ニュース

ユーグレナ、日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料 製造実証プラント竣工式。「日本をバイオ燃料先進国に」と出雲社長

2020年にバイオジェット燃料による日本初のフライトを実現する目標を発表

2018年11月2日 開催

10月31日に竣工したユーグレナ「バイオジェット・ディーゼル燃料 製造実証プラント」の反応装置棟

 ユーグレナは11月2日、神奈川県横浜市鶴見区のAGC 京浜工場内に新たに建設した、日本初となる「バイオジェット・ディーゼル燃料 製造実証プラント」の竣工式を開催した。

 ユーグレナは2005年に微細藻類のミドリムシ(学名:ユーグレナ)を屋外大量培養する技術の確立に世界で初めて成功。現在は食品や化粧品といったヘルスケア商品を製造・販売するほか、ユーグレナや廃食油をベースとした「バイオディーゼル燃料」「バイオジェット燃料」の実用化に向けて研究・開発を進めており、2014年7月からはいすゞ自動車と共同で、バイオディーゼル燃料を使ったいすゞの工場従業員向け送迎バスの運行実証を続けている。

 新施設となるバイオジェット・ディーゼル燃料 製造実証プラントは、2017年6月1日に建設着工し、約1年半後の10月31日に竣工。7787.6m2の敷地面積に6種類の設備を持ち、バイオジェット燃料、次世代バイオディーゼル燃料、バイオナフサなどを製造。神奈川県や横浜市からの助成金を含めた投資総額は約58億円となっている。

バイオジェット・ディーゼル燃料 製造実証プラントの概要

所在地:神奈川県横浜市鶴見区末広町1丁目1(AGC 京浜工場内)
敷地面積:7787.6m2
製造能力:日産5バレル
製造量:年産125kL(試験の実施状況、保守の発生状況などにより数量は変動)
製造品目:バイオジェット燃料、次世代バイオディーゼル燃料、バイオナフサなど

反応装置棟の上層に大きくユーグレナの社名ロゴが描かれている
製造したバイオジェット燃料やバイオディーゼル燃料などを貯蔵するバイオ燃料タンク
バイオジェット燃料、バイオディーゼル燃料などを出荷前に石油系燃料と混合して保管する貯蔵タンク
実証プラントに蒸気や圧縮空気などを供給する用役設備
蒸気などはパイプを使って用役設備から他の施設に送られる

 竣工式では冒頭で、登壇者の7人がいすゞの「新型シャトルバス」で会場入りする演出が行なわれ、各登壇者によるスピーチ、テープカットセレモニー、給油セレモニーなどが実施された。

竣工式の冒頭で、いすゞの「新型シャトルバス」が会場脇に横付け
車体中央のドアが開き、登壇者の7人が壇上に向かう演出が行なわれた
新しいシャトルバスは含有率100%でもエンジンに負担がかからないという「次世代バイオディーゼル燃料」を使い、2019年夏から実証実験を開始する
新型シャトルバスに次世代バイオディーゼル燃料を入れる給油セレモニーやテープカットセレモニーなども行なわれた

「バイオジェット燃料を使った日本初の有償フライト」を2020年に実施

株式会社ユーグレナ 代表取締役社長 出雲充氏

 竣工式では、最初にユーグレナ 代表取締役社長 出雲充氏がスピーチを実施。出雲氏は国連サミットで「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択され、2015年12月に採択されたパリ協定でもCO2の削減目標が国ごとに設定されていることを紹介し、一方で今後の2035年想定でも多くの自動車で液体燃料を使って走行していると予測されていることから、これからもバイオ燃料のニーズが高まっていくと解説。その状況下で、米国や欧州では具体的な数量を定めてバイオ燃料の導入を推進していることに対し、日本は現状でのバイオ燃料の使用量が極めて低いことに加え、2022年までの計画でもこの数値を維持するという設定に止まっていると述べ、この分野における取り組みで日本が遅れをとっていることについて危機感を示した。

 また、航空機の運航におけるCO2排出量の削減も重要性を帯びており、各航空会社では効率性の高い新型機の導入、運航方式の改善などによって航空機からのCO2排出削減に取り組んでいるが、バイオジェット燃料を導入することが最もCO2排出削減に寄与するとの試算を紹介。すでに米国や欧州ではバイオジェット燃料を使った有償フライトが一部でスタートし、すでに約15万回のフライトが行なわれているが、日本では現時点で1回の飛行も実現していないと強調。ユーグレナではANA(全日本空輸)などと協力してバイオジェット燃料の開発を進め、2019年春ごろをめどにASTM企画認証を取得し、東京オリンピック・パラリンピックが行なわれる2020年に「バイオジェット燃料を使った日本初の有償フライト」を実現するとの目標を掲げ、「ゼロを1にする」と語った。

 このほかに出雲氏は、ユーグレナが生産する次世代バイオディーゼル燃料の特徴として、日本でこれまで使われてきたほかのバイオディーゼル燃料は構造内に酸素を多く含む「FAME」と呼ばれる遊離脂肪酸となっており、このバイオディーゼル燃料は国の制度によって燃料内の5%までと定められていると解説。しかし、新たに建設されたこのプラントで生産される次世代バイオディーゼル燃料は酸素を一切含んでおらず、石油から作られる軽油とまったく同じ品質となっていることから、含有量100%で燃料として使えるとアピールした。

 出雲氏はユーグレナのバイオディーゼル燃料、バイオジェット燃料の価格面についても説明し、このプラントで生産する燃料は「1万円/L」であると紹介。これはプラントの建設に60億円が投じられ、さらに年間の運転コストとして6億円が必要になるとして、建設費を10年で減価償却すると想定すると、1年のコストが12億円となり、年間の生産量として設定している125kLで割り算をすると1万円/Lになると解説した。

 出雲氏は「これは皆さん、ちょっと高いなと感じたと思います」としつつ、2025年に設定した商業生産化の段階では、年間の生産量を現状の2000倍となる25万kLまで増加。実証生産で生産内容の見直しなども進めることで、燃料価格を「100円/L」まで押し下げると語り、「そのための技術的な開発のめども十分にたってきた」とコメント。これを受け、バイオディーゼル燃料やバイオジェット燃料を商業化して日本を「バイオ燃料先進国」にするとの決意から、出雲氏はこれまで進めてきた取り組みを「GREEN OIL JAPAN(グリーンオイルジャパン)」という新しい名称で宣言した。

ユーグレナの出雲社長は、横浜市、千代田化工建設、伊藤忠エネクス、いすゞ自動車、ANAホールディングス、ひろしま自動車産学官連携推進会議と協力して進めているバイオ燃料についての取り組みを、「GREEN OIL JAPAN(グリーンオイルジャパン)」という新しい名称で宣言
いすゞ自動車株式会社 執行役員 一政都志夫氏は、2014年7月から進めている従来型バイオディーゼル燃料でのシャトルバス実証実験の走行距離が累計10万kmを超え、問題なく走行を続けていると紹介。2019年夏から実証実験を開始する次世代バイオディーゼル燃料のサンプルで行なったエンジン性能の確認では、軽油規格を満たし、エンジン出力や排出ガス性能でも「間違いなく軽油相当」と説明した
ANAホールディングス株式会社 コーポレートコミュニケーション室 CSR推進部 部長 宮田千夏子氏は、2016年10月に国連の専門機関「ICAO(国際民間航空機関)」で「2021年以降に国際航空便からのCO2排出量を増やさない」と決定されているが、今後も航空便の利用客が年間5%の伸びを示していくことが予想されており、今後のさらなるCO2削減に向けてバイオジェット燃料の使用が不可欠になっていくと語った
ひろしま自動車産学官連携推進会議 エネルギー専門部会長 工藤秀俊氏は広島県にも大きな被害を及ぼした豪雨災害などについて触れ、「地球を守るということは、人々の豊かで健康で健やかな生活を守ること、すなわち人を守ることだとあらためて感じた1年になりました」と語り、メディアなどで環境対策として大きく取り上げられているEV(電気自動車)だけでなく、自分たちの活動では環境対策に向けたマルチソリューションの1つとして、徹底的に効率を改善した内燃機関と既存のインフラ、ユーグレナのバイオディーゼル燃料によるカーボンニュートラルな社会作りに取り組んでいると述べた
横浜市 経済局長 林琢己氏は、横浜市では京浜臨海地区にさまざまな企業の研究・開発拠点を誘致して次世代産業の振興を推し進めており、ユーグレナの事業についても「リーディングな取り組みとして注目している」と述べた
千代田化工建設株式会社 専務執行役員 児島雅彦氏は、今回のような実証プラントはユーザーとの共同作業になる部分が多く、問題にぶつかっては抽出して解決し、それが製品を生産するコマーシャルプラントにつながっていくという流れがあり、今回の新しいチャレンジを「ある意味では楽しく作り上げる作業ができた」とコメント
伊藤忠エネクス株式会社 取締役(兼)専務執行役員 高坂正彦氏は、同社では米国でのバイオディーゼル燃料の取り扱いがあるが、それは100%ではなくまだ混入させての利用で、ユーグレナの取り組みは難易度の高い新しいチャレンジで、自分たちも最善を尽くしていきたいと意気込みを語った