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日野、追加不正発覚について小木曽社長が会見 「誤った試験方法と認識していなかった」

2022年8月22日 発表

排出ガス劣化耐久試験で新たな不正行為が発覚したことについて記者会見を行なった日野自動車株式会社 代表取締役社長 小木曽聡氏

 日野自動車は8月22日、国土交通省の立ち入り検査で新たに発覚した「排出ガス劣化耐久試験に関する不正行為」についてオンライン記者会見を開いた。出席者は、代表取締役社長 小木曽聡氏、コンプライアンス推進担当 取締役兼専務役員 中根健人氏、品質本部 本部長 玉木豊久氏の3名。

 今回新たに判明した不正は、小型エンジン「N04C(HC-SCR)/2019年モデル」の排出ガス認証申請において、「劣化耐久試験の各測定点において排出ガス測定を2回以上行なう必要があるところ、測定回数が不足している測定点があったこと」「劣化補正値の算出の際に、それらの測定データを使った算出が求められるところ、各測定点で1回分の測定データにより算出していたこと」の2点。

 この結果、同エンジンを搭載する小型トラック「デュトロ」をはじめ、トヨタ自動車にOEM供給している「ダイナ」が8月22日より出荷停止となった。

 日野自動車は2022年3月に、排ガス性能の劣化耐久試験中にマフラーを交換したり、燃費測定において燃料流量校正値を燃費に有利に働くような数値に設定するといった不正が見つかり、大型エンジン「A09C」「E13C」や中型エンジン「A05C(HC-SCR)」を搭載する車両の出荷を停止していたが、小型エンジン搭載車も出荷停止となる。

日野自動車株式会社 コンプライアンス推進担当 取締役兼専務役員 中根健人氏(左)、品質本部 本部長 玉木豊久氏(右)

認証取得当時に関連する法規の理解が不足していた

 今回の追加不正発覚について小木曽社長は、「特別調査委員会および自社の調査検証結果を8月2日に報告したばかりなのに、国土交通省の立ち入り指摘によって判明したことは、大変重大かつ深刻であり、弁解の余地もございません」と陳謝。原因については、「技術検証において過去の認証関連データの詳細確認が不十分で、認証取得当時に関連する法規の理解不足や認証試験に関する標準規定類の不備により、当時の担当者らが誤った試験方法であることを認識していなかった。仕組みとして認証プロセスの適正性をけん制、確認する体制が整っていなかった」と説明した。

 質疑応答で「故意ではなかったのか? 特別調査委員会がなぜ見つけられなかったのか?」を問われると、コンプライアンス推進担当の中根氏は、「測定回数については、数回計測している認識であったのと、当時の関係者も複数回測定している認識だったので、そもそも不正しているという認識がなかった。調査委員会は3月に判明したエンジン4機種についての不正の原因や経緯を調査することが目的であったし、こちらからも問題提起を挙げていなかったので、調査の手がまわらなかったと認識している」と回答。また、さらなる不正が見つかる可能性やサプライヤーへの支援内容を問われると、「規定を見直してしっかりやっていく。今行なっている試験は正しいし、国交省の立ち合いは継続しているので、現時点ではないと考えている。サプライヤーへの支援については、これまで通り個別に対応していく」と答えた。

小型トラックが加わり全体で61%が出荷停止に

 業績への影響について小木曽社長は「国交省の監査中で結果もまだでていないため、出荷停止の期間が見えておらず回答は難しい」としつつ、「国内のトラック完成車の出荷停止の割合は、大型中型トラックを作る古河工場と小型トラックを作る羽村工場があり、2021年は両方で約10万5000台を生産しているが、古河工場は8月2日以降で75%、羽村工場は今回の件で51%、2工場合算で約61%、計6万4000台が出荷停止となる。業績には非常に大きな影響がでると理解している。また、工場の稼働が半分を切るので、出荷停止の間に設備のメンテナンスなどを行ない、より品質を高めるための努力を行なう。ただし、出荷再開についてはまだ目途は立っていない」という。

 さらに、今後の再発防止について聞かれた小木曽社長は、「仕組み、組織、チェックシート、規定類の整備については、ここ1年でしっかりやってきたつもりなので、監査を受けても大丈夫だと考えている。また、職場の環境造りについては、会社全体の方針として売り上げ中心から、職場の風土や人材育成、コミュニケーションの在り方を中心に変えている。もちろん組織変更するだけでなく、ちゃんと機能していかるも確認していく」と今後の挽回についても語った。