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Qualcomm、アーモンCEOが自動車向け製品ロードマップのアップデートを予告
2022年9月5日 13:22
- 2022年9月2日(現地時間) 発表
半導体メーカーのQualcomm(クアルコム)は、9月2日(現地時間)から展示会が始まったIFA 2022に出展し、9月2日に行なわれた開幕基調講演にQualcomm CEO クリスチアーノ・アーモン氏が登壇した。また、開幕前日の9月1日にはQualcomm 上席副社長 兼 オートモーティブビジネス事業本部 事業本部長 ナクール・ドゥガル氏がIFAでの自動車関連イベント「Shift Mobility」のステージに登壇し、ネット常時接続が実現された自動車の未来などに関して議論した。
9月22日にニューヨークで開催される投資家向けイベントでデジタルシャシー戦略をアップデート
ドイツ共和国ベルリン市のベルリン・メッセにおいて9月2日~9月6日の5日間に渡って開催されているIFA 2022は、デジタル家電と家電向けの展示会になっており、依然としてCOVID-19によるコロナ禍にある中では、今年開催された展示会としては、床面積で世界最大規模として開催された展示会になった。特に欧米は、コロナ禍の中にあっても経済復興を目指す方向で動いており、今回のIFAにおいて、参加者はワクチン証明書の提出は求められず、マスクも強制されないという中での開催となった。
そうしたIFA 2022には、サムスン電子やLG電子といった韓国勢や、パナソニックなどの日本メーカーなどを中心に多くのメーカーがブースを構えており、年末商戦に向けて新製品などを発表して注目を集めるイベントとなっている。
このIFA 2022の開幕基調講演に登壇したのが、米国の半導体メーカーQualcommだ。初日の午前中に行なわれる開幕基調講演は、IFAの基調講演の中でももっとも格式が高く、かつ注目度の高い講演。Qualcommはコロナ前の2019年にも、そしてコロナ禍の中でデジタル参加となった2020年にも開幕基調講演の枠にアーモン氏が登壇している。
IFA 2022の基調講演の中で、アーモン氏は、同社が推進するSnapdragon Digital Chassisに関しての説明を行なった。Qualcommはもともと、携帯電話やスマートフォン向けのモデム(通信を行なう半導体のこと)やSoC(System on a Chip、1チップでコンピューター機能を実現する半導体のこと)で高いシェアを持っており、現在でもスマホ向けのSoCでは市場シェア1位となっている。
Qualcommではそうした強みがあるスマホ向けに開発した技術を、PC、自動車、VRなどに横展開していく戦略をとっており、例えば自動車向けではスマホ向けのSoC(Snapdragonというブランドで販売されている)を自動車グレードにした自動車向けの製品で、デジタルメーター向けなどで高いシェアを誇っており、自動車産業に確実に食い込んでいる。そうしたデジタルメーターの強みを、今後はADASや自動運転などに展開するというソリューションがSnapdragon Digital Chassisで、現在自動車産業に売り込みを図っている。
アーモン氏は「われわれは9月22日にニューヨークでQualcomm Automotive Investor Dayという投資家向けのイベントを開催する。その中で自動車向けソリューションのアップデートを行なう予定だ」と述べ、9月22日(米国時間)に行なわれるQualcomm Automotive Investor Dayの中で、自動車向け製品ロードマップのアップデートを行なうと説明した。
Qualcomm Automotive Investor Day
https://www.qualcomm.com/company/events/automotive-investor-daySDVの実現には中古車になったときにどうするかなど解決すべき複数の課題がある
Qualcomm 上席副社長 兼 オートモーティブビジネス事業本部 事業本部長 ナクール・ドゥガル氏は、IFA 2022の会期前日にあたる9月1日に行なわれたIFAのモビリティ向けイベント「Shift Mobility」において、自動車産業におけるITの有用性などに関して説明を行なった。
司会の女性と対談形式で話を行なったドゥガル氏は「これからの自動車産業は、センサーの性能があがり、ソフトウエアの複雑性が増していく。その中で将来ドライバーレスの自動運転を実現するに当たって、機能安全の実現やリスクを減らしていくことが重要になる。OEMメーカー(自動車メーカー)にとって、デジタルコックピットは差別化のポイントになっており、自動車メーカーに対してわれわれはスマホで培った技術を提供できる」と述べ、自動車がネット常時接続(英語ではConnected)になっていく中で、スマートフォン事業での強みを自動車にも提供することができると強調した。
実際、Qualcommはデジタルコックピット向けの市場で多くのデザインウイン(顧客の製品に採用されること)を獲得しており、今後はそれを生かして、ADASや自動運転といった次のステップへと進もうとしている。ドゥガル氏は「ソフトウエアにより定義された自動車(SDV、Software Defined Vehicle)はパワフルで柔軟性が高い。しかし、それによりソフトウエアは複雑になり、それが自動車メーカーには課題の1つになっている。また、グローバルに自動車を販売するにあたり、ローカルにはそれぞれに複雑な事情がある。例えばEVの充電器1つとっても中国や欧米では異なっている。そうしたSDVを実現するにはメカとソフトウエアの融合、ユーザーインターフェースなど一般消費者との新しい関係への対応、また自動車が中古になったときにどうするのかの対応などの課題があると考えている」と述べ、現在多くの自動車メーカーが取り組もうとしているSDVの実現にはいくつかの課題があり、それを解決していくことが重要だと訴えた。
また、自動運転の実現に向けては「自動運転の技術そのものはすでにある。しかし、自動運転を実現していくインフラをどのように具現化していくのか、法整備などそうしたところにまだまだ課題がある」と述べ、自動運転に関しては技術を進化させていくことも大事だが、社会受容性の拡大といった社会的な準備も重要だと指摘した。