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アストンマーティン、ハイブリッド・スーパーカー「ヴァルハラ」概要発表 搭載エンジンはV6からV8に

2021年7月15日(現地時間) 発表

ハイブリッド・スーパーカー「ヴァルハラ」の概要を発表

 英アストンマーティンは7月15日(現地時間)、ハイブリッド・スーパーカー「ヴァルハラ」の概要発表を行なった。

 北欧神話で「戦士の楽園」を意味するネーミングが与えられたヴァルハラは、2019年にコンセプトモデルがデビュー。当初はパワートレーンにV型6気筒ガソリンターボエンジンとバッテリー駆動式のハイブリッドシステムを組み合わせるとアナウンスしていたが、エンジンは最高出力750PS/7200rpmを発生するV型8気筒4.0リッターツインターボにスイッチすることが明らかになった。

ボディまわりでは新しいカーボンファイバー製コンポーネントを採用

 この新しいV8エンジンは、2基の電気モーターを備えた150kW/400Vのバッテリー・ハイブリッドシステムによって補完。電気モーターはフロントアクスルとリアアクスルにそれぞれ1基ずつ搭載され、システム全体で950PSの出力を誇る。詳細は省かれているものの、950PSの出力からさらに204PSのパワーを上乗せすることも可能という。

 EVモードで走行する場合、バッテリー電力はフロントアクスルにのみ供給され、それ以外の走行モードではバッテリー電力はフロントアクスルとリアアクスルに分割され、各アクスルに送られる割合は走行条件によって常に変化。特定の状況では、バッテリー電力の100%をリアアクスルに送ることができる。

 トランスミッションは新開発の8速DCTを組み合わせ、e-リバース(PHEVの電気モーターを利用し、従来のリバースギアの必要性をなくすことで重量を削減)を備えたトランスミッションは、リア・アクスルにエレクトロニック・リミテッドスリップ・デファレンシャル(e-デフ)を備え、最大のトラクションと俊敏なハンドリングを実現する。電気モーターのパワーは低速走行時のコントロールとレスポンスを強化し、後退時にも使用する。

 EV専用モードで走行する場合の最高速は130km/hで、航続距離は15km。予測されるCO2排出量(WLTP)は200g/km未満とした。0-100km/h加速はわずか2.5秒で、最高速は330km/hに達する。また、ニュルブルクリンク ノルドシュライフェ(北コース)のラップタイム目標は6分30秒に設定されているという。

専用のV8エンジンはリアにミッドマウントされる

 一方、ボディまわりでは最小の重量で最大の剛性を実現するという新しいカーボンファイバー製コンポーネントを採用するとともに、フォーミュラ1スタイルのプッシュロッド・フロントサスペンションを搭載しており、インボードに取り付けられたスプリングとダンパーがバネ下重量を減らし、優れたパッケージングを実現している。

 また、リアエンドのマルチリンクデザインとともに、マルチマチックアダプティブスプリングおよびダンパーユニットを使用し、走行時の不快な振動を調整する。より剛性の高いサスペンションに加え、サーキット・モードを選択するとダウンフォースを最大化するために車高が大幅に低下。公道走行用のモードでは、フロントアクスル・リフトシステムがノーズを持ち上げて、アプローチアングルを改善する。さらにブレーキ・バイ・ワイヤー・テクノロジーを採用する高性能なカーボンセラミック・マトリックスブレーキ、ヴァルハラのために特別に開発された特注のミシュランタイヤ(フロント20インチ、リア21インチ)などを装備する。

ヴァルハラの細部

 インテリアでは左ハンドルと右ハンドルの両方の仕様が用意されるほか、アストンマーティンHMIシステムでは中央にタッチスクリーンディスプレイを備え、Apple CarPlayとAndroid Autoに対応。また、調整可能なペダルとステアリングコラムを採用したことにより、シートベースはシャシー構造に固定されているという。

 そのほか、安全装備としてはフルLEDマトリクスヘッドライトを備えるとともに、自動緊急ブレーキ、前方衝突警告、アクティブ・クルーズコントロール、ブラインドスポット・モニタリング、リアビュー・パーキングカメラ(サラウンドビュー・オプション付き)といった最新の先進運転支援システムも用意される。

ハイブリッド・スーパーカー「ヴァルハラ」(5分39秒)

 なお、アストンマーティン取締役会会長のローレンス・ストロール氏は、今回の発表について「アストンマーティン初の量産ミッドエンジン・スーパーカーであるヴァルハラは、ラグジュアリー・ブランドのアストンマーティンにとって、真に変革の瞬間を表すクルマです。ヴァルハラの発売は、当社の製品ラインアップの拡大における重要な次の段階である、ドライバーに焦点を合わせた一連のミッドエンジン・カーを製造するというアストンマーティンの取り組みを示すものです。モータースポーツの聖地であり、アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラ1チームの本拠地である英国において、このサーキット走行を念頭に置いたスーパーカーを発表することは当然の流れでした。アストンマーティンは、60年以上の歳月を経てF1世界選手権に参戦し、週末には伝統のイギリスGPに復帰を果たします。これは、アストンマーティンにとって真のマイルストーンとなる出来事です」とコメント。

 また、パワートレーン・エンジニアリング責任者であるラルフ・イレンバーガー氏は、「ヴァルハラは、私たちがプロダクションカーで何ができるのかを実際に示す最初の機会となります。私たちは、V8エンジン用に、専用のインタークーラー、フラットプレーンと呼ばれるクランクシャフトを開発し、強力なハイブリッドシステムと組み合わせました。そしてもちろん、アストンマーティン初となる専用のデュアルクラッチ・トランスミッションも搭載しています。これらは、ヴァルハラだけでなく将来のアストンマーティン・モデルにとっても不可欠なコンポーネントです。その結果、効率的で超高性能なスーパーカーのための、世界最高レベルのパワートレーンが実現しました」と述べている。