ニュース

三菱自動車、次期中期経営計画「Small but Beautiful」を掲げて“身の丈にあった”持続的成長を強調

指名委員会等設置会社へ移行が承認された「第50回定時株主総会」

2019年6月21日 開催

三菱自動車工業株式会社の「第50回定時株主総会」は東京都港区の東京プリンスホテルで開催された

 三菱自動車工業は6月21日、都内で「第50回定時株主総会」を開催した。カルロス・ゴーン氏の一連の問題後初の開催となったもので、この問題の対策の1つである指名委員会等設置会社への移行などの議案が承認された。また、総会では「Small but Beautiful」を掲げるとともに、自らを“小規模”と位置づけ、規模に合った経営をしていくことが強調された。

指名委員会等設置会社へ移行し、監督と執行を分離

 総会では、代表取締役会長 兼 CEOの益子修氏が議長を務め、大半の説明や質疑への応答を行なった。総会で提案された議案は、配当に関すること、定款一部変更のこと、取締役選任の3つ。そのうち定款の変更と取締役選任は、指名委員会等設置会社への移行を踏まえたもの。

三菱自動車工業株式会社 代表取締役会長 兼 CEOの益子修氏(開催時)

 冒頭、益子氏からは「ゴーン取締役は諸般の事情により本日の総会に出席しておりませんが、ご了承ください」との説明があったほか、ゴーン氏の問題については監査報告で「前代表取締役会長が当社が出資しているオランダ法人の1社から不正に金銭の支払いを受けていたことが判明した」と説明された。

 また、問題を受けて日産自動車が指名委員会等設置会社に移行することをすでに表明しているが、三菱自動車も移行する。監督と執行の分離を明確にして経営の健全性と透明性を確保するとしており、取締役が監督を行なうが、業務の執行は執行役に任せることになる。それによって「大幅な権限委譲と迅速な業務執行が可能になり、さらなる進化を遂げ、株主の期待に沿える会社になる」としたほか「ただちによくなるわけではないが、信頼を得られるよう、不断の努力をしていく」とした。

指名委員会等設置会社
指名委員会等設置会社の効果

 新たに選任される取締役は合計15名。新任は8名で、社外取締役は12名となる。また、新任の取締役のなかには株主総会後にCEO就任が内定している加藤隆雄氏も含まれる。

エクスパンダーが好調、販売地域を拡大中

 事業報告では2018年度の概要を説明、持続的成長への基盤づくりを目指す中期経営計画の中間年を終了して「業績の回復は順調に進み、計画達成に向けて堅調に推移」とした。販売台数は計画には達しなかったものの、前年比13%増の124万4000台。主力地域のアセアンとオーストラリア・ニュージーランドでは前年度比14%増、北米や中国は7%増となった。

持続的成長への基盤づくりを目指す中期経営計画の中間年を終了
2018年度の販売台数実績
V字回復に向けた業績推移

 回復地域の日本では「エクリプスクロス」「アウトランダーPHEV」の効果によって7%増。そのほかの地域を含めて、世界の全地域で販売増となった。営業利益といった業績では、順調だった2017年に続いて計画値を達成。着実にV字回復していることが示された。

 回復の要因の1つに新車立ち上げの成功があるが、地域戦略車として開発した「エスクパンダー」はインドネシアでの販売開始後、フィリピン、タイ、ベトナムと販売地域を拡大。グローバルでの販売台数が累計13万台を超え、今後は世界戦略車として、商品力強化や販売地域の強化を行なって主力車種に育てていく。そのほか、新車立ち上げの成功例としてエクリプスクロスや「トライトン/L200」「eKワゴン」「eKクロス」を挙げた。

「エクスパンダー」の躍進
新車立ち上げの成功
信頼回復に向けた継続的フォローアップ

 一方で2016年に発覚した燃費不正問題について、信頼回復のための取り組みとして、再発防止策の効果確認を継続して引き続き行なっていくとした。

身の丈を意識し、強みに特化した商品で高い利益率の会社を目指す

 2019年の業績見通しについては、世界的に不透明感があるものの2019年度の販売台数は130万5000台で、前年度実績を5%上まわる見込みとした。V字回復の軌道が緩やかになっても、持続可能で高い収益を上げる事業を行なっていくという。

2019年度販売台数見通し
地域戦略:アセアン
地域戦略:日本
地域戦略:オーストラリアとニュージーランド
地域戦略:中国と北米ほか
次期中期経営計画のコンセプトに「Small but Beautiful」を掲げた
Small but Beautifulの説明
アライアンスの力を活用

 スライドで提示した主力車種は、アセアンがエクスパンダー、日本がeKクロス、オーストラリアとニュージーランドがトライトン/L200、中国と北米ほかがエクリプスクロス。

 益子氏は「これまでの拡大や成長といったテーマから、競争力強化や刷新というテーマを優先し、規模は小さくても収益力の光る存在になることが当社の目指すべき方向」とした。

 自ら「当社が事業規模の小さいブランをであることををしっかりと認識」と指摘するなど規模の小ささを強調、「身の丈を意識し、強みに特化した商品で、強い地域を主戦場として、高い利益率の会社をめざす」という集中戦略を進めることを名言した。

 そのため、アライアンスについても必要性を訴え、単独では開発が難しい技術開発にアライアンスを有効活用していきたいとした。

CEOは加藤氏へ交代、それには3つの理由がある

 益子氏は加藤氏へのCEO交代についても説明。今、交代するには3つの理由があるという。1つ目は指名委員会等設置会社へ移行し、監督と執行が分離すること。2つ目は業績が回復基調に乗ってきたということ。そして3つ目は、今年度は2020年度からの次期中期経営計画を作成するタイミングで、次のリーダーに委ねたいということから。

CEO就任が内定している加藤隆雄氏

 誰にCEOを引き継ぐかについて、益子氏は2016年12月の臨時株主総会から常に考えていたという。加藤氏がふさわしいとした理由は「ものづくりに関する知見と、海外事業で着実に成果をあげてきた経験、誠実な人柄」を挙げ、ロシアでのプジョーとの合弁事業の立ち上げ、インドネシアの生産会社を計画どおりに立ち上げて生産を軌道に乗せたことなどを評価したという。

個人的に感謝の気持ちを込めて自らパジェロを購入

 株主総会では事前に寄せられた質問のほか、当日、出席した株主から質問が寄せられた。アライアンスに関するもののほか、車種に関するものなどもあった。

「パジェロ」の国内販売終了について、益子氏は販売数から継続が難しいと返答するものの、パジェロが三菱自動車のブランドイメージ構築に貢献をしたことを評価。自らの自家用車を“感謝をこめて”パジェロに買い替えたことを明らかにした。パジェロを製造する岐阜県のパジェロ製造についても「地元に密着したいい会社、パジェロ製造は継続させたい」との希望を述べた。

 また、そのほか、「パジェロミニ」復活の要望、「デリカD:5」のフロントグリルのデザインなどについて株主から意見が寄せられたほか、カーナビとNHK受信料の問題で、特に法人では個別に受信料がかかることになるので、ユーザーへの説明と対策をするように求められた。