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ユーグレナ、日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料 製造実証プラント竣工式。「日本をバイオ燃料先進国に」と出雲社長
2020年にバイオジェット燃料による日本初のフライトを実現する目標を発表
2018年11月2日 18:52
- 2018年11月2日 開催
ユーグレナは11月2日、神奈川県横浜市鶴見区のAGC 京浜工場内に新たに建設した、日本初となる「バイオジェット・ディーゼル燃料 製造実証プラント」の竣工式を開催した。
ユーグレナは2005年に微細藻類のミドリムシ(学名:ユーグレナ)を屋外大量培養する技術の確立に世界で初めて成功。現在は食品や化粧品といったヘルスケア商品を製造・販売するほか、ユーグレナや廃食油をベースとした「バイオディーゼル燃料」「バイオジェット燃料」の実用化に向けて研究・開発を進めており、2014年7月からはいすゞ自動車と共同で、バイオディーゼル燃料を使ったいすゞの工場従業員向け送迎バスの運行実証を続けている。
新施設となるバイオジェット・ディーゼル燃料 製造実証プラントは、2017年6月1日に建設着工し、約1年半後の10月31日に竣工。7787.6m2の敷地面積に6種類の設備を持ち、バイオジェット燃料、次世代バイオディーゼル燃料、バイオナフサなどを製造。神奈川県や横浜市からの助成金を含めた投資総額は約58億円となっている。
バイオジェット・ディーゼル燃料 製造実証プラントの概要
所在地:神奈川県横浜市鶴見区末広町1丁目1(AGC 京浜工場内)
敷地面積:7787.6m2
製造能力:日産5バレル
製造量:年産125kL(試験の実施状況、保守の発生状況などにより数量は変動)
製造品目:バイオジェット燃料、次世代バイオディーゼル燃料、バイオナフサなど
竣工式では冒頭で、登壇者の7人がいすゞの「新型シャトルバス」で会場入りする演出が行なわれ、各登壇者によるスピーチ、テープカットセレモニー、給油セレモニーなどが実施された。
「バイオジェット燃料を使った日本初の有償フライト」を2020年に実施
竣工式では、最初にユーグレナ 代表取締役社長 出雲充氏がスピーチを実施。出雲氏は国連サミットで「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択され、2015年12月に採択されたパリ協定でもCO2の削減目標が国ごとに設定されていることを紹介し、一方で今後の2035年想定でも多くの自動車で液体燃料を使って走行していると予測されていることから、これからもバイオ燃料のニーズが高まっていくと解説。その状況下で、米国や欧州では具体的な数量を定めてバイオ燃料の導入を推進していることに対し、日本は現状でのバイオ燃料の使用量が極めて低いことに加え、2022年までの計画でもこの数値を維持するという設定に止まっていると述べ、この分野における取り組みで日本が遅れをとっていることについて危機感を示した。
また、航空機の運航におけるCO2排出量の削減も重要性を帯びており、各航空会社では効率性の高い新型機の導入、運航方式の改善などによって航空機からのCO2排出削減に取り組んでいるが、バイオジェット燃料を導入することが最もCO2排出削減に寄与するとの試算を紹介。すでに米国や欧州ではバイオジェット燃料を使った有償フライトが一部でスタートし、すでに約15万回のフライトが行なわれているが、日本では現時点で1回の飛行も実現していないと強調。ユーグレナではANA(全日本空輸)などと協力してバイオジェット燃料の開発を進め、2019年春ごろをめどにASTM企画認証を取得し、東京オリンピック・パラリンピックが行なわれる2020年に「バイオジェット燃料を使った日本初の有償フライト」を実現するとの目標を掲げ、「ゼロを1にする」と語った。
このほかに出雲氏は、ユーグレナが生産する次世代バイオディーゼル燃料の特徴として、日本でこれまで使われてきたほかのバイオディーゼル燃料は構造内に酸素を多く含む「FAME」と呼ばれる遊離脂肪酸となっており、このバイオディーゼル燃料は国の制度によって燃料内の5%までと定められていると解説。しかし、新たに建設されたこのプラントで生産される次世代バイオディーゼル燃料は酸素を一切含んでおらず、石油から作られる軽油とまったく同じ品質となっていることから、含有量100%で燃料として使えるとアピールした。
出雲氏はユーグレナのバイオディーゼル燃料、バイオジェット燃料の価格面についても説明し、このプラントで生産する燃料は「1万円/L」であると紹介。これはプラントの建設に60億円が投じられ、さらに年間の運転コストとして6億円が必要になるとして、建設費を10年で減価償却すると想定すると、1年のコストが12億円となり、年間の生産量として設定している125kLで割り算をすると1万円/Lになると解説した。
出雲氏は「これは皆さん、ちょっと高いなと感じたと思います」としつつ、2025年に設定した商業生産化の段階では、年間の生産量を現状の2000倍となる25万kLまで増加。実証生産で生産内容の見直しなども進めることで、燃料価格を「100円/L」まで押し下げると語り、「そのための技術的な開発のめども十分にたってきた」とコメント。これを受け、バイオディーゼル燃料やバイオジェット燃料を商業化して日本を「バイオ燃料先進国」にするとの決意から、出雲氏はこれまで進めてきた取り組みを「GREEN OIL JAPAN(グリーンオイルジャパン)」という新しい名称で宣言した。