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自工会 豊田章男会長定例会見、10月に自動車産業を軸としたカーボンニュートラルについての提言を実施 自動運転車の接触事故、車検不正に関する質疑応答も

2021年9月9日 実施

日本自動車工業会 会長 豊田章男氏

2023年の東京モーターショーについて言及

 9月10日、自工会(日本自動車工業会)は豊田章男会長、御子柴寿昭副会長、日髙祥博副会長、片山正則副会長、永塚誠一副会長出席によるオンライン記者会見を開催した。9月の定例会見では、やはりカーボンニュートラルに関することが大きく取り上げられたほか、パラリンピックにおける自動運転車の接触事故、車検不正に関する質疑応答が行なわれた。

 また、10月にはカーボンニュートラルについて、自動車産業を軸にした課題を提示することも明らかにされた。

日本自動車工業会記者会見(9/9)

豊田章男会長あいさつ

 みなさまこんにちは、先日オリンピックに続き、東京2020パラリンピックが閉幕いたしました。障害をオンリーワンの個性にするパラアスリートたちのオンリーワンの戦いとオンリーワンのストーリーに多くの人が感動した大会だったと思います。

 そして選手たちが、試合後に語っていたことは「この場に立たせてくれてありがとう」「応援してくれてありがとう」「大会をサポートしてくれたすべての人にありがとう」という感謝の気持ちでした。

 舞台裏ではボランティアをはじめ、大会運営を支えようとがんばってる人たちがたくさんおりました。そこには、自動車産業550万人の仲間の姿もありました。

 アスリートや現場のみなさんが示してくれたものは、自分以外の誰かのためにという思いであり、それこそが今大会のレガシーではなかったかと思っております。

 そして、自動車会社といたしましては、閉会後もパラリンピックを通じて知り得た社会課題や技術課題をこれからのモビリティ社会で解決することにつなげてまいりたいと思っております。

 さて本日は、カーボンニュートラルについて、今私たちが考えていることを申し上げたいと思います。今年11月にはCOP26もあり、各国の代表者からはこれまでさまざまな目標が提示され、その実現策として、出口であるクルマの選択肢を狭める動きも出てまいりました。

 カーボンニュートラルにおいて私たちの敵は炭素であり、内燃機関ではありません。炭素を減らすためには、その国や地域の事情に見合ったプラクティカルでサステナブルな取り組みが必要だと思っております。そして目標を掲げること以上に、目標に向かって行動することが大切だと思っております。

 自工会においては電動車フルラインナップという日本の強みを活かし、カーボンニュートラルに貢献するために各社の得意分野に応じてタスクフォースを組みながら、課題の洗い出しや関係省庁を巻き込んだ議論を進めてまいりました。

 各企業でも新たなパートナーシップや実証実験を通じて、技術の選択肢を広げる動きが加速しております。日本の自動車産業は、いち早く電動車の普及に取り組み、この20年で23%という国際的に見て極めて高いレベルでCO2を削減してまいりました。

 この先の数年間でやるべきことは、これまで積み上げてきた技術的なアドバンテージを活かし、今ある電動車を使って足下でCO2を最大限減らしていくことだと思っております。そこで自動車が余力を稼ぐことができれば、ほかの産業における技術革新に向けた時間や投資に回すこともできると思っております。

 その中で、日本の事情に合った選択肢を模索していくことがプラクティカルで日本らしいアプローチだと考えております。これまで申し上げてきましたとおり、輸出で成り立っている日本にとってカーボンニュートラルは雇用問題であるということは忘れていけないと思います。

 私たちが必死になって選択肢を広げようと動き続けているのは、自動車産業550万人の雇用、ひいては日本国民の仕事と命を背負っているからでございます。これから総裁選も始まります。一部の政治家からはすべてを電気自動車にすればよいんだとか、製造業は時代遅れだという声を聞くこともございますが、私はそれは違うと思います。

 今の延長線上に未来はないと切り捨てることは簡単です。でも、日本の人々の仕事と生命を守るためには、先人たち、そして今を生きている私たちの努力を未来につなげていること。これまでの延長線上に未来を持っていく努力も必要だと思っております。

 それが日本を支え続けてきた基幹産業としての私たちの役割であり責任です。

 今、私が実感しておりますのは、多くの産業と関わり人々の生活と密着したクルマというリアルなものがあるからこそ、自動車産業を軸にするとカーボンニュートラルにおいても納期と課題が分かりやすくなるということでございます。

 納期と課題が明確になれば、いろいろな行動につながってまいります。そこで、来月にはカーボンニュートラルの出発点でもあるエネルギーについてプラクティカル&サステナブルの観点で、自動車産業を軸にした課題を提示させていただく予定でございます。

 そして、自動車産業の「つくる」「はこぶ」「つかう」の各ステップにおいて行動を起こすことにつなげていきたいと思っております。カーボンニュートラルのペースメーカーとして、日本の基幹産業として、自動車産業は今後とも行動し続けてまいりますので、ご支援いただきますと幸いです。

過去20年のCO2削減実績
CO2排出量国際比較

質疑応答

 豊田会長のあいさつの後、質疑応答が行なわれた。質疑応答については話し言葉的なものも多くなっていたので整理しつつすべての質疑について紹介する。実際の会見映像については自工会のWebサイトを参照していただきたい。

──会長はこれまでもカーボンニュートラルを正しく理解しようということや、自動車業界単体では難しいことなど発信をされてきました。本日のあいさつでも輸出で成り立っている日本ではカーボンニュートラルは雇用問題だということをおっしゃられましたけど、改めて会長の思いや考えを教えていただけますでしょうか? 人事の話も報道されています。3期目という話もありますけど、こちらも合わせて教えていただけますでしょうか?

豊田章男会長:2点質問がありました。カーボンニュートラルは雇用問題ということに対して会長自身の思いをということであります。それともう1つは人事の話ということですが、2点とも私の方から回答させていただきます。

 まずご存じのようにカーボンニュートラルはライフサイクルアセスメントといいまして、エネルギーを「つくる」「はこぶ」「つかう」というすべてのプロセスにおいてCO2を削減するということが求められるものだと思っています。

 日本は輸出立国でございますので、カーボンニュートラルが雇用問題であると申し上げておりますのは、今の「つくる」部分のエネルギー事情だと(編集部注:CO2排出量が多く含まれるエネルギー)、そのエネルギーで作ったクルマは輸出ができなくなってしまうということになると思います。

 日本政府は今年のCOP26を意識してか、いろいろな目標を出しておりますけれども、ただ目標値を示すだけであり、それは日本の実情を踏まえて決められたものではなく、欧州の流れに沿ったやり方ではないかと思います

 カーボンニュートラルは、それぞれのお国の事情によってやり方が違うということもぜひともご理解たまわりたいと思います。

 例えば再生可能エネルギー比率の目標は示しておりますが、そこにコストの議論は見えてこない。すべて「実行するのは民間で」と言ってるようにわれわれは聞こえてしまいます。

 輸出ができない・できなくなるとどうなるかということですが、現在日本の自動車業界は生産台数が約1000万台、近場800万台ぐらいになってるとこもありますけど、全部で1000万台の国内生産のうち、その半分の500万台が輸出になります。

 それを「内燃機関は敵」と言われますと、ほとんどのクルマが生産できなくなります。私どもの試算では、2030年断面でも内燃機関以外のクルマ、例えばBEVとかFCEVの生産台数は200万台にも到達しないと見ておりますので、800万台以上の生産台数が失われるということにもなると思います。

 そうなってしまいますと、昨年コロナ禍において12万人の雇用を増やした自動車業界であっても、550万人の大半の雇用を失う可能性がある。そのことをぜひご理解いただき、今年のいろんな意味での環境問題に対処いただきたいと思います。

 私ども自動車業界を挙げて、決して地球温暖化・CO2削減に対して異を唱えているわけではございません。全面的に協力しようというスタンスは変わりないということを合わせて付け加えさせていただきます。

 人事の問題でございますが、決まっておりません。これは。

 こういう報道が出るんですが、いろんな報道ってのは「いつからウワサ話を載せるようになったのかな」というふうに私自身はちょっと疑問に思っています。

 一般の方々からお金を徴収して、そして報道していくという媒体が、私という有名人を使って、例えばページビューを稼ぎたいとかね。それから話題になってほしいとかいうことであるならば、私にもギャラをくださいという感じで思いますのでぜひともですね、ウワサ話が報道となるのではなくて、私ども自工会は今朝も理事会をやり、ここで決定したことをすぐさまその日の午後にはこうして会見をし、みなさまに広く伝えさせていただいております。

 ですから、そういうプロセスをぜひ見ていただいて、ウワサ話であまり振り回されるというのはぜひとも避けていただきたいと思っております。

 自工会会長の話は決まっておりません。

──大きくカーボンニュートラル、脱炭素に向けた取り組みについておうかがいしたいと思ってます。政府の方は9月3日に地球温暖化対策計画の原案を示されました。元から総理が掲げていた国全体でCO2を2030年度に2013年度比で46%減らすという中でセクター別にも示されています。運輸部門の方では35%減、それから製造を絡む製造中心とした産業部門を38%減と、かなり意欲的なというか挑戦的な目標が示されています。この間、業界としては選択肢を広げるという取り組みをこれまでも進めてきましたし、これからも進めていくと理解をしてるのですが、これまでのところの手応えであるとか、今後どういうふうに実現していくか。また、乗用車、大型車、二輪車とそれぞれ置かれてる状況とか課題も違うかと思いますので、そのあたり細かく考えをお聞かせいただけたらと思います。

豊田章男会長:この件に関しましては、私、自工会会長会見で何度か申し上げておりますので、今日は私に加えて副会長の方々が出席されております。各副会長からそれぞれの観点から説明させていただきたいと思います。

御子柴寿昭副会長:私どもの取り組みは、あくまでも目的はカーボンニュートラルの達成というところにありまして、そこに向けたアプローチは1つではないということが選択肢を広げるという意味合いでございます。関係省庁に対しましても、政策や規制が決して特定技術の禁止といったことに結びつかないようにと訴えさせていただいております。

 日本の自動車各社がすでに持っている強み、技術的な強みは大変大きなものがございます。これを活かしていくことに加え、現在研究中・開発中の手段だったり、イノベーションの実現ということも含めて、あらゆる英知と技術を結集して取り組む必要があると考えております。

 日本の四輪車は、先ほど会長の話にもありましたけれども、内燃機関においても燃費の向上ですとか、CO2の排出削減にずっと取り組んできております。さらにはHEVを加えることによって長年努力を積み重ねてきた歴史がございます。

 自工会におきましては、先ほど会長からもありましたライフサイクルアセスメントという観点から、HEVですとか、EVなどのCO2排出量の将来試算も行なったりして、技術ニュートラルという観点から解決のアプローチを議論しているところでございます。

 これまで日本の自動車産業が培ってきた、会長の話にもあった電動車フルラインナップという強みを最大限に活かして、複数のアプローチでさらなるCO2の排出削減に対して、スピードを持って目標達成を目指していくというのが今現在の自工会の取り組みであるとご理解いただければと思います。

永塚誠一副会長:総論的な取り組み状況について、私の方から説明を申し上げたいと思います。今の質問にございましたように、政府においては地球温暖化対策計画の原案を作成され、温暖化効果ガスの排出目標を従来の26%削減から46%%削減まで大幅な改定をされたわけです。

 運輸部門は、従来27%削減だったところが今般の計画案ではマイナス35%ということで、大変大きな変化として受けとめております。

 しかしながらこの計画が出る前に、もちろん総理が表明された後に自工会としてはカーボンニュートラルに積極的にチャレンジをしていくということをすでに決定をしているところでございます。

 その中でわれわれとして自信を持ってこれを進めていく必要があるわけですが、その際に触れておきたいことは、過去20年間を振り返ると日本の自動車産業は世界に先んじた電動車のフルラインナップを拡大し、その普及努力によりCO2を5000万t以上23%減と大幅に削減をしてきている実績があります。これは国際的に見ても極めて世界に先行している取り組みだと思っております。

 今求められている2030年のCO2排出量削減目標の達成には、さらに5000万t以上の削減が必要となるわけですが、これは今後10年で、過去20年間で達成した削減量と同等レベルを削減していかなければならない非常にチャレンジングな目標です。

 この先数年間でやるべきことは、これまで積み上げてきた技術的なアドバンテージを活かし、ハイブリッドやプラグインハイブリッドなど、今ある電動車を使って足下でのCO2を最大限減らしていくこと。そこで自動車が余力を稼ぐことができれば、ほかの産業における技術革新に向けた時間や投資にも回すことができるのではないかというふうに考えています。

片山正則副会長:私の方からは大型車の取り組みということで話をさせていただきます。

 技術の選択肢を広げていくというお話ですが、商用車の特徴でありますが使われ方が本当に多岐にわたる、多様性に対してどう答えるかということが非常に大事なことになります。

 みなさまが目にされる配送するクルマ、もちろん非常に大きな台数がありますが、それ以外にもいわゆる働くクルマ、例えば建設現場であったり、例えば山の中で土砂関係のダンプトラック。こういった商用車の非常に多くの使われ方、それからトラックの大きさも小型から中型、大型まであるということでの非常に大きな多様性に対してどう商用車メーカーとして取り組むかというのに根本的な問題を抱えています。

 そうなると当然、何かの技術に特定されるということではなく、非常にいろんな技術の選択肢をうまく使っていくということが、最終的なカーボンニュートラル社会にとって必要であろうとわれわれとしては考えております。

 そのための準備が、いすゞの例で言いますと3月末までの仲間作り。仲間をずいぶん増やしてまいりました。

 それによって技術の選択肢が、とてもいすゞだけではカバーしきれない技術の部分に関しても、仲間を通じていろいろな選択肢が出てくるという形。これは他社の商用車メーカーさんも同じような動きをしておりまして、社会的課題を達成するためにはどうしても必要だとまず考えております。

 商用車に関しましても2030年の最初の目標値も出ておりますので、この時間を活かしてそれぞれのカテゴリーに対する本命とする技術の選択を、あるところまでやっていきたいというふうに思っています。

 車種メーカーとしてある程度の開発が進みますと、商用車は社会インフラそのものですので。経済的に成り立つ事業という必要があります。どこかのタイミングでは、事業者さま、それから例えばそのビジネスパートナーとしての架装メーカーさま。架装の部分は私ども車種メーカーは作っておりません。ただ車種の部分だけ電動化ということはあり得ませんので、このあたりの業界の枠を超えた形での選択肢の多様性、これをやっていかないと2030年のところに対しての社会的な期待に関して、難しいと考えております。最大限その時間を使ってやってまいりたいというふうに思っています。

日髙祥博副会長:二輪車産業のカーボンニュートラルに向けた取り組みの現状について説明させてもらいます。電動二輪車の普及には航続距離の延長、充電時間の短縮などの課題がございまして、すべての二輪車の電動化は難易度が高いと考えております。

 電動化以外のソリューションも視野に、2050年カーボンニュートラルに向けて、二輪車産業としても最大限取り組んで前にということを皆で確認しております。

 その具体的な取り組みとしてですね、現在、大阪府、大阪大学、それからローソンさんのご協力を得まして、「ええやん大阪」実証実験に取り組んでおるところでございます。

 これまで3期分の実験が完了しており、現在4期目に入っておるところです。60人の方にご参加いただいておりまして、60%以上の参加者のみなさんから肯定的な評価をいただいております。

 まだ募集をしておるんですが、募集枠を非常に上回る応募も続いております。また、応募者の半数以上の方が、初めて二輪車に乗ります。そういう方々から応募が続いているということで、新規需要創出効果の手応えも感じているところでございます。

 一口に2輪車と言いましても、排気量、ユーザーの用途、地域性によって最適なカーボンニュートラルパワートレインのあり方が多様であると考えております。

 2050年までの時間軸で考えると、電気だけでなく、水素、合成燃料といった動力源の選択肢も出てくるんじゃないかということで、今後取り組んでまいりたいと考えています。

──自動車業界では年初から半導体不足に伴う減産が続いており、ここに来てあの東南アジアでの新型コロナウイルス感染再拡大に伴う部品調達の遅延も広がってきています。実際の稼働への影響や今後の見通し、また業界としての対策などがあれば、教えてください。

永塚誠一副会長:それでは永塚の方から答えます。半導体不足などの影響ですが、ご指摘のとおり足下ではグローバルに需給逼迫が続いております。半導体の影響に加えまして、東南アジアのコロナ再拡大の影響などにより、部品供給不足が発生して自動車生産販売への影響はグローバルに広がっております。

 国内の販売を見ても、7月、8月は対前年同月比でマイナスが2か月連続でございましたし、9月に入りましても足下、対前月比でマイナスが続いているという大変厳しい状況が続いています。

 対前年同月比でマイナスといっても、ご記憶のとおり、昨年のこの時期というのはまだコロナの影響で非常に国内の販売は落ち込んでいた時期です。それと比べてもさらにマイナスということで、その水準がいかに厳しいものかというのはお分かりいただけると思います。

 さらに10月に入りますと、会社によってはもう一段の減産可能性もあり得るというお話もおうかがいしております。秋以降もコロナ感染の再拡大の影響がまだ見通せない、それから半導体産業の需給動向にもよりますけれども、不透明な状況が継続しています。

 一方で、お待たせしてご迷惑をかけているお客さまも大変多くいらっしゃいますので、1台でも多く、1日でも早くお届けできるように会員各社にて取り組んでまいりたい考えています。ご指摘の影響の大きさについては、各社によりさまざまですので、先々の見通しについて自工会としての言及は差し控えさせていただきます。

 ただ、この半導体の影響については構造的な問題もあろうかと思いますので、中長期的な状況改善に向けまして、自動車業界全体としても政府と連携しながら、協調できる領域においてはできるだけの対応を模索していきたいと考えています。

──豊田会長にうかがいます。今日(9月9日)政府は夕方に東京・大阪などの緊急事態宣言の30日までの延長決定すると思うのですが、これについて足下の経済への影響は。緊急事態宣言が長くなっているのですが、どのような見解か教えてください。

豊田章男会長:緊急事態宣言がたび重なり出ております。一方でいろいろ政治家の方やメディアの言動を見ておりますと、1年ほど前からですね。コロナ、緊急事態宣言、そしてその次はオリンピック・パラリンピックの開催可否、そして大会が始まると感動物語、そして自民党の総裁選。とですね、まるで舞台が変わったのごとくいろいろ場面が変わっておりますけれども、実際の国民はですね、私ども自動車業界も含めてその期間多くの我慢と犠牲を強いられ、会社や仕事を失ってる人がたくさんいるということは今も変わってないんですね。継続してるんですね。

 この現実の積み重ねが、現在の国民生活そのものだというふうに思っております。その中で足下の経済の影響をとのことでございますが、やはり真面目に働いている国民や企業が報われない、そしてバカを見る。それが日本の現状であり、そんな国には絶対してほしくないというふうに思っております。

 今は正解が分からない世界だと思うんですね。そんなことはたぶん多くの国民は知ってます。

 ですけれども、今この足下の経済の影響の前に、国のリーダーおよびいろいろな経済界においても正解を出してほしいと言ってるのではなくて、真面目に働いている国民が今日よりも明日はよくなるんだ、そう思える国にしたいという志を持って希望しておりますので、ぜひともそのあたりをですね、経済対策とか、いろんなものに活用いただきたいなと思っております。

──冒頭の会長の発言で、パラリンピックを通じて知り得た課題を通じて今後の社会課題の解決につなげていきたいという言葉があったかと思います。パラリンピックの中では選手村での自動運転車両の事故もありました。こうした事故を自工会としてどのように受けとめて、対策あるいはいろいろなルール作りであったり、法整備のところにつなげていきたいか、このあたりについてお考えをお聞かせください。

豊田章男会長:はい、まず選手村でですね。私どもトヨタ自動車が運用しております自動運転車「eパレット」が選手村内において歩行中の参加選手に接触をし、その選手がその大会出場を断念することになったこと。まずその選手に対して、機会を失ってしまって大変申し訳なかったと思っています。

 今回、選手村で起こった接触というのは、本来は信号があるべき交差点において、そのルールを守った上で、クルマと歩行者と、そして信号の役割をする誘導員がどのように連携をし、安全な交通流を守るかということだったと思います。

 そういう意味で、今回一体全体どういう接触が起こったのかということを、クルマの目線、歩行者の目線、そして誘導員の目線の3点から事実を解析するにあたり、正式な現場検証はまだ行なわれていないというふうにうかがっております。私ども関係者は協力をし合って、包み隠さずそのあたりの事実把握に努めました。

 これはその自動運転車、そして歩行者、そして誘導員。それぞれどの個人にもその責任は属するものではなく、信号機がなかった交差点においての安全確保、しかもパラリンピックといういろいろ不都合をもっておられる方が、行動をされる場所での安全確保という点で、仕組みがわるかったのではないかなというふうに思っています。そんな中で、自工会としては改めて自動運転の目的は「交通事故死ゼロ」ということを今朝の理事会でも全員で確認させていただきました。

 そして改めて、安全な交通流というものは、クルマ、インフラ、そして歩行者の三位一体として運営されるべきものである。そして、安全技術というのは普通の排ガス規制とちょっと違って、どこまで開発すれば基準が満たされるのかというのも現在のところ不明確でございます。

 そういう意味で、今回のこういう事象を事実として、今後各社自動運転に対していろんな開発をやっておりますが、どこまでやれば、これはレベル3では安全ですよ、レベル4ではここまでですよという共通の物差しみたいな提案をしていきたいなというふうに思っています。

 どちらにいたしましても、交通弱者である人の安心をベースに安全な交通流を作ろうとか、すべての方に移動の自由をという2点を引き続き軸として取り組みや発信を進めていきたい。今朝の理事会でも全メーカーそういうところで心を1つにし、技術の開発競争は進むものの、誰が最初に出すんだという気持ちは自動車メーカー側は持っておりません。

 まわりからあおられることもございますが、決してそこに乗ることなく安全に交通事故死ゼロを目指そうというところで進めてまいります。

 今後とも自動運転というのは、すべての方に移動の自由という意味では大変必要な技術だと思いますので、いろいろな情報をオープンにさせていただくことによって、いろんな方々からのご理解を賜りながら、よい交通流というのを作ってまいりたいと思いますので、応援いただきたいと思っています。

──新車ディーラーで目立っている不正車検について質問させてください。会長が社長をされているトヨタの系列ディーラーで、相次いで車検の不正の問題が残っているかと思います。こうした不正の背景は、不正を働いたメカニック個人の問題というよりも、制度だとか組織とか、慢性的な整備士不足みたいな構造的な問題が浮き彫りになって、不正が起こってるのではと感じてます。ときとして人の命を奪う凶器となる自動車で安全性を担う整備は重要なところだと思うので、今後自動車業界全体でこの問題に対してどう対応していくのか、考えをお聞かせください。

豊田章男会長:車検制度および国からお預かりしております指定整備事業というのは、お客さまが安全安心にクルマにお乗りいただくために大変重要なものだと考えております。

 トヨタ自動車のことではございますが、今回系列の販売店で発生いたしました不正車検については、お客さま並びに関係者のみなさまに多くのご心配とご迷惑をおかけすることになりましたことを深くお詫び申し上げます。

 今回の不正は指定整備の一部の検査において、基準を満たす値への書き換えや一部の検査を実施しなかったというもので、増加する仕事の量に対し、エンジニアを中心とした人員や設備の増強が追いついておらず、慢性的に高負荷な状況が続いたということが一因でございます。

 自工会の会長として申し上げますと、必要な人員の増強、サービス機器の更新などを最優先に進め、エンジニアの働く環境を改善するとともに、経営陣とエンジニアを含めた現場スタッフとのコミュニケーションを改善していくことが重要だと思っています。一方で、自動車運転技術や電動車の普及と自動車の変容高度化に伴い、車検点検制度に求められる要素が変化してきている部分もあると思います。

 お客さまにとっての安全・安心を大前提に、よりよい制度に向けて、国交省をはじめ関係者のみなさまと相談をしてまいりたいと思います。業界一丸となってお客さま、関係者のみなさまの信頼回復に努めてまいりたいと思っています。

──豊田会長の冒頭の発言で、10月に自動車産業を軸にした課題を提示するといった言葉があったかと思うのですが、現時点でどのような内容になりそうか、もう少し具体的なイメージを教えていただければ。

豊田章男会長:日本政府は30年のエネルギー政策の目標を立てておりますけれども、目標実現にはこれまで問題提起してきました送電網の老朽・更新など必要な投資に加えて、新規で再エネ関連だけで約25兆円以上の通貨投資が必要とされております。

 それに加えまして、再エネは自然に左右されるエネルギー源でありますので、そのための安全安定供給のための費用も毎年1兆円以上かかる可能性がございます。

 自動車産業が国内生産1000万台を維持し、雇用を守りながら日本の発展に貢献し続けるために、まず自動車産業として必要なエネルギー量とCO2排出量を整理し、いつ何がどれだけ必要なのかという原単位を明確にしていきたいと思っています。

 その上で、どれだけの投資や研究開発が必要でコストはどうなるのか、自動車生産の競争力は維持できるのか。国内での事業性が成り立たない場合、国から何か支援策を期待できるのか、その財源はどうするのか、自工会で自動車を軸にこのような課題を提示し議論のきっかけを作っていきたいと思っています。

 カーボンニュートラルでは、先ほど申しましたけども、ライフサイクルアセスメントエネルギーを「つくる」「はこぶ」「つかう」のすべてのプロセスで使用数を削減しなければなりません。

 運輸部門のCO2排出は、日本全体の18%ぐらいでございます。自動車産業は、しかしながら多くの産業と関わり、クルマというリアルなものを持っておりますので、この産業を軸にするとカーボンニュートラルについて納期と課題が分かりやすくなるとも思っております。

 これこそが、常々私どもが申し上げている自動車産業をペースメーカーにしていただきたいということにもつながると思いますので、来月までにですね、今申し上げたことをまとめて、また皆さま方にご報告させていただきますので、ぜひともそれまでちょっとお待ちいただきたいと思います。

コロナ禍での経済・社会への貢献