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トヨタ 佐藤恒治プレジデント、タイ25時間耐久レースの挑戦では「タイの人の共感に基づく、タイの企業の協力が得られた」

タイ25時間耐久レースのスタート時にチームと会話するトヨタ自動車株式会社 GAZOO Racing Company President 佐藤恒治氏(中央)

 トヨタ自動車とルーキーレーシングは、12月17日~18日の2日間にわたって「IDEMITSU 1500 SUPER ENDURANCE 2022」(タイ25時間耐久レース)に、水素GRカローラとカーボンニュートラル燃料を用いるGR86でチャレンジしている。

 燃料などの問題で、スタート後の4時間、ゴール前の4時間を走る形になるが、ASEAN(東南アジア諸国連合)の主要国であるタイにおいて、カーボンニュートラルレースの大規模なデモンストレーションを行なっている。

 このきっかけとなったのはトヨタが2021年4月23日に発表した水素エンジン搭載車での24時間レースへのチャレンジにある。当時も今も自工会(日本自動車工業会)会長である豊田章男氏が発している脱炭素へのメッセージ「私たちのゴールはカーボンニュートラルであり、その道は1つではない」を実証しようとするべく、水素を燃料として内燃機関で燃やすエンジン車でのレース挑戦が始まった。

 当時、水素エンジン車による挑戦としての記事は書いたものの、正直自分としては多くの自動車メーカーが試作を行ないながら諦めたように見える水素エンジンへの挑戦はいかにトヨタといえども分が悪いように見えた。しかしながら、その後の結果はご存じのとおりで、異常燃焼に苦しみつつそのコントロール技術を磨き、2年目の挑戦となった2022年は安定した戦いぶり。今シーズン最終戦鈴鹿では次のステップである液化水素への挑戦へと踏み出すほどの進化をした。

 日本での水素燃焼エンジンに対する見方は大きく変わり、WRC(世界ラリー選手権)ラリー・ベルギーでの水素GRヤリスによるデモランで欧州にも大きなインパクトを与えた。

 水素GRカローラと、カーボンニュートラル燃料を用いるGR86をタイ25時間耐久レースで走らせることについて佐藤恒治GAZOO Racing Company Presidentは、「本当にやりながら考えて動いていく2年間でした。2年前はタイでそもそもレースをするということは想像して想像もしていなかったわけです。ただ、これが現実にできるようになりました」「やりながら考えていくしかないのですけど、認知がまったくないところに認知が生まれ変わっていくのは、ものすごく大きな変化だと思います。まずは知っていただくこと、モリゾウ社長も多分そういうところもあって(レースに)出ていると思うのです」という。

 佐藤プレジデントは、タイに来てから地元メディア対応や政府関係者とのカーボンニュートラルに関するミーティングを精力的にこなしている。タイではBEV(バッテリ電気自動車)の振興政策が採られているが、トヨタが今回レースに持ち込んだのは、新たな選択肢となる水素やカーボンニュートラル燃料になる。

タイとのコミュニケーションについては、「60周年の記念式典もご紹介したように、タイでもバッテリEVを重視しているのはちゃんとお伝えしている。私のコミュニケーションの中でもそういう話をしている。あくまでもその選択肢、新たな選択肢として水素にはこんな可能性がありますよということをお伝えしていて、その理解が深まったという感触を受け止めていただいている。あくまで我々がお伝えしたいのはマルチパスウェイということなので」「やはりカーボンニュートラルは共感で動くということだと思いますので、今回も水素に取り組んでおられる企業もあって、その協力をいただいて走っている。日本から水素を持ってきて、タイでレースをやって帰るのではなく、タイの水素をタイの企業から提供していただいて、この取り組みに共感をいただいて、この場がある。そのゼロかイチかということはすごく大きいと思うのです」「2年前に日本でS耐を始めたときも、最初は8社いらっしゃって、その後協力してくださいと歩いたわけではなく、『こんなのがありますよ』と連絡をいただけた。『えっ、そうなんですか』とお会いして、『じゃあ、次のS耐でこういうのをやりましょう』となって、最後に28社までになっていんです。そういうことの第1歩をタイでできたすごく我々にとってもうれいしことで、日本から持ってきた水素ではなく、タイの人による共感に基づく、タイの企業の協力が得られたのは僕たちの中ですごく大きい」(佐藤プレジデント)という。

 佐藤プレジデントは、タイ25時間耐久レースのスターティンググリッドで会った際にも「モリゾウさんがいつも言っている、『カーボンニュートラルは共感で動く』というのが大事だと思っています。本当に多くの人に共感していただけるよう汗をかきたい」と語っており、タイにおける最初の挑戦で共感に基づく仲間が増えたことに手応えを感じていた。