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自工会 豊田章男会長、「私たちのゴールはカーボンニュートラルであり、その道は1つではない」とeフューエルや複合技術活用を語る

2021年4月22日 発表

日本自動車工業会 会長 豊田章男氏

カーボンニュートラルが喫緊の課題

 4月22日、自工会(日本自動車工業会)は豊田章男会長出席によるオンライン記者会見を開催した。この記者会見では、2021年の東京モーターショー開催中止が発表されたほか、自工会としてのカーボンニュートラルに関しての考え方が示された。

自工会 豊田章男会長あいさつ

 みなさまこんにちは、豊田でございます。本日は、前回に引き続き全国民全産業にとって喫緊のテーマであるカーボンニュートラルについてお話したいと思います。

 振り返りますと昨年12月に自工会として、カーボンニュートラルに全力で取り組むことを申し上げ、一方で、エネルギー政策抜きには語れないことをお伝えいたしました。

 先月はカーボンニュートラルによってクリーンエネルギーを調達できる国や地域への生産シフトが進み、日本の輸出や雇用が失われる可能性があるということをご説明させていただきました。

 いずれも根底にありますのはカーボンニュートラルの本質を正しく理解した上で、みんなが対応することが必要だということです。こうした考えをもとに、これまで私が申し上げてきたことを整理して、漫画のように分かりやすくカーボンニュートラルを解説するコンテンツを作成し、近日中に公開する予定をしております。

 これをスタートポイントに、自工会としてデータベースを整備充実させてまいります。メディアのみなさまの日々の報道にもご活用いただきますと幸いでございます。こうした正しい理解に取り組む中で、私自身が感じておりますのは、日本らしいカーボンニュートラル実現の道筋があるのではないかということでございます。

 日本には優れた環境技術、省エネ技術がたくさんあります。何よりも個々の優れた技術を組み合わせる複合技術こそが日本独自の強みであると思っております。今、エネルギー業界では水素から作るeフェールやバイオ燃料など、カーボンニュートラル燃料という技術革新に取り組まれておられます。

 日本の自動車産業が持つ高効率エンジンとモーターの複合技術に、この新しい燃料を組み合わせることができれば、大幅なCO2低減というまったく新しい世界が見えてまいります。そうなれば、既存のインフラが使えるだけではなく、中古車や批判者も含めたすべてのクルマで、CO2削減を図れるようになります。

 そしてこの考え方は、船や飛行機など自動車以外のさまざまな産業にも応用できます。船舶を中心に輸送のカーボンニュートラル化が進めば、輸出入に支えられている日本のビジネスモデルのグリーン化にもつながると思います。

 私たちのゴールはカーボンニュートラルであり、その道は1つではありません。カーボンニュートラルな燃料技術、エンジンの燃焼技術。モーターや電池などの電動化技術、それらを組み合わせる複合技術、こうした強みを持つ日本だからこそ、選べる道があるのではないかと考えております。

 カーボンニュートラルは、作る、運ぶ、使う、廃棄するというすべてのプロセスでのCO2削減を実現しなければなりません。つまり、全国民全産業が足並みを揃えながら取り組むことが不可欠となります。そこにはペースメーカーが必要だと思います。

 自動車はエネルギーや素材など多くの産業と深く関わる総合産業ですので、産業界のペースメーカーとしてお役に立てるのではないかと思っております。そしてもう1つ、自動車は多くのお客さまとの接点を持つBtoCの産業です。

 お客さまのニーズに向き合ってきた結果、日本の自動車産業には「電動車フルラインナップ」というアドバンテージがあります。どんなに優れた技術でもお客さまに選ばれ、使われなければ意味がありません。お客さまのライフスタイルをカーボンニュートラル化していくという意味でも、私たちはペースメーカーの役割を担えると思っております。

 私が自動車産業をど真ん中に置いてほしいと申し上げておりますのは、自分たちの産業を守りたいからではありません。母国である日本がカーボンニュートラルを実現するために、そのペースメーカーとしてお役に立ちたいからです。

 先日の日米首脳会談では菅総理が2030年というマイルストーンを置いて、カーボンニュートラルに向けた取り組みを加速させるという強い意志を示されました。今日本がやるべきことは、技術の選択肢を増やしていくことであり、規制法制化はその次だと思います。

 最初からガソリン車やディーゼル車を禁止するような政策は、その選択肢を自ら狭め、日本の強みを失うことにもなりかねません。政策決定におかれましては、この順番が逆にならないようお願い申し上げます。自動車業界としては、これまで同様、EV技術にも着実に投資をしてまいります。

 30年前はEVやFCVはおろか、ハイブリッド車もありませんでした。しかしそこには、黙々と技術開発を続けてきた人たちがいました。こうした努力の積み重ねが持続可能で、お客さまに使っていただける実用的な技術を生み出してきたと思っております。

 私たちはこれからもサステイナブル&プラクティカルをキーワードに、日本ならではの道を切り開いてまいりたいと思っております。最後に、東京モーターショーについてご報告させていただきます。

 前回のモーターショーでは、モビリティの楽しさを体感できるプログラムを数多く用意し、130万人を超えるお客さまにご来場いただきました。

 今回、オンラインを使ったより魅力ある企画を検討してまいりましたが、多くのお客さまに安全安心な環境でモビリティの魅力を体験いただけるメインプログラムのご提供が難しいと判断し、開催中止を決定いたしました。次回はさらに進化した東京モビリティショーとしてお届けしたいと思っておりますので、今後ともご支援よろしくお願いいたします。

自動車は総合産業