 販売部門では、直営ディーラーでは不採算店舗の閉鎖・統廃合を進めるとともに、独立系ディーラーでは有力ディーラーとのパートナーシップ強化。競争原理を導入した販売奨励金システムやマージン体系の見直しを実施。

 PHEVを軸とした環境車販売を強化してブランドカを向上させるとともに、シェアリング・サブスク事業を強化。徹底的な固定費削減の収益力改善による安定黒字化を目指すとしている。