ニュース

新型GTマシン「Nissan Z GT500」にかける想いを、日産COOアシュワニ・グプタ氏とNISMO片桐隆夫CEOが語る

2021年12月5日 実施

 日産自動車とNISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)は12月5日、SUPER GTシリーズ GT500クラスに2022年シーズンから参戦する「Nissan Z GT500」を披露した後、メディアを対象としたラウンドテーブルを開催した。参加したのは、日産自動車COOのアシュワニ・グプタ氏と、NISMO CEOの片桐隆夫氏の両名。

 グプタ氏はまず、「チャンレジし続けることは日産のDNAであり、創業以来“他のやらぬことをやる”という革新の精神で、常にワクワク感を生活にもたらし、最終的に人々の生活を豊かにするために邁進してきた」とあいさつ。また、これらの熱意はモータースポーツ活動にも反映されていて、85年にも及ぶモータースポーツ活動の歴史の中で、数々の栄光ある勝利を世界中で収めてきたと紹介。そしてレースからは、数々のことを学び、それを新しいクルマに活かしてきたという。

日産自動車株式会社 CEO アシュワニ・グプタ氏

 さらにグプタ氏は、「日産がモータースポーツ活動を続けるのは、ファンのためであり、従業員スタッフのため、パートナー企業のためであり、もちろん最終的に勝利するためにレースに参戦している」と語りつつ、今後も引き続きフォーミュラEとSUPER GTの2つのレースを柱にモータースポーツ活動を続ける方針だと強調した。

 続いてNISMO CEOの片桐氏は、事業構造改革「NISSAN NEXT」により、ブランド価値の強化を図っている最中に、ブランドDNAを象徴する【 Z 】の投入が決まったことを紹介。「新型スポーツカーをグローバルにローンチするという、またとない機会に日産のブランド戦略とマーケティング戦略を強力に後押しするために、国内モータースポーツの最高峰であるSUPER GTに新型Zで参戦することを決めた」と語る。

 また、新型「Nissan Z GT500」は、SUPER GTの技術規則にのっとり、日産Zの特徴を最大限に活かした開発を行なってきたという。また、全日本GT選手権、SUPER GTと28シーズン参戦してきたNISMOのレースカー開発技術をフル活用して車両開発を強化してきたことを明かした。さらに、開発可能部位と規則範囲内での構造見直しも実施。オフシーズンテストが間もなく始まるとのことで、来年4月の開幕戦に向けて、開発をさらに加速をしていくとした。最後にドライバーやチーム体制については、最適と思われる体制を敷き後日発表するとした。

「Z」はそれだけでブランドアイコンとなっている存在

──電動化への投資など、先日長期ビジョンを発表したことや、環境規制の強化などクルマを取り巻く環境が変わっていくなかで、モータースポーツへ参加する意義とは何でしょうか?

グプタ氏:日産にとってモータースポーツは、スリルとワクワク感を与えてくれるもので、それは従業員にだけでなく、モータースポーツファンだけでなく、幅広い年代の自動車ファンにも同様で、それが人々の生活を豊かにするものだと思っている。

 また、レースから学ぶことはあるし、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」でも挙げているように、フォーミュラEのような電動化は次世代のワクワクを生むし、新たな技術も生まれている。GT-RやZも同様にこれまで多くの技術を生み出しロードカーへフィードバックしてきた。だからこそ日産はフォーミュラEとSUPER GTを継続していく。

──国内の若いファンの獲得やモータースポーツ活動を通じて期待していることは?

グプタ氏:モータースポーツはファンや従業員のためにやっている部分もあるが、日産ではさらに多くのファンを取り組む活動を行なっている。特に若い世代が期待しているのは、自動車のワクワク感だけではなく、環境意識も高いので、フォーミュラEでワクワク感と環境によいソリューションを提供している。一方、SUPER GTでもワクワク感を提供することで、世界中で若いファンを獲得している。

NISMO CEOの片桐隆夫氏

──ここ14年間GT-Rを使ってきたが、何か課題はあったのか? Zに代わることで来シーズンの走りはどのように変わるのでしょうか?

片桐氏:GT-Rで14年間戦ってきたなかで、チャンピオンシップを5回獲得してきた。当然勝ちばかりでなく負けも多いが、総合的にはいい戦いができたと思っている。また、ファンの方々にも喜んでいただけたんじゃないかなと思っている。そんな中でマシンをZに変えるのは、新型のZをグローバルにローンチするということで、それに合わせてレース活動もそれを後押しするマシンに換えようとなった。

 GT-Rもずっと開発を続けていたが、今回新しくなるということで、いろいろな部位を見直したり強化したり、どこに行っても勝てるマシンに仕上げてシリーズチャンピオンを獲りたいと考えている。われわれとしてはZに引き継いで新たな出発をしつつ、日産のグローバルなマーケティング戦略も後押ししながら勝利を重ねて、お客さまに喜んでいただきたいと思っている。

──どんどん電動化が加速していく中で、モータースポーツで磨いた技術はどんな風に活かされていくのでしょうか?

グプタ氏:日産はフォーミュラEとSUPER GTの両方をやることで、内燃機関からe-POWER、e-POWERからBEV(電気自動車)へとスムーズに移行できるメーカーになっている。つまり、日産にとって電動化は目標ではなく結果でしかない。われわれはお客さまが自然に電動化を選択できる道を用意するだけ。そのためには第1にエンジン車以上のエキサイティングなドライビングを提供する必要があると考えている。ただし、それはもう新型アリアで証明できている。2つめは安全でストレスのないクルマ。これはレースの技術により担保している。3つ目はお客さまと世界をつなげるコネクテッド。これもレースの技術を活かすことでレスポンスがよくなっている。だから、85年間続けてきているレース活動は日産にとって大きな財産であると考えている。レースとロードカーは相互に影響を与えている関係だ。

──日本仕様向けの市販車は「フェアレディZ」という名称が予告されているが、今回発表されたマシンは「Z GT500」となった理由を教えてください。

グプタ氏:日本国内ついては発表時に分かると思うが、すでに世界では「Z」のみでアイコンになっている。8月にニューヨークで発表したときにファンと話をしたら「Z」以上は要らないと思えるほどブランドとして確立していると感じた。

片桐氏:現在はコロナの影響で日本でしか開催できていないが、SUPER GTはアジアで開催しているレースなので、われわれとしてはアメリカも含めて、グローバルにこのエキサイトメントな「Z」を届けたいと考えているので、あえて「Z」としている。また、以前走らせていたときも同じ理由で「Z」としていました。

──開発はいつ頃から? 規則で大きく中身を変えられないと思うがGT-Rからどのくらい変わっているのでしょうか?

片桐氏:開発スタートは2年くらい前です。将来の商品計画は分かっていますから、グプタさんのところへ行き、新型が出るタイミングで、レース活動でも新型Zのローンチを後押しできると思うので、ぜひZでやらせてくださいと掛け合った。そこから意思決定され、開発がスタートした。マシンとしてはずっと開発をしてきたGT-Rに、新たにZ特有の部分が合わさったような感じです。性能数値については控えさせていただく。

 一番の違いは形が違うこと。それぞれボディの形が違いますから、どっちがいい、わるいではなく、それぞれの特徴を活かしたレーシングカーに仕上げていくのがコンセプトになっている。

──今回のZをレースに使うことで、ファンへの訴求はどのくらい効果があると思っているのでしょうか?

グプタ氏:そもそもGT-RとZは販売を増加させるために作っている訳ではなく、この2車種は日産のDNAであり、文化であると考えている。従業員やパートナーやファンのために開発している。結果としていいビジネスになっているだけです。それでブランドイメージを向上させたいと考えている。さらに、他ができないことをわれわれはできる! ということを証明したいと考えている。

──今後GT-Rとレースとの関わりはどうなるのでしょうか?

片桐氏:GT-Rがある以上はレースは続ける。GT500クラスはZに代わるが、GT3というカテゴリーのレース用ベースマシンはグローバルに販売していて、これまでに50台販売していて、世界中でレースに使われている。GT-Rがある限り、GT3の車両供給、部品供給、技術供与を続けていき、世界各国で買ってもらえるよう継続していく。

──GT-RとZ、ぞれぞれの特徴を活かしたレーシングカーに仕上げるとのことだが、Zはどんなところが特徴で強みなのでしょうか?

片桐氏:GT500に関していうと、規定で中身はあまり変えられず、大きく変わるのが外観。より流線形に近いのがZですが、要素はいろいろあるので、エンジニアが日々いろいろ研究しながら勝てるマシン造りを目指している。

グプタ氏:チーフデザイナーの(アルフォンソ・)アルバイサとZやGT-Rのデザインについて話したとき、私が思うにZは「美しさ」、GT-Rは「野獣」なんです。つまり、日産にある2つのブランドアイコンは「美女と野獣」なんです。

──ZのGT3マシンやGT4車両の可能性はあるのでしょうか?

片桐氏:将来計画や商品計画をお話する訳にはいかないのですが、当然お客さまのニーズや市場、ポテンシャルがあれば、その可能性は排除しません。