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新型「ステップワゴン」に乗った! 地道に磨き上げてきた6代目の乗り味とは?

新型ステップワゴンをホンダのテストコース内で試乗した

エンジンからボディまで熟成された新型ステップワゴン

 ミニバンは家族や友人と過ごす人生の1シーンにはよき相棒になる。ステップワゴンもそんな1台で、過去5代にわたって多くの人々に愛されていた。

 新型ステップワゴンの試乗を終えての第一印象を先に述べると、「クルマは人のために」という思想を表している1台だと感じた。そのショートインプレは後述していく。

ホンダの栃木研究所の構内で新型ステップワゴンを試乗してきた。白いボディが「スパーダ(SPADA)」で、水色のボディが「エアー(AIR)」

 グレードはシンプルなルックスの「エアー」とグリルが特徴的な「スパーダ」があり、それぞれストロングハイブリッドのe:HEVと、1.5リッターガソリンターボの2種類のパワートレーンがあり、後者は4WDも用意されている。

 試乗したのはエアーとスパーダのe:HEVで、ホンダの栃木研究所の構内でハンドルを握り、またホンダ研究員の運転するステップワゴンで2列目、3列目シートを体感することができた。

 試乗コースは短いストレートと狭い街角を想定した設定で、距離は短いがファーストインプレッションにはちょうどいい内容。装着タイヤはブリヂストンの「TURANZA ER33」でサイズは205/60R16だった。

エアー(ガソリン車)
ガソリン車はフロント部にインタークーラーが見える
ガソリン車の装着タイヤはグッドイヤーの「エフィシェントグリップ」で、サイズは205/60R16
初代の面影のある縦長のテールランプを採用
スパーダ(ハイブリッド車)
エアーよりも存在感の大きいフロントグリル
ハイブリッド車の装着タイヤはブリヂストンの「トランザ」でサイズは205/60R16
スパーダはボディ下部をメッキモールがぐるりと囲む

 運転席のメーターまわりは整理されており、正面には10.25インチモニターがデンと構えており、ホンダセンシングの表示が見やすくなっている。

 シートはフィットから始まった大型フレームを使い、ウレタンの厚みを23mmアップしたステップワゴン用にアレンジしたもので、背の高いミニバンに合わせてシートサイドの形状が工夫されており、乗降する際も自然だった。

 ドラポジはハンドルの角度とペダル角度に気配りがあり、こちらも自然に適切なドラポジが取れる。そこから見える視界もスッキリしているのはAピラーを後方にずらし、さらに三角窓のサブピラー形状ともにドライバーから見た断面が細くされており、死角が最小限になっている。また水平方向に伸びやかな解放感のある前方視界はボンネット形状から車幅もつかみやすい。

視界のスッキリした水平基調のインテリア
3列目シート
2列目シート
自然なドライビングポジションが取れる運転席
後席ほどヒップポイントを高くして視界を確保している
視界をよくするためにいろいろな工夫が施されている

 2モーター式のホンダ独自のハイブリッドは従来モデルからの踏襲だが、細部は大幅にリファインされている。エンジンはクランクシャフトの剛性アップで微振動が減少し、その効果でエンジン音が従来型より5dB小さくなっており、確かにエンジンの質的向上は大きく、同じ型式のエンジンとは思えないほどだ。

 ボディ剛性も徹底的に見直しされた。主だったところではサイドシルの断面形状がアップされ、サイドドアの開口部も大幅に補強。構造接着材も多用されて剛性アップも図られた。

ハイブリッド車のエンジン
ハイブリッド車は直列4気筒2.0リッターi-VTECエンジンを搭載。燃費はWLTCモードで20.0km/h(エアー/FF車)
ガソリン車は直列4気筒1.5リッターVTEC TURBOエンジンを搭載。燃費はWLTCモードで13.9km/h(エアー/FF車)

テストコース内の試乗でも素性のよさが分かった

 スタートはモーターで滑らかな加速、その領域は広がりエンジンが始動するのはしばらく後だ。静寂な中で速度が上がっていく。エンジン始動の際も振動のボディへの伝わり方が圧倒的に小さくなっている。

 小まわり性もすぐれており、最小回転半径の5.4mとホイールベース2890mmは従来型と同じだが、ノーズが見やすい利点を活かして取りまわしが大きく向上している。また、視界のわるい狭い路からメイン道路に出るときなどは、ワイパーレバーの先端に付いたスイッチを押すとセンターディスプレイの映像がフロントワイドビューカメラに切り替わり非常に重宝する。

フロントワイドビューカメラは見通しのわるい交差点などでとても重宝する

 短いストレートでは60km/hほどの中速でレーンチェンジを行なったが、ハンドル追従性が素直なのが印象的。ハンドルの余分な動きは少なくて済む。短い試乗だがそれでもボディのしっかりした印象と、ロードノイズの低さによる静粛性の高さを感じることができた。

 ステップワゴンは「使いやすいけど乗り心地が……」という方には、ぜひ試乗をおすすめする。運転席はクッションストロークもあって、体のサポート性もすぐれており2列目でも段差乗り越しの際もストロークの伸びたリアサスペンションと21mm座面が厚くなったシートクッションで衝撃をあまり感じない。バックレストも高くなってるのでユッタリくつろげる。

 シート配置は後方が高くなるレイアウトなので視界は広い。特にサイドガラスが低い位置から水平に配置されている関係上、室内が明るく解放感が合って気持ちがよい。

 これは3列シートでも同様で、また乗り心地も厚くなった座面でショックはよく吸収されている。レッグルームも2列目ほどではないが余裕があってヘッドクリアランスも十分確保されている。欲を言えばもう少しサポート性が高ければよいのだが、それでもミニバンの中では快適なシートに仕上がっている。

2列目も3列目も見晴らしがよく、快適なシートに仕上がっていた

 フロア振動が小さく落ち着いて座っていられるキャビンと、サスペンションの取り付け剛性がアップされたことで乗り心地だけでなく、安定性も高くなったことで、どの席に座っても爽快なのがステップワゴンだ。

 この3列目シートは左右でラゲッジルームの床下収納するタイプで、3列シートを使っても荷物の収納スペースには余裕がある。シート収納は力も必要とせず簡単で、ラゲッジルームはフラットでスクエアな空間に変化する。また荷物も積み込みもしやすい。

2列目はスライド量があり3列目シートへのアクセスもよい
スパーダはオットマンも搭載
ユッタリとくつろげる室内だった
3列目シートは床下収納式なので、左右跳ね上げ式と比べて収納時のラゲッジスペースは広い。シート使用時は床下が深いので背丈の高い荷物も収納できる

 2列目シートについてもう少し触れておこう。左右でシートスライド量が違うがいずれもロングスライドが可能で、左右にも移動できるのでチャイルドシートを装着したままでも3列目シートに乗り込むこともできる。使い方を考えるといろいろ楽しい。またパワースライドドアの開閉はBピラーにある制電スイッチでできるのも便利だ。

 このように使い方に工夫を凝らした軽自動車のノウハウが存分に活かされており、さらにサイズのあるミニバンならではの活用方法を見せられた思いがする。

 ADAS系やコネクテッドは試すことができなかったが、ホンダセンシングはどのモデルにも標準で、アダプティブクルーズコントロールやマルチビューカメラも進化しているという。今や普通に使われているACCなど正式発表の後に公道試乗で試してみたい。

 新しいステップワゴンはびっくりするような飛び道具はないが、冒頭に記した地道に技術を積み重ね、磨き上げた使いやすいミニバンというファーストインプレッションだ。

ユーザーのヒアリングも行ない細部まで気を配った福祉車両

 ホンダは福祉車両にも力を入れていて、新型ステップワゴンの福祉車両の開発では、実際に体の不自由な人がいる家族にもヒアリングを行ないリクエストに可能な限り応えたという。車両は「車いす仕様車」と「サイドリフトアップシート」の2種類を設定。車いす仕様車でも3列目シートはそのまま利用でき、車いすユーザーが乗るときも乗らないときも、利便性が損なわれないのが特徴だ。

最近の車いすは軽量になってきているとはいえ、人も乗るのでそれなりに重くなるが、電動ウインチを搭載し、乗車をサポートしてくれる
これまでは車いすの背もたれを寝かすと、足が助手席の背面に接触してしまうこともあったというが、新型では新たに固定ポイントを後方に設けることで回避している。これもユーザーの声を聞いて分かったことだという
リアゲートの取っ手も通常は右側にあるが、車いす仕様車は同じ導線で作業ができるように配慮して左側に配置されている
スロープも重量を軽くしたり使い勝手を向上させ進化させている。角度が急になればサポートする人も大変になるし、角度が緩やかだと乗降時はクルマの後ろにスペースが必要になり場所を選ぶことになりドライバーは大変になる
標準ボディと異なるのがリアゲートの長さ。車いす仕様車はリアゲートがボディ最下部まで伸びている
サイドリフトアップシートは絶妙な動きで、搭乗者の足がボディにぶつかることなく収納される。約100Kgまで対応しているという