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ルーキーレーシング 豊田章男オーナーが、2023年のS耐参戦にメルセデスAMG GT3を加えた理由を語る 「もう一つの景色を見てみたい」

スーパー耐久最終戦鈴鹿に挑むモリゾウ選手こと豊田章男ルーキーレーシングオーナー。2023年のS耐参戦についてうかがった。黄色いつるのアイウェア着用

2023年は3台体制でスーパー耐久を戦うルーキーレーシング

 11月26日、スーパー耐久最終戦鈴鹿を開催中のタイミングに合わせて、ルーキーレーシングから2023年のスーパー耐久シリーズ参戦体制が発表された。ルーキーレーシングはトヨタ自動車 代表取締役社長 豊田章男氏がオーナーを務めるチームで、2022年のスーパー耐久においては、カーボンニュートラルである水素を燃やして走る32号車 ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept(水素カローラ)と28号車 ORC ROOKIE GR86 CNF concept(GR86 CNF)の2台体制で参戦。内燃機関も共存するカーボンニュートラル社会の多様性を実証するため、ST-Qクラスで戦っている。

 2021年5月21日~23日に行なわれた富士24時間レースにデビューした水素カローラから始まったこの試みは、2シーズンの活動で日本の社会に大きなインパクトを与え、スバルやマツダのカーボンニュートラル燃料による参戦、カワサキなど水素の仲間の拡大を生み出した。

スーパー耐久最終戦鈴鹿における記念写真

 そのルーキーレーシングが2023年シーズンのスーパー耐久に向けての体制として選んだのが、3台目となるメルセデスAMG GT3を追加し、ST-Xクラスというスーパー耐久最高峰のクラスに挑戦することだ。この決断の背景について、スーパー耐久最終戦鈴鹿の練習走行を終えたモリゾウ選手こと豊田章男オーナーに聞いてみた。

ST-Qクラス:32号車 ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept

監督:石浦宏明
ドライバー:佐々木雅弘、TBN、石浦宏明、小倉康宏

32号車 ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept

ST-Qクラス:28号車 ORC ROOKIE GR86 CNF concept

監督:大嶋和也
ドライバー:TBN、山下健太、大嶋和也、TBN

28号車 ORC ROOKIE GR86 CNF concept

ST-Xクラス:14号車 中升 ROOKIE AMG GT3

監督:片岡龍也
ドライバー:TBN、蒲生尚弥、平良響、片岡龍也

14号車 中升 ROOKIE AMG GT3

豊田章男オーナーが語る「もう一つの景色」

 まず大前提として、ルーキーレーシングは豊田章男氏がオーナーを務めるレーシングチームであることだ。世界的なレース活動を行なうTOYOTA GAZOO Racingがトヨタ自動車のワークス活動であるのに対して、ルーキーレーシングには豊田章男氏の個人的な思いが強く込められている。その思いとは、自分が子供のころに見たかっこいい大人たちの風景を今の子供たちに見せていきたいというもの。そのために新しいガレージ棟を建設し、作業を見える化し、突出したレーシング活動を行なっている。

 突出したレーシング活動を行なうことで、レーシングチームの次世代の姿を模索しているともいえる。ピカピカのガレージでメカニックが働く姿を見せることで、多くの子供たちにメカニックという職業を理解してもらおうとしている。

 そこにはメカニックもあるのだが、もちろんドライバーも含まれている。

 豊田章男オーナーは、3台目の参戦車としてメルセデスAMG GT3を選んだ理由として、カーボンニュートラルへの挑戦を基本としつつ、チームのドライバーに向けて、そしてチームオーナーとして「もう一つの景色」を挙げる。

「ルーキーレーシングは、自分がオーナーのチームだから、モータースポーツを通じたクルマづくりであるとか、カーボンニュートラル(への挑戦)は必要だと思う。だけれども、トヨタやレクサスを離れてルーキーレーシングとしてもう一つの景色を見てみたい」といい、ルーキーレーシングとしてはインタープロトにおいて別ブランドのクルマを使用した活動実績もあると語る。

 現在、ルーキーレーシングはプロトタイプ車で参加可能なST-Qクラスのみに参戦しており、そこではクラスの中の戦いが成立しているクルマ同士もあるが、自由な規定の無差別クラスとなっているため、なかなか規定の中での戦いとはなっていない。とくに32号車 ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは未来へ向けての戦いとなっているため、実質的にライバル不在だ。豊田章男オーナーは、そんなチームに対して通常の規定クラスにおける戦いも用意したいという。

 その回答が、ST-Xクラスに参戦すること。ST-Xクラスに参戦することで、規定クラスの中での戦いを勝ち抜き、ドライバーに表彰台からの風景を見せてあげたい、活動を記録してあげたいという。

 そのためにメルセデスAMG GT3を選んだのだが、この選択の背景にはメインパートナーとなった中升(ゾンセン)集団の存在が大きいとのこと。中升集団は中国などで自動車販売ディーラーを運営しており、メルセデス・ベンツやアウディ、レクサスなどのプレミアムブランドのほか、トヨタディーラーも展開している。

 その縁もあって今回は参戦マシンとしてメルセデスAMG GT3を選択。この選択の背景にSUPER GT300クラスにおいてメルセデスAMG GT3で戦う片岡龍也監督兼選手と蒲生尚弥選手の2人の存在もあったという。戦いのノウハウを持つ2人の力も活かして2023年シーズンに取り組んでいくことになる。

 また、豊田章男オーナーはチーム構成として育成も大きなポイントとして挙げる。平良響選手という次世代のドライバーをベテランの中で育成することで、新たなレーシングドライバーのスターを生み出そうとしている。

 ただ、この2023年の体制を見て「あれ?」と思うのは、どのクルマにもモリゾウ選手の名前が見えないこと。それぞれのクルマにTBNというドライバー未定の部分があり、どのようなドライバーが参戦するのかは不明だ。どこかにモリゾウ選手の名前は入るのだろうが、それについては語らないということになった。新マシンのお披露目は、2月23日に富士スピードウェイで行なわれる公式テストの辺りを予定しているとのことだ。

おまけ、モリゾウ選手豆知識

ラリーチャレンジ豊田でのデモラン後。つるの赤いアイウェアを着用している

 今回、ルーキーレーシングのモリゾウ選手としてスーパー耐久最終戦に参戦中の豊田章男オーナーに話をうかがったが、話を聞いている最中に自分の中に違和感があった。何が違和感なのかと自問自答している中で一つ気がついたので、豊田章男オーナーというよりモリゾウ選手に直接聞いてみた。

「モリゾウさんのめがね(アイウェア)ですが、つるの部分が黄色になっていますが、先週は赤色だったような気がするのですが?」

「細かいところ聞くねぇ。実はルーキーレーシングで参戦しているときは黄色のアイウェアで戦っている。先週(ラリーチャレンジのデモラン)は赤ね」

 とのことで、参戦チームに合わせてモリゾウ選手はアイウェアのカラーを変更しているとのこと。ルーキーレーシングは黄色で、GAZOO Racingとしては赤。また、ラリーヘルメットの場合はそのままのアイウェアを用いているが、レーシングヘルメットの場合はつるが入りにくいため、レーシングヘルメット専用のものを使っているとのこと。さらに追加情報としては、豊田章男氏は小顔のため子供用のスポーツアイウェアを用いているという。

レーシングヘルメット装着時のアイウェア。ヘルメット着用に便利なものになっているとのこと

 記者はレーシングスーツでルーキーのモリゾウ選手かGAZOOのモリゾウ選手か判断してきたが、アイウェアのつるの色という見分け方法があることを理解した。

 ちなみに、第2期自工会会長や近年のトヨタ社長としての会見は黒縁めがねであることが多く、第1期自工会会長時代は縁なしめがねであることが多かった。さらにクルマ好きのおじさんとして登場するときはべっ甲めがねであるなど、おそらく相当多くのめがねを使い分けているモリゾウ選手であり豊田章男社長であった。