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ホンダF1 田辺TD、何があるか分からないコンディションのロシアGPは「雨を自分たちの方に取り込めたいいレースだった」
2021年9月27日 12:09
- 2021年9月24日~26日(現地時間)開催
F1 第15戦 ロシアGPは、ロシア連邦 ソチにあるソチ・オートドロームで9月24日~26日(現地時間)の3日間に渡って開催された。前戦イタリアGPでの、ポイントリーダーのマックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・ホンダ)とランキング2位のルイス・ハミルトン選手(44号車 メルセデス)という2台が接触して両者ともリタイアになるという衝撃的な幕切れから2週間、その結果としてフェルスタッペン選手側に非があったとレーススチュワードは判断し、今回のレースで3グリッド降格になるという状況の中でのレースとなった。
チャンピオンを狙うレッドブル・ホンダ陣営としては、イギリスGPでのハミルトン選手との激しいクラッシュにより2基目のパワーユニットを失うなどの不幸もあり、シーズン中3基までの使用が認められているパワーユニットのやりくりが難しくなっているという現実もあり、金曜日のフリー走行2(FP2)を前にして、4基目のパワーユニットを投入する決断を行ない、今回のレースは最後尾からスタートすることが決定した。このため、今回のレースでは、順当に行けばハミルトン選手が優勝するだろうという状況の中で、できるだけハミルトン選手との差がつかないようにフェルスタッペン選手がレースを終え、ダメージを最小限にすることが目標となるレースになった。
そうした状況の中で行なわれた土曜日の予選では、最後の最後でウェットからドライへと路面の状況が変わっていく中で、マクラーレンのランド・ノリス選手(4号車 マクラーレン・メルセデス)、フェラーリのカルロス・サインツ選手(55号車 フェラーリ)、ジョージ・ラッセル選手(63号車 ウイリアムズ・メルセデス)がポール、2位、3位となり、ハミルトン選手は4位となるという意外な結果に終わった。
そしてレーススタート後も、ハミルトン選手はこれらの車両に前を押さえられるレースが続き、結局終盤までそれは続いていた。トップがノリス選手、2位ハミルトン選手という形でチェッカーを迎えるのかと思われていた、レースの最終盤に突然の雨。トップのノリス選手はステイアウトを選択、それに対して2位のハミルトン選手はピットに入ってインターミディエイトタイヤに交換して追い上げを図る。結局雨はむしろ強くなり土砂ぶりといってよい状況となり、ノリス選手はコースに車両をとどめることも難しくなり、かなりゆっくりとピットに戻らざるを得なくなって結局7位まで後退してレースを終えた。
これで優勝はハミルトン選手になったが、2位には雨が降るまでは7位だったフェルスタッペン選手が上がってきた。フェルスタッペン選手は、ドンピシャのタイミングでハミルトン選手よりも前にタイヤをインターミディエイトタイヤに交換しており、他のドライバーがインターミディエイトタイヤに交換すると、2位に上がっていたのだ。2点ほどドライバー選手権ではハミルトン選手に先行されたものの、ダメージを最小限にするという当初の目標は完全に達成したと言えるレースだった。
そうしたドラマティックな展開になったロシアGPだが、レース終了後にはホンダF1 テクニカルディレクター 田辺豊治氏によるオンライン会見が行なわれたので、その模様をお伝えしていく。
「レースでは何があるのか分からない」なかで、最後尾スタートのフェルスタッペン選手が2位は良い結果と田辺TD
田辺氏:昨日土曜日の練習走行3回目(FP3)が雨でキャンセルになり、ウェット路面での予選になった。そこから雨がらみの展開が続き、今日のレースでも最終盤に雨が降り出すという中で、雨の状況が急激に悪化した。いろいろと雨に翻弄され、ポジションを上げたドライバー、大きく落としたドライバーもいて、いつも言っているが「レースでは何があるか分からない」ということの象徴のようなレースになった。
マックス・フェルスタッペン選手はチームとも話し合ってパワーユニット交換を選択したため、グリッド最後尾からスタートすることになったが、それを大きくはね返して2位になった。ルイス・ハミルトン選手が優勝したため、ドライバーズチャンピオンシップでは2ポイント差で逆転されてしまったが、スタート順位を考えれば「とにかくとれるだけのポイントを」などとレース前に話をしていたが、よい結果に終わったと思っている。
セルジオ・ペレス選手は初日から力強い走りで、終盤に雨が降るまでは3位を走っていた。最後の最後の雨が降り出したときにはタイヤ交換のタイミングが遅く9位に終わってしまった。(そこまでの力強い走りを考えると)残念な結果に終わってしまった。
アルファタウリの2台は11位と12位からのスタートだったが、DRSトレインの中で我慢のレースを強いられた。降り出した雨の中でも、チーム側の選択で順位を落としてしまった。
ここのところ何レースか、きちんと最後まで走り切るレースができていなかったので、4台そろって完走できたのはいいことだが、明暗が分かれるレースになった。次戦のトルコに向けてはじっくりと準備をして、しっかりとしたレースがしたい。残り7戦となってしまったが、両チームともにポイントが獲得できるようにしていきたい。
――最後尾から2位という結果は予想外の結果か?
田辺氏:その通りだ。金曜日のドライでのメルセデスの性能差や、最近の中段チームのパフォーマンスが上がっていることを考えると、そうそうDRSトレインの中ではオーバーテイクできないと考えていた。そうした中で、どこまでリカバリーして選手権ポイントを加点できるのかというのがレース前の心境というか、チームを含めての想定だった。それが結局2位まで行ったというのは、障害を乗り越えてマネージしたということで、雨を自分たちの方に取り込めたいいレースだったと思う。
――ボッタス選手がエンジンとMGU-Hを交換して10グリッド降格ペナルティを選択した。その影響はレース前にはどう見積もっていたか?
田辺氏:事情はともあれ、前からスタートすることには変わりはないが、押さえられたママになってしまうと終わりだねという話はしていた。
――ボッタス選手は、レース後の記者会見でエンジン交換に関してはモンツアで投入したエンジンがもう終わってしまったと発言していたが、実のところメルセデスもハミルトン選手も含めて厳しい状況にあると見えているか?
田辺氏:他メーカーのことでもあるし、終わったという言葉の意味がよく分からないのでコメントしにくいが、仮にそれがもう使えないという意味だとすれば、今回もう1台追加したという意味だろう。しかし、そのおかげでペナルティを取られるのは、ドライバーには申し訳ないことだとパワーユニットマニファクチャラーとしては思う。ハミルトン選手のパワーユニットがどうなのかは、われわれからは分からないのでなんとも言えない。
メルセデスにとって一番イヤな展開だったフェルスタッペン選手の2位、ハミルトン選手のPU4基目投入時に逆ができるか、次戦はトルコGP
田辺氏の言うとおり、今回のレースはレッドブル・ホンダ陣営とフェルスタッペン選手にとって非常によい結果だったと言えるだろう。普通のロシアGPであれば、メルセデス勢が予選でフロントローを占め、仮に順位が逆であっても終盤に入れ替えるなどしてハミルトン選手、ボッタス選手の順で1-2フィニッシュというのが戦前の予想だったからだ。
しかし土曜日の予選が雨になり、Q3では終盤乾いていくという予想外の展開の中、マクラーレンのノリス選手、フェラーリのサインツ選手、ウイリアムズのラッセル選手が1-2-3になり、ハミルトン選手が4位、ボッタス選手が7位というこちらも予想外の結果に終わり、レースでもハミルトン選手は序盤それらの車両に押さえ込まれ、その間にフェルスタッペン選手が追い上げていくというレースになった。
それでもレースの終盤にはノリス選手、ハミルトン選手が1位と2位になっており、レッドブル・ホンダ勢はペレス選手が3位、フェルスタッペン選手が追い上げてきて7位という展開だった。これでも最後尾スタートで、意外と抜きにくいサーキットだということを考えれば上々の結果だったということができるだろう。逆に言えば、メルセデスにとって今回考えられる限りの最悪の展開になってしまったということができるだろう。
しかし、レース最終盤に雨が降ってきた時に、ドンピシャのタイミングでインターミディエイトタイヤへの交換を決断したことで、フェルスタッペン選手は2位に上がることができた。選手権を考えれば、パワーユニット4基目投入のペナルティを課せられたのに、ハミルトン選手1位、フェルスタッペン選手2位となり、大きな点差をつけられなかったことはホンダ陣営にとって最上の結果だと言える。
その意味で、ホンダ陣営にとっては今後どこかのタイミングで予想されるハミルトン選手のパワーユニット4基目投入のタイミングで、今回の結果と逆のことができるかがポイントと言える。そのためには、フェルスタッペン選手が勝つことはもちろんだが、チームメイトのペレス選手やアルファタウリの2台がメルセデスの前でレースを終えることが重要で、今回のボッタス選手のように戦略的にパワーユニットを交換してもフェルスタッペン選手の前に居座る作戦(結局それはフェルスタッペン選手が目の覚めるようなオーバーテイクを見せたことで機能しなかったのだが)なども含めて対処していく必要があるだろう。
次戦は、本来であれば日本GPが開催されるはずだった週末(10月8日~10月10日)に行なわれるトルコGPになる。2020年のレースでは雨がらみのレースになったこともあり、メルセデスのハミルトン選手が優勝、2位に当時レーシングポイント・メルセデスに乗っていたセルジオ・ペレス選手という結果で、レッドブル・ホンダのフェルスタッペン選手はタイヤ交換戦略をミスして6位に終わったというレースだった。
田辺氏も言うとおり、今年のF1も残り7戦で、1つも落とせないレースが続くことになるだけに、ホンダF1最終年のレッドブル・ホンダ勢の活躍に期待したいところだ。