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マツダ、デミオからMAZDA2に変更しカーボンニュートラルレース参戦 伝統の55号車で「若干パワーを上げてみた」と前田育男氏
2022年3月17日 11:35
マツダはディーゼルエンジンに、ユーグレナのサステオを組み合わせて参戦
2021年シーズンのスーパー耐久シリーズ最終戦岡山で、カーボンニュートラル燃料「サステオ」を使って急遽スポット参戦したマツダは、2022年シーズンのスーパー耐久にフル参戦する。
2月23日に富士スピードウェイで行なわれた公式テストに2022年シーズン用の車両を持ち込み、積極的に走り込みを行なっていた。
2021年シーズンはスポット参戦だったためか、「デミオ」(37号車 MAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIO)で参戦していたマツダだが、2022年シーズンのフル参戦に伴って「MAZDA2」(55号車 MAZDA SPIRIT RACING MAZDA2 Bio concept[前田育男/寺川和紘/関豊/井尻薫])へと車両をアップデート。ヘッドライトが精悍な目つきとなり、フロントバンパーも変更されている。
この車種変更に関して、チーム代表でもあり参戦ドライバーでもある前田育男氏(マツダ 常務執行役員)は、「さすがにもう売っていないクルマはまずいだろう」とのことで、デミオからMAZDA2に変更されたと語った。
スケールアップに伴い価格低下を目指すユーグレナのサステオ
このMAZDA2バイオコンセプトが使用するカーボンニュートラル燃料は、ユーグレナが生産するバイオ燃料「サステオ」。サステオは「サステナブルなオイル」が由来となっているもので、軽油の代替となる「次世代バイオディーゼル燃料」、ジェット燃料の代替となる「バイオジェット燃料(SAF)」などをラインアップしている。もちろん、MAZDA2バイオコンセプトが使用するのは、次世代バイオディーゼル燃料だ。
ユーグレナ 代表取締役社長 出雲充氏は、昨年の岡山最終戦の段階でこのサステオの価格を「リッター1万円くらい」と明かしており、今後大規模プラントを建設することで、リッター200円近くに引き下げていくという。価格の引き下げのためには水素と同様、使うユーザーが増え、市場が広がることが重要で、サステオの可能性をMAZDA2バイオコンセプトが実証していくことになる。
出雲社長は200円代に引き下げた後、サステナブル社会へ向けてのインセンティブで100円代をと想定していたが、昨今の原油価格の上昇に伴う燃料代の高騰を見ると、近い将来にはいい勝負になるのではと思える。トリガー条項による燃料代の引き下げも議論されているが、国が本当にカーボンニュートラル社会へ舵を切りたいならば、どこかの段階でインセンティブは従来の燃料ではなく、カーボンニュートラル燃料へと切り替えていく必要があるのかもしれない。
もちろん、これまで投資されたインフラや資産をどう移行していくのかという議論も必要で、ただ単に2050年にカーボンニュートラル実現というのではなく、そこへ向けてのステップや後押しが必須だ。サステオはカーボンニュートラルという付加価値を付けた国産燃料なので、資源の少ない日本にとって燃料を輸出できる可能性を秘めためずらしい製品となっている。
55号車というゼッケンを背負うMAZDA2
前田氏によると、アップデートは外見だけではないという。「若干パワーを上げてみた」と、エンジン面にも手が入っているとのことだ。ただ、富士テストでの最速ラップタイムは2分4秒250と、ライバルとなる水素カローラの1分59秒989とは差がある。ST-Qクラスの最速はカーボンニュートラルGR86の1分53秒454となっており、昨年の最終戦岡山ではST-Qクラス優勝となったものの、優勝はなかなか大変な状況に見える。
前田氏は、「半端ない差」としつつ「86とかBRZとかすごく速いので。そこに付いていくのではなく、ちょっとだけ、毎回ちょっとずつアップデートしていこうかな」と、着実な進化を狙っていると語ってくれた。
また、マツダファンにとっての注目は、ゼッケンが37号車から55号車になったことだろう。マツダの55号車といえば、1991年6月23日に日本車として初めてル・マンを制覇したマツダ 787Bが付けていたゼッケンだ。この55号車という番号は、もちろんマツダからリクエストしたもの。たまたま空いていたと前田氏は言う。
このゼッケンを背負うことについて前田氏は、「重いです、非常に重いです」と語る。「言い方は合っているかどうか分からないですが、久しぶりのマツダのワークス活動にしたいと。チームもMAZDA SPIRIT RACINGを立ち上げた。なので、55番を授かってもいいかなと思いまして。うーん、ちょっと重いですね(笑)」と、実際に55番のゼッケンを付けたMAZDA2を目にすると、その栄光のゼッケン番号の重さを感じているようだった。
目標について「マツダの55号車と同じですか」(24時間レースを優勝ですか?)と前田氏に聞くと、少し考えた末、「ああいった形とはちょっと違うかもしれないですけど、がんばっているところを伝えたい」という答えが返ってきた。
速さでは確かにほかのST-Qクラスに現時点で劣っているものの、前田氏によると信頼性や安定感で戦いたいとのこと。とくに狙っているのが鈴鹿の5時間レースより、富士の24時間レースのようで、「24時間は何があるか分からないので」(前田氏)と24時間後の順位を目標にしているようだ。