ニュース

パナソニック、2021年度決算発表 グループ全体で増収増益し、オートモーティブも売上高1兆671億円で黒字転換

2022年5月11日 発表

パナソニックホールディングス 取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏

車載システムもテスラ向け電池も好調に推移

 パナソニックホールディングスは5月11日、2021年度(2021年4月~2022年3月)の連結業績を発表した。そのなかで、車載コックピットシステムや車載エレクトロニクス事業を行なうオートモーティブの業績は、売上高は前年比5%増の1兆671億円、調整後営業利益は116億円増の23億円と黒字転換。営業利益も前年度の131億円増の13億円となり黒字転換した。

 パナソニックホールディングス 取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏は、「第1四半期は自動車生産が回復したが、第2四半期以降の自動車減産の影響もあって、為替影響を除くと前年並みになった」と述べた。

パナソニック オートモーティブの2021年度(2021年4月~2022年3月)の業績

 また、テスラ向けの車載電池などを担当するエナジーは、売上高が前年比27%増の7644億円、調整後営業利益は304億円増の682億円、営業利益が32億円増の642億円となった。梅田副社長兼CFOは「旺盛なEV需要に加えて、前年度のコロナ影響の反動増や、北米の新ラインの稼働もあり、車載電池が大幅な増収となった。原材料高騰が影響しているものの、これも旺盛な需要を背景にした増販益でカバーができている。データセンター向け蓄電システムなども伸長して、増収になった」と総括した。

 続いて、現在開発中の車載用リチウムイオン電池「4680」については、「円筒形電池の特徴である単体での高い出力を活かすことができる。だが、しっかりとしたノウハウで作り込まないと、電池単体の安全性が保てない。これがパナソニック エナジーとしての競争力になる。自動車メーカーにとっては、さまざまなレイアウトに対応できたり、モジュール化する際の合理化が図れる点がメリットになる」と同社の強みをアピールした。

パナソニック エナジーの2021年度(2021年4月~2022年3月)の業績

 パナソニック エナジーでは、現在、和歌山工場で試作ラインを設置する取り組みを開始しているが、「和歌山工場の建屋のリノベーションを行なっており、同時に生産設備の製作も進めている。予定通りに進んでおり、2023年度中には試作、量産を含めた検証を行なっていく」と述べた。また「テスラからは、4680の開発加速に対する強い要望とともに、量産している2170にもついても強いデマンド(要求)がある。米EV新興メーカーであるカヌーへの2170の供給も発表しており、これは日本の工場から供給することになるだろう。その他のカーメーカーともさまざまな検討を行なっているが、伝えられるような決まった事実はない」と語った。さらに、米国での4680の新工場の建設計画については、「今はしっかりと量産を立ち上げていくことに集中するフェーズである。現時点で話せることはない」と補足した。

家電が苦しかったがパナソニックグループ全体でも増収増益

パナソニックグループ全体の2021年度(2021年4月~2022年3月)の業績

 パナソニックホールディングス全体での2021年度の売上高は、前年比10.3%増の7兆3887億円、営業利益は38.3%増の3575億円、調整後営業利益は16.4%増の3577億円、税引前利益は38.2%増の3603億円、当期純利益は54.7%増の2553億円となった。情報通信向けのインダストリーや、車載関連のエナジーの販売増に加えて、コネクトではBlue Yonderの新規連結もあり、パナソニックグループ全体の増収増益に貢献した。

 原材料費高騰の影響は、年間でマイナス1500億円。物流費の高騰の影響でマイナス100億円となっており、合計でマイナス1600億円の影響があったという。また、原材料費高騰の影響のうち、約2割をエナジーが占めている。原材料価格高騰の影響を最も受けているのが白物家電などを担当している“くらし事業”であり、影響額の半分強を占めた。

パナソニックグループ全体のセグメント別 2021年度(2021年4月~2022年3月)の業績

 セグメント別では、くらし事業の売上高は前年比3%増の3兆6476億円、営業利益が32%減の1136億円。コネクトの売上高は前年比13%増の9249億円、営業利益は前年度の200億円の赤字から517億円の黒字に転換。インダストリーの売上高は前年比15%増の1兆1314億円、営業利益は105%増の832億円となった。

 一方、2022年度(2022年4月~2023年3月)の連結業績見通しは、パナソニックグループ全体で売上高は前年比6.9%増の7兆9000億円、営業利益は0.7%増の3600億円、調整後営業利益は6.2%増の3800億円、税引前利益は0.1%減の3600億円、当期純利益は1.8%増の2600億円と増収増益を見込み、梅田副社長兼CFOは「オートモーティブ、コネクトでは需要が回復し、インダストリーとエナジーは好調を継続する」とした。

パナソニックグループ全体の2022年度(2022年4月~2023年3月)の業績

 オートモーティブの売上高は前年比19%増の1兆2700億円、調整後営業利益が156億円増の180億円、営業利益は166億円増の180億円を見込む。「自動車生産の回復を見込んでいるが、半導体や部材の不足などによる生産変動のリスクがある。また、半導体不足や部材高騰、輸送費用の増加、生産増加や経営体質強化への投資などにより固定費は増加している。これを、増販益やコストダウン推進、部材高騰分の価格改定などによってカバーし、増益を目指す」とした。

 また、エナジーの売上高は、前年比10%増の8480億円、調整後営業利益が158億円減の550億円、営業利益は148億円減の520億円を見込み、「中長期的にEV需要は拡大すると見ている。需要拡大が見込まれる車載電池やデータセンター向け蓄電システムでの増販を見込んでいる」としたが、「2021年度第4四半期以降に、リチウムやニッケル、コバルトなどの原材料価格が急騰している。下期に向けては価格改定や合理化などで改善させるが、年間では悪化する見込みである。そのほかにも、車載向けの4680セル開発などの費用増もある」とまとめた。

パナソニックグループ 2022年度(2022年4月~2023年3月)セグメント別の見通し

 パナソニックグループ全体では、2022年度の原材料費高騰の影響としてマイナス1500億円、物流費の高騰の影響でマイナス300億円の合計でマイナス1800億円の影響を見込んでいる。「物流費高騰の影響は2021年度の3倍になる。とくに欧州向けの物流費が高騰すると見込んでいる」と、物流費や原材料価格高騰の影響がしばらく継続すると見ている。

 なお、2022年度のセグメント別業績では、くらし事業は、売上高は前年比2%増の3兆2320億円、調整後営業利益は35億円増の1350億円、営業利益が158億円増の1240億円。コネクトの売上高は前年比18%増の1兆900億円、調整後営業利益は223億円増の380億円、営業利益が158億円減の370億円。インダストリーの売上高は前年比1%減の1兆1200億円、調整後営業利益は93億円増の960億円、営業利益は68億円増の900億円としている。

経営環境変化による影響(2022年度見通し)