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日本NI、自動車業界向けのイノベーション協創空間「Co-Engineering Lab」を7月4日に正式オープン
2022年7月1日 05:00
- 2022年7月4日 オープン
計測器やソフトウェアの会社であるナショナルインスツルメンツの日本法人、日本ナショナルインスツルメンツは6月30日、日本における自動車業界向けのイノーベーション協創空間「Co-Engineering Lab」を7月4日に正式オープンすると発表した。計測機器など機材をそろえ、単なるデモの場所ではなく、顧客とともに課題を解決するなど、新たなイノベーションを起こしていく場所となる。
1社だけでニーズに対応することは難しい
Co-Engineering Labは、技術、ツール、データを業界のキーパーソンと結びつけ、開発プロセスを加速させるための場所。モデルベース開発/EV/ADASの新技術の中心となり、自動車業界ビジネスとイノベーションの場として機能する予定としている。
オープンに先立ち、日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)代表取締役兼NI APACシニアディレクターのコラーナ・マンディップ・シング氏があいさつ。現在は1社だけでサービスを作り上げていくのは難しいと指摘し、大きな課題を解決していくなかで、アイデアを持っている人とテクノロジーを持っている人をいかにタイムリーに結びつけていくかが重要だとした。
また、「パートナー企業にデモを見たいと言われた場合でもそれだけでなく、アイデアの共有やブレインストーミングを経て、ここで出てきた成果や副産物を、日々の開発、次のマーケティングに生かしてもらいたい」と希望を語った。
Co-Engineering Labについてはナショナルインスツルメンツ Electrification オファリング管理担当シニアディレクターのジョン・デンホフ氏がオンライン参加、現在のエンジニアリングについて説明した。
さらに日本ナショナルインスツルメンツからはエンタープライズアカウント事業本部長の斎藤直士氏も説明を行ない、「コラボレーションスペースとして、協創の空間ができることを目指し、アイデアを持ち寄って、協創空間でありながら、共同でさまざまイノベーションを目指す場所としたい」と語った。
斎藤氏は、日本でCo-Engineering Labを作った理由は、日本が自動車メーカーだけでなくTier1からその下のサプライヤーまでそろったまれな市場であると説明。準備開始から開設まで6か月しかないなかで、テストベンチに使える機材をそろえたという。
スバル、フロスト&サリバン、MathWorksが記念の講演
続いて、Co-Engineering Labのオープンを記念してスバル、フロスト&サリバン、MathWorksが基調講演を行なった。スバルからは技術本部ADAS開発部 部長 兼 自動運転PGM 兼 SUBARU Lab所長の柴田英司氏が登壇した。
SUBARUでは「SUBARU Lab」をオープンしている。SUBARU Labの狙いは、これまで開発部署は旧中島飛行機の事業所を引き継いだ関係で群馬県太田市と東京都三鷹市に置いていたが、AIの開発といったソフトウェアエンジニアを集めるため渋谷区にSUBARU Labを設置した。
柴田氏は「競争力のある会社は、コア技術を内製化にシフトして開発スピードを上げていく。スバルは3~4年前からアイサイトを内製開発し、企画から研究開発、半導体選定まですべて内製している。ラボを加えて、開発インフラから開発プロセスまで、どんどん必要な要素をとりこんで、チームとして強化する役割を担っている」と自社ラボの意義を説明した。
続いて、コンサルティング会社のフロスト&サリバンから、モビリティ部門プリンシパルコンサルタントのPaulo Mutuc氏がEV(電気自動車)や自動運転の予測について講演した。EVの2022年の予測として、普及率は2倍になり、世界で13.3%を占めるとした。テスラやフォルクスワーゲングループは年間販売台数が150万台に達する可能性を指摘し、充電拠点として公共の充電ポイントは世界で220~250万台となり、EV10台に対して1台に達するとした。
一方、自動運転やADASについては、完全自動運転である「レベル5」が2030年に出現する可能性は低いとするものの、現在、販売されている新車の約半数が緊急自動ブレーキなどの「レベル1」を搭載するか搭載可能になっているとし、3年後は新車販売に占める「レベル2」「レベル2+」の比率は約40%と2倍以上伸びるとした。
数値計算ソフトウェアの会社であるMathWorksの望木純一氏は「オープンで協創可能なモデルベース開発を目指して」と題して講演。望木氏は過去に経験した日本語音声認識システムの開発経験から、オープンな開発の必要性を訴えた。
望木氏自身、クローズドな開発環境の限られたデータしか集まらないなかでモデル作成しなければならず、結果、認識精度が上がらず、システムが1件も採用されなかった経験があることから、今回のCo-Engineering Labには期待を寄せているとした。開発環境整備負荷の増大の対策としてオープンでコラボレーション型のアプローチが有効だとし、オープンで柔軟な開発環境の必要性を訴えた。