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トヨタ カフナー取締役CDO、カーボンニュートラルに100%コミット BEV・HEV・PHEV・FCEVを拡充

2021年5月12日 実施

15モデルのBEVを投入していく

カーボンニュートラル100%実現に向けての取り組み

 トヨタ自動車は5月12日、2021年3月期の決算説明会を行なった後、カーボンニュートラル実現に向けた技術と戦略についての説明会をオンラインで行なった。登壇したのは、取締役Chief Digital Officer ジェームス・カフナー(James Kuffner)氏、Chief Production Officer 岡田政道氏、Chief Communication Officer 長田准氏、Chief Financial Officer 近健太氏、Chief Technology Officer 前田昌彦氏の5名。

 カフナー氏は冒頭「トヨタは創業時から“ブレない軸”を明文化していて、そのミッションとして『幸せの量産』、ビジョンとして『可動性を社会の可能性に変える』を掲げていて、80年以上に渡り安全で持続可能なモビリティ技術の開発に取り組んできた」と紹介。

 そして、その一環としてすべての国や地域で、カーボンニュートラル実現に向けて尽力し、2050年もしくはそれより前に、企業としてカーボンニュートラルを実現することを100%コミットしていると改めて解説した。

トヨタ自動車株式会社 取締役Chief Digital Officer ジェームス・カフナー(James Kuffner)氏

 続けて、自動車産業におけるカーボンニュートラルについては、自動車の「製造」「輸送」「走行」「充電・給油」「廃棄・リサイクル」など、そのライフサイクルのすべてのプロセスにおいて、CO2排出量を実質ゼロにすることとし、トヨタでは30年以上前から、CO2排出量を削減し、カーボンニュートラルを実現するための技術革新と投資を行なってきたと説明した。

 具体的には1990年代前半、“低価格でありながらカローラクラスの2倍の燃費性能を持つ、プラクティカルな量産車を作る”という挑戦的な目標を掲げ、1996年に初の電気自動車となる「RAV4 EV」を市場に導入。そこで「航続距離の短さ」「充電時間の長さ」「充電インフラの不足」といった課題に直面し、その経験をバッテリ技術や電子制御技術の改善につなげてきたという。

 そして1997年には世界初の量産型ハイブリッド車として「プリウス」を発売。これによりバッテリ技術は「材料」「製造プロセス」「安全性」「高出力性能」「リサイクル性」などの向上を実現。これらの経験を生かし、25年以上に渡ってCO2排出削減に貢献するための新技術、新商品を開発してきたと紹介。現在では世界中で55モデルの電動車をラインアップしていて、HEV(ハイブリッド車)、BEV(電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCEV(燃料電池自動車)の合計販売台数は年間200万台を超え、今後さらに投入していくと明言した。

 また、現在搭載している内燃機関のエンジンについても、熱効率が40%に迫る非常に高いレベルであることにも言及し、電動車の普及をはじめ、こうした技術革新により、20年以上の期間で累計約1億4000万tのCO2排出量削減を実現してきたと解説した。これは150万台程度の乗用車のCO2排出をゼロにしてきたことに相当するという。

 カフナー氏は「今後もさらなるCO2排出削減を目指し、2025年までに先日発表したbZシリーズの7モデルを含む15モデルのBEVをグローバルに導入する予定にくわえ、HEV、PHEV、FCEVの商品ラインアップも充実させる予定である」と語った。また、これらの新商品をサポートするために、全固体電池をはじめとする、新しいバッテリ技術に投資を続けていき、より高効率なモーターと組み合わせることで、より安全にサステナブルを実現できるとした。

カーボンニュートラル達成への課題

 続けてカーボンニュートラル実現への課題についてカフナー氏は、たとえ優れたバッテリ技術があっても、石炭や非再生可能エネルギー由来の電気を使っている限り、BEVでもLCAの観点ではCO2を排出し続けることになるのと、電気インフラの整備されていない国もまだたくさんある点を挙げつつ、解決策としてトヨタは他の選択肢も持っていることをアピール。

 比較的小容量の電池で作れるPHEVは、原材料が少なくて済み、日常の大半を占める短距離で使う際は、ゼロエミッションの電気走行ができ、長距離の場合はハイブリッド・モードでも走行できる。また、トヨタが20年以上の研究開発を経て、2014年に発売したトヨタ初の量産型FCV「MIRAI(ミライ)」は、車両が動くとともに外部の空気を取り込んで燃料電池内で水素と結合し、電気と水を作り出す。ピュアでシンプルなゼロエミッション車でありながら、3分で燃料を満充填にすることができると改めて解説。さらに、2020年12月に発表した第2世代のミライは、基本性能、快適性、効率性を向上させ、米国基準で402マイル(647km)の航続距離を実現したことを紹介した。

 ただし、性能が向上できた一方で、インフラ整備やエネルギー効率、低価格でのグリーン水素の製造などの課題もあり、今後も投資と開発を続けていきながら、乗用車だけでなくトラック、大型輸送車両、鉄道、バス、タクシー、航空機、船舶、フォークリフトといった輸送分野のモビリティにも展開させることで、より大きなCO2削減に貢献できるとした。さらに、バッテリごと交換できるモジュール型の燃料電池システムや、BEVやPHEV用の充電ステーションを設置できるようになる定置式の燃料電池発電機の開発にも取り組んでいると結んだ。

 最後にカフナー氏は、今後発売していく新車だけなく、現在世界で走っている14億台以上の中で、今後10~15年間稼働し続ける数多くのエンジン車をクリーンにする方法も模索していて、その方法のひとつとして新しい水素エンジンのプロトタイプを紹介。

 今後もすべての業界で、科学者や研究者、地方自治体や国の政府と協力して、新しい技術やインフラの開発を加速させ、「2050年までにカーボンニュートラルを達成するという世界的な目標を100%コミットさせて、すべての人にとって、より明るく、より幸せな未来づくりに貢献していく」と締めくくった。