ニュース
ジープ、新型「コンパス」オンライン発表会 処理速度を5倍高めた「Uconnect5」でラグジュアリーなユーザー体験を
2021年6月3日 06:30
- 2021年6月2日 開催
ジープ(FCAジャパン)は6月2日、マイナーチェンジした新型SUV「コンパス」のオンライン発表会を開催した。新型コンパスの価格は346万円~435万円。なお、この発表会の動画はYouTubeの「Jeep Japan公式チャンネル」でアーカイブ動画を公開している。
コンパスは2012年3月に初代モデルの日本導入が開始されたC-SUVセグメントモデル。現行モデルとなる2代目コンパスは2017年12月から販売されており、今回のビッグマイナーチェンジでは「セブンスロットグリル」や「台形ホイールアーチ」といったジープブランドのアイコンはそのままに、内外装のブラッシュアップを行ない、多彩なADAS(先進運転支援システム)を採用。また、「Apple CarPlay」「Android Auto」も利用可能な車載インフォテイメントシステム「Uconnect5」が新たに与えられた。
このほか、新しくなったコンパスの変更内容の詳細やラインアップなどは関連記事「ジープ、コンパクトSUV『コンパス』をマイナーチェンジ 内外装デザイン刷新」を参照していただきたい。
オンライン発表会では、FCAジャパン 代表取締役社長 ポンタス・ヘグストロム氏が新しくなったコンパスについて解説を実施。ヘグストロム氏は2012年から日本導入されているコンパスが実用的なミドルサイズSUVとして支持されてきたことから、コンパスに与えられた“成功の方程式”である伝統に則った外観デザインについては小規模な修正にとどめ、インテリアや安全装備について大幅なアップデートを実施したと説明。さらなるプレミアム感を演出する造形や質感を手に入れ、より安全になっているとした。
インテリアデザインの詳細については、続いて登場予定のジープブランドのチーフインテリアデザイナーに任せ、ヘグストロム氏は最新テクノロジの採用について解説。インパネ中央に配した10.1インチ(コンパス スポーツは8.4インチ)HDディスプレイを中心とする車載インフォテイメントシステムのUconnect5は、ハードウェアとしての処理速度を5倍に向上。拡張されたパーソナライズ機能により、お気に入りの機能を1タッチ、または2タッチで呼び出せるほか、直感的に使えるよう工夫されているという。
また、安全装備では車両前方の警戒を行ない、危険を回避するためにブレーキも作動させる「前面衝突警報」、パワーステアリングの制御により、走行車線のキープや死角にある危険を回避できるようアシストする「アクティブ レーン マネジメント」、センターディスプレイにカメラ映像を表示する「Parkview リアバックアップカメラ」などを全車に標準装備。
これに加え、グレードに応じて最新のADASを搭載。カメラ映像から法定速度を検知して車速を制御する「インテリジェントスピードアシスト」、ドライバーのステアリング操作や車両の挙動などからドライバーの疲労や居眠りなどを検知する「ドライバーアテンションアラート」、歩行者や自転車の搭乗者を検知する「衝突被害軽減ブレーキ」、既存のキセノンヘッドライトから倍近い明るさを実現するという「LEDヘッドライト/フォグランプ」などを新たに設定。市街地での運転をよりスマートに昇華させているとした。
3種類用意するグレード展開では、エントリーグレードとなる「スポーツ」に、従来からADASなどで25万円相当の新装備を追加しつつ、価格上昇を10万円に抑制して346万円で販売。これについてヘグストロム氏は「コンパス・スポーツは同クラスの輸入SUVとして最も手が届きやすい価格であり、若い世代の人がジープを手に入れやすくする努力の一環です」と紹介した。
このほか、ルーフとドアミラーなどをグロスブラック仕上げにして、ADAS装備をさらに追加した「ロンジチュード」は従来比2万円高の385万円、トップグレードの「リミテッド」は従来比1万円高の435万円となっている。
そのような新しい価値を持つ新型コンパスは、同社が「現実的な夢想家」と呼ぶ、理性的でありながら日常を離れることに価値を見出すユーザーに、安全で信頼できるモビリティ体験を提供することと同時に、ジープブランドが80年間にわたって持ち続けてきた「どこへでも行ける。何でもできる」というブランドの中心的価値を、デザインとスピリットの両面で体現しているとした。
インテリアデザイン刷新の主役は「ボルスター」
インテリアデザインの刷新については、ジープブランドのチーフインテリアデザイナーであるクリス・ベンジャミン氏が説明。新しいデザインでは「広々としたスペースと開放感、隅々まで行き届いた上質さ」を目指して開発を実施。また、見た目だけではなく、指先で直感的に操作できる機能性と快適な室内空間を両立させているという。
また、1940年代に登場したジープは、タフさと堅牢さ、高い走破性で知られ、そういった遺伝子は現代のジープモデルにも息づいているが、時代の変遷と共にユーザーが求める価値やテクノロジが変化したことで、ジープでも最新テクノロジを採り入れ、合わせて快適性も向上させることで、これまでとは違う新しい手法によってユーザーをもてなしているとした。
具体的には、車内に乗り込んですぐに水平方向の広がりを感じてもらえるよう、横方向にシームレスなデザインを採用。インパネに「ボルスター」と名付けた横一直線に連続するエリアを設定して、ドライバーや同乗者に開放感や上質さを感じ取ってもらえるようにしている。また、インテリアはモジュラー構成を採用しており、ボルスターなどにカラーアクセントを加えることが可能で、グレードごとに個性を際立たせられるようになっていて、ベンジャミン氏は「今回のインテリアデザイン刷新の主役がボルスターであることは間違いありません」と述べている。
センターコンソールは「仕上げの上質感」「機能性と快適性の最適バランス」「最新テクノロジの採用」の3点に力を注いで新設計されたものとなっており、コンソール類を高い位置にレイアウトすることで使い勝手を高めると同時に、収納スペースを拡大。ユーザー体験の質を大幅に向上させた。
また、ディテールの品質を高めるため、デザインモチーフを統一。ディテールで同じモチーフが繰り返し目に入ることから、一体感ある空間であるとの印象をユーザーに与えるようにしている。インテリアの統一感を演出するため、エアコンの吹き出し口やインパネのクロームアクセント上面、スイッチのノブなどにストライプパターンを設定して、視覚的な一貫性と操作性の向上を図っているという。
テクノロジの面では、インテリアで最大の変更点と位置付けられている10.25インチ(コンパス スポーツは7インチ)のマルチビューディスプレイを採用するデジタルメーターとステアリングスイッチに操作の多くを集約。デジタルメーターには24以上のコンテンツ・スクリーンを表示可能として、多彩な機能を手元ですばやく操作できるようにした一方で、スイッチ類がなくなったことでセンターコンソールの収納スペースを従来の2倍に拡大している。
このほか、ヘグストロム氏からもすでに紹介されているUconnect5については、パワフルで直感的に操作できることに加え、デザイン面ではボルスターから浮き上がったように見せる演出を行ない、車内スペースをより広々と感じさせる効果を持っているという。
ベンジャミン氏は最後に「中央のディスプレイとメーター・クラスターに埋め込まれた10.25インチのディスプレイ、Uconnect5システムによって、ジープ・コンパスはこのセグメントのSUVにはこれまでなかったラグジュアリーなユーザー体験を提供します」と強調してプレゼンテーションを締めくくった。
今後3年間でディーラー網を100拠点まで増やす
また、今回のオンライン発表会は2021年に入って初めての新製品発表会ということで、ヘグストロム氏はFCAジャパンの近況などについても説明を行なった。
自動車業界は昨年来、新型コロナウイルスの影響に加え、半導体の供給不足でも困難な局面にあるとしつつ、親会社であるステランティス全体、そしてFCAジャパンと傘下のディーラー各社もさまざまな課題を上手に制御できているのではないかと評価。JAIA(日本自動車輸入組合)が発表している統計でも、FCAジャパンは業界水準を上まわる成長率を示しており、2020年10月から7か月連続で販売台数の最高記録を塗り替えている。これによってマーケットシェアは10%を超えるものとなっており、2020年以降は国内販売されている輸入車の10台に1台はFCAジャパンの取り扱いになっており、「フィアット・クライスラー・オートモビルズが2015年に発足した当時には、ほとんど誰も予想していなかったことです」と述べた。
さらに販売の実例として、2021年の1月~4月の対前年比販売台数を紹介。この4か月間における累計販売台数は8604台で対前年比23%増となっており、台数面では年間記録となった2019年を上まわる勢いになっているという。ヘグストロム氏はコロナ禍などの影響がなかった2019年を超える結果を誇りに思うとしつつ、それ以上にうれしいことは、各ディーラーが健全な経営の結果として十分な利益を得ている点だと語った。
FCAジャパンでは全ブランドで販売を伸ばしているが、快進撃を続ける要因はジープの好調にあると分析し、この理由として、2015年にジープに加えてクライスラー、ダッジなどのブランドも扱っていた販売ネットワークを再編。ジープ専業のディーラー網を構築し、合わせて製品とマーケティングの両面でジープに大きな投資を行なったことを挙げた。
2001年~2020年の販売台数のグラフを示し、2012年ごろのジープ販売台数は5000台前後となっていたが、「ジープにはインポートSUVでナンバーワンになる可能性がある」と考えたヘグストロム氏による改革の結果、2017年には1万台を突破。2020年には1万3000台以上に成長しているが、これは選択と集中に利点があると理解してくれたディーラーの協力があったと述べた。
販売網の再編では、地理的な拡大に加え、ショールームやサービス向上の拡張、中古車販売スペースの設置、来店者に対するおもてなしの改善なども実施。ディーラーを「よりプレミアムで憧れるような環境」に整備することで、従業員と来店者が共に誇りとワクワク感を共有できる空間を作り上げたとのこと。2016年にスタートしたディーラー網の拡充は2020年にすでに完了して、既存ディーラーの刷新に加え、拠点数が20%増えて83拠点になっている。ヘグストロム氏は既存パートナーであるディーラースタッフに感謝を述べつつ、さらなる成長に向けて今後3年間でディーラー網を100拠点まで増やす計画を発表した。
販売面での努力に加え、ジープブランドでは本社側も協力して、日本市場に適した製品の提供も実施。コンパスのような小型モデルの投入や小排気量エンジンの採用、日本向けの右ハンドル仕様のラインアップ、日本専用ナビゲーションの開発などを行なってきたという。また、日本では「アメリカ車は大きく、燃費がわるく、値段が高い」というイメージが持たれており、このイメージを変える必要があるとの考えから、2012年に発売されたコンパスから2.0リッターエンジンを採用。2011年当時にはジープモデルのエンジンは3.0リッター以上ばかりだったが、2020年には過半数が2.0リッター以下になっており、PHEVもラインアップしてるとアピールした。
このほか、マーケティング活動のデジタル化も推進していて、2020年はコロナ禍によってショールームの来店者数が減少したものの、前出のように販売台数は増加。これはオフィシャル・Webマガジン「リアル・スタイル」などを通じてジープブランドに興味がある人が「ジープがある生活」についてイメージをふくらませ、来店者は1回目で試乗、2回目で注文書にサインするといった感じで、コロナ禍によって消費者の購買行動が変化していると説明した。
このような活動によってジープブランドは若い世代から支持されており、実際にコンパスのユーザーは同等SUVの購入者の業界平均から9歳若いことを紹介。若年層を顧客に取り込むことで、自分たちのコミュニティが成長していけると解説を締めくくった。