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SUPER GT 板東代表定例会見、FIA-F4を担当するFIAチャンピオンシップコーディネーター ディアナ・メリオ氏が登壇

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏(左)と、FIA チャンピオンシップコーディネーター ディアナ・メリオ氏(右)

 SUPER GT第5戦鈴鹿において、SUPER GTを運営するGTアソシエイション代表 坂東正明氏による定例会見が行なわれ、FIA(国際自動車連盟) チャンピオンシップコーディネーター ディアナ・メリオ氏が同席した。

 SUPER GTのサポートレースとして開催されている「FIA-F4日本選手権」では、FIAが定めるレギュレーションの変更により2024年以降に第2世代車両を導入する予定となっている。メリオ氏はFIAでF4も担当しており、来日は日本のF4の現状視察になる。坂東代表は、「今の日本のF4のあり方を見ていただき、できるだけみんなで協力しながら若手育成の体制も作っていきたい」としてメリオ氏を紹介した。

FIA チャンピオンシップコーディネーター ディアナ・メリオ氏

 メリオ氏は、「このような素晴らしいサーキットで開催される日本のF4のレース運営を見ることができてうれしく思います。こうした素晴らしいサーキットにおけるハイレベルなレース運営ができるよう、JAFとGTAとともに、深い協力関係のもとチャンピオンシップの成功に向け引き続き頑張っていきます」とコメントした。

若手がどんどん入ってこられる環境を作るべき

 メリオ氏はF4に関するセクションを終えた段階で退席した。その後、SUPER GTに関する板東代表の会見が行なわれた。板東代表は、「(第5戦鈴鹿は)450kmのレース、2022年は3回目。この後タイヤメーカーと、タイヤの持ち込み本数、長く走れるタイヤ作り、それに対する燃費やパーツなどについて話し合う。全体的なコスト環境を考えながら来期に向けて進めるところで、今はそれに対してデータを取っている」とコメント。また、「(タイヤ、燃料などの性能が)変わることで各チーム戦略の幅は広くなってくると思う」と述べ、質疑応答に移った。

──来シーズン、ほかのカテゴリーのシリーズ戦も考えるとタイトなスケジュールかと思うが、どのように考えているか?

板東代表:SUPER GTが8戦、JRP(全日本スーパーフォーミュラ選手権を運営する日本レースプロモーション)は7戦で、計15週。そこにスーパー耐久やほかの世界選手権などが入ってくることも考慮すると、実際の稼働率は結構ハードになるとは思います。

 しかし、今よりハードになるとしても、年寄りばかりだから「疲れちゃう」となるわけで、そのスケジュールのなかに若手がどんどん入ってくる環境を作らないといけない。稼働率が多くなればそれだけ仕事があるわけで、給与や雇用の面で若い人たちを受け入れられるキャパシティの大きな体制になってれば、全体としてはいいこと。

 迎え入れる体制がそこにあるかどうかではないか。会社としてわれわれも考えなければいけないが、より若い人たちを迎え入れる方法を考えるべきで、業界の課題としてみんなとコミュニケーションを取っていきたいと思います。

──クラス1規定が事実上なくなり、車両規定に関して自由度は高くなっていると思われる。GTAではJRPと共同でカーボンニュートラルフューエルに取り組んでいるが、JRPはさらにナチュラルファイバーを使うなどの取り組みもしている。GTAでの動きは?

板東代表:クラス1の安全規定はDTM(ドイツツーリングカー選手権)と一緒に作った。第2戦に3号車(CRAFTSPORTS MOTUL Z)が大きなクラッシュを起こしたが、ドアがなくなるような状況下でも無事だった。あの安全性は維持したい。今の車速と空力、ダウンフォースのなかで(GT500については)モノコックの安全規定を作ったので、それを最大限維持しなければならない。

 われわれが国内で何か(新しいことを)するための自由度というより、今の安全を維持したなかでの自由度であればいい。今後もしハイブリッド(のレースカー)などが出てきたときに、新しいモノコックを採用したり、プラスαしたりしなければいけないとは常に思っていること。

 モータースポーツ業界がSDGsを考えるなかでは、レース車両そのものだけでなく、(人が増えることで出る)ゴミのリサイクルなど、お客さんや運営の人たちに対して何ができるかも重要。日本のモータースポーツ業界が環境対応するにあたっては、車両、燃料のほかにもやっていかなければならないことがあります。

 (鈴鹿戦後)燃料(カーボンニュートラルフューエル)が通関を通る予定で、火曜日のテストには間に合わないので最終第8戦のもてぎに持って行く。従来の燃料でも起きていることだが、冷えていると油圧が落ちて燃料がオイルに混じりやすくなるので、暖機運転しないとならない。

 GT500はエンジンをかけなくてもオイル(油圧)が上がるので大丈夫だが、GT300は暖機運転がどこまでもつか確認しているところ。F3のエンジンでも同じ燃料でテストしている。1つひとつ確実にステップを踏んでいくが、業界そのものがやらなければいけないことはたくさんある。

──GT500の次期車両は、2024年以降の規定ではDTMとの足並みを揃えなくてもよくなった。エアロの形状などにおいて自由度が増すところもあるのか?

板東代表:増さないです。お客さんが見て変わったなと思えるようならやってもいいと思う。でも、見えない(分かりにくい)ところにお金をかけるべきではない。環境への配慮とか、お客さんが見て分かる、喜んでもらえる、というならやるけれど、過度な空力(性能向上)をやってどうなるのか。風洞試験などでもものすごいコストがかかるわけだから、ある一定の範囲で空力をやっていただこうと思っています。

 何年か先のことを考えなければいけないのは理解しています。そのなかで10年後も音を出せるレースを継続していきたいと思うので、知恵があったら貸してください。

──2021年で終了したSUPER GTの地上波番組に代わるものとして、YouTubeで動画配信する「SUPER GT Video Online」を始めたが、状況は?

板東代表:どんな風になるのかと思ったが、実際に始まって体制を整えながら一つ一つやっていって、会員数やユーザーの反応は、費用対効果としては思ったよりはいい。6月、7月のレースがない時期は数字が落ちるが、イベントがあればそれなり(の数字)になっている。ある程度の数字をきちんと確保して目標に向かっているが、その先をどうするかが大事。

GTA担当者:大会中にピークを持っていくために、公式動画を積極的にアップしている。2021年までは大会後に10本強だったが、今は25本。タイムリーに配信されているということで、YouTubeのユーザーからも好評です。ライブはJ-SPORTSで見てもらい、それを補完するものとしてライブが終わった後にサマリーやインタビューを上げていて、前半戦は非常に好評です。

 具体的な数字としては、累計で475万6000と計画の約2倍の視聴者数になっている。動画1本当たりの平均視聴数も3万2000ということで、これも計画の2倍。YouTubeのチャンネル登録者数は7月末時点で23万人で、年初から3万6000人増えている。これも当初計画より大幅アップとなっています。

 GTA制作の動画を公開しているが、エントラントやメーカーも多くの動画を上げているので、それらを「SUPER GT Video Online」側にもより多く取り込むことが必要、というのが課題です。サイトのトラフィックも増やし、さらにファンを広げるため、まだ接触できていないクルマ好きにも見てもらえるようにアプローチもしていきたいです。

──先日、岸田首相が入国時の72時間以内のPCR検査を9月7日より撤廃すると表明したが、SUPER GTにはどのような影響がありそうか。

板東代表:報道でWECやF1における対応が変わってきているというのは目にしている。われわれの方ではこれまでPCR検査、ワクチンの接種証明書、陰性証明書の提示などを求めてきたが、警備員体制のところで、入っていいエリア、いけないエリアの線引き、入るときはチェックする、というような部分は緩和されてきている。

 (ステージイベントなどにおける)演者との線引きは確実にしなければいけないので、今後の導線の引き方は考えなければならないが、われわれが管理する部分として問診票を使った確認などは引き続きやっていこうと思っている。

 ドライバーと監督とレースクイーンのように外に出る人には抗原検査が必要だが、チームとしては実施不要にしたり、チーム管理下の場所ではマスクしなくてもいい、という形など、自分たちを守るために自主的に管理体制をチームで作ってほしい、というところまでの指示にしようと考えている。