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ミシュランと群馬積層造形プラットフォーム、仏Cetimとの共同開発プロジェクトとトレーニングを始動

2023年1月27日 発表

デモパーツ製造エリア(ミシュランAMアトリエ内)イメージ

 日本ミシュランタイヤとGAM(群馬積層造形プラットフォーム)は1月27日、フランスの国立産業技術センターであるCetim(Technical Centre for Mechanical Industries)との共同開発プロジェクトや「金属積層造形トレーニングプログラム」が開始されたと発表した。

 Cetimは2022年6月1日、日本市場でトレーニングやサービスを展開することを目的として、GAMに正式加入。GAMは金属積層造形技術を軸としたオープンイノベーション型プラットフォームで、Cetimの参加によって金属積層造形の高い技術力とノウハウの共有を受けることが可能になるとしている。

 Cetimとの共同開発プロジェクトでは、GAMのメンバー企業がパーツを設計し、それを金属3Dプリンターで製造して性能、品質、価値を検証。金属積層造形トレーニングでは「ミシュラン AMアトリエ」(日本ミシュランタイヤ太田サイト設置)を利用し、金属積層造形技術を適用するために必要な設計、ソフトウェア、材料、設備を学ぶ。積層造形の知見を持たない企業が、トレーニングを経て共同開発プロジェクトに参画できるレベルまで成長させるという。

 2022年11月に始動した共同開発プロジェクトでは、現在3件のプロジェクトが並行して進行しており、うち2件は群馬県太田市にあるミシュラン AMアトリエの金属3Dプリンターを使用。もう1件はCetimが参画し、自動車部品製造に使用する金型に金属積層造形技術を適用するもので、Cetimが3Dプリンターを用いたパーツ製造を行ない、GAMと共同でAM(Additive Manufacturing)による造形の優位性の評価・検証を行ない、これらのプロジェクトは今春に完了し、結果を公表する予定としている。

 GAMでの共同開発プロジェクトへの参画について、Cetim AM Technical Project Manager(AM技術プロジェクトマネージャー)のGuillaume Mohara(ギヨーム・モハラ)氏は「Cetimは、3DプリンタをはじめとするAM関連機器に加え、AMに関する多くの経験やノウハウを有しています。GAMのプロジェクトを通じて、私たちが日本のAM産業の発展に貢献できることを大変嬉しく思います。GAMの参加企業の皆さんが金属積層造形技術を蓄積するために、今後も信頼できるパートナーとして尽力してまいります」とコメントしている。

AM技術プロジェクトマネージャー ギヨーム・モハラ氏

 AM(Additive Manufacturing)とは、立体物を輪切りにした断面データをもとに、樹脂・粉体などの薄い層を積み重ねて立体物を製作する技術のこと。積層造形、付加製造とも呼ばれ、複雑な形状が自由に成形可能となることから、航空宇宙産業・自動車・医療分野などに幅広く適用される。近年、国内外で3Dプリンター技術を用いた、航空部品、自動車部品、金型、医療機器などの製造事例が広がっていて、GAMでは製品開発・製造に欠かせないデジタルモノづくり人材を育てるため、技術者のリスキリングを積極的に行なっている。

 GAMの金属積層造形トレーニングプログラムは、3Dプリンターによる付加価値の高い製品製造を担える人材を育てるトレーニングプログラムとなり、初級・中級・上級の3段階で構成されており、そのうち中級のポストプロセスに関するトレーニングにCetimのノウハウと教材が提供され、プログラムの充実に大きく貢献するとしている。

 中級トレーニングを受講した、共和産業 海外工場準備室室長 大野匡史氏は「中級トレーニングでは積層造形の設計手法(DfAM)、造形準備アプリケーション、金属材料に関する知識や、造形後の粉末除去・洗浄工程について学びました。これらは、金属AMを適用していく上で必須であり、とても具体的で実践的なプログラムと感じました。DfAMではトポロジーを最適化する専用ソフトウェアを使って、3Dモデルから実際に造形設計を行ない、AMの特徴を最大限に生かすべく、軽量化、製造コスト削減、製造時間短縮のための最適化を学ぶことができました。受講に際し、必要機材一式はGAMで用意されるため、大変受講しやすいプログラムでした」とコメントしている。

 群馬県は、ミシュランが1991年からR&D拠点を置くゆかりの地でもあり、ミシュランとGAMは金属積層造形によるデジタルモノづくりを目指す国内企業の参加を歓迎、群馬からさらなる革新的なビジネス創出を加速していくとしている。

人工衛星のソーラーパネル展開用ヒンジ(一体成型により軽量化と耐久性を向上)イメージ
座学教育プログラム用スペース(ミシュランAMアトリエ内)イメージ