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デンソー、電気で水素を作る「SOEC」や水素で電気を作る「SOFC」の開発など水素への取り組みを説明するオンラインセミナー開催

2023年2月20日 開催

オンラインセミナー「DENSO Tech Links #17」

 デンソーは自社の取り組みを説明するオンラインセミナー「DENSO Tech Links #17」を開催。2月20日に行なったセミナーのテーマは「水素」で、デンソーが水素社会実現に向けた取り組みや技術を紹介した。

 今回の登壇者は3名。いずれも環境ニュートラルシステム開発部からとなり、システム開発室の中島敦士氏、将来電池開発室の林真大氏、NEGP開発室の大杉乙允氏。中島氏がデンソーの水素社会実現への取り組みを語り、林氏がクリーンな水素を安価に発生させる装置である「SOEC(Solid Oxide Electrolyzer Cell)」、大杉氏は水素などの燃料と酸素の化学反応による発電機である「SOFC(Solid Oxide Fuel Cell)」について説明した。

カーボンニュートラルでないと競争力がなく、国内で生産できなくなる

 中島氏は、まずデンソーが環境安心分野で究極のゼロを目指している目標を紹介した。これは、ものづくりのCO2排出と製品からのCO2排出ゼロ、交通事故と死亡者のゼロ。これを2035年に達成するように努力をしているとし、特にものづくりのところでは、地球保護の観点から再生エネルギー中心の循環型社会を求める声が今後も強まっていくとした。

環境ニュートラルシステム開発部 システム開発室 中島敦士氏

 デンソーのカーボンニュートラル基本戦略として、2025年に省エネと再エネの導入や再エネ電力の調達などで電力のカーボンニュートラル、都市ガスについてはクレジットによるオフセットを検討中。2035年にはその都市ガスの部分をカーボンニュートラルのガスへ代替を進めていくが、まだ実用化された技術がなく自社開発のほかに仲間づくりを通じて実現していく。

 さらに、再生可能エネルギーを電気のまま最大限使うことを中心とするが、変動や余剰を電池、水素、カーボンニュートラル燃料にいったん蓄えるシステムも必要になる。デンソーではこの実現に必要な技術の開発に努めていく。

 中島氏は、これらの目標が当時の菅首相がカーボンニュートラル宣言をした時期に掲げたこともあり、「流行にのった、非常にチャレンジングな目標を設定したととらえられがちだが、実はわれわれとして、もう少し深刻にこの事態を見ている」と述べた。

 その理由として「化石燃料を使って作られる製品や、それによって動く工場といったものが、社会的に容認されなくなっていく」「作った製品が世の中の皆さまに購入していただけなくなる、競争力を喪失する危機感がある」と指摘した。

 さらに中島氏は水素の必要性について「社会全体をカーボンニュートラルにしていくために、発電所だけではなくて、化石燃料の電化や、水素化といったところが必要になってくる」とし、一方で、現在、水素を作る原料が化石燃料であることも指摘し「水素を再生可能エネルギー由来のクリーンな水素に置き換えることによって、大きく脱炭素化することが可能になる」とした。

 最後に、水素社会実現についてはさまざまな技術課題があり「1つの課題解決をしても全体の課題解決には繋がらないところが水素社会の障壁」とし「まずは自分たちができるところを公表して持ち寄るといったことが大事」として、技術や製品の提案をしてもらうことなど、現在のデンソー社内だけではない協力体制の重要性を訴えた。

デンソーの目標達成へのアプローチ
カーボンニュートラル基本戦略
デンソーの目標設定
水素の必要性
水素社会実現への課題
デンソーにできること

ランニングコストにメリットのある水素発生装置「SOEC」

 続いて、林氏が開発中の水素発生装置「SOEC」について説明を行なった。水素発生装置はさまざまな方式があるなかで、SOECは運転温度が高いなどの特徴がある。メリットとしては効率がよくランニングコストが安いことだという。

環境ニュートラルシステム開発部 将来電池開発室 林真大氏

 デンソーでの開発分野は3つあり、システム開発、ホットモジュール開発、セルスタック開発で、必要な水素量や使い方という顧客の要望に応じて、発電モジュールのコンテナを並べる数や、水素の貯蔵などモジュールを統合制御するのがシステム開発。そして、セルスタックを700℃に保持するところを少ないエネルギーで700℃を担保するところがホットモジュール開発になる。

 最後のセルスタック開発は、より少ない電気エネルギーで水を分解することが求められる。薄いセラミックセルを積み重ねたセルスタックがあり、効率的なセルスタックが求めるため、新規材料の開発や薄膜製造プロセスを開発する。

 林氏は、セルスタックの仕組みを説明し、それを実現するためには、さまざまな学問分野を横断する必要があるとし、現在は各分野のエキスパートが結集して開発しているという。

 水素が生成されるプロセスは目で見えず、先端評価技術を使って定量化しようとしている。林氏は「こういった現象を見える化するところは、本当に非常に最先端なところになるので、大学や研究機関と組んでやっている」としたほか、量産化についても、自動車分野で磨いてきたセラミックプロセス技術を使っているとした。

SOECとは
デンソーのSOECシステム
デンソーの目指すSOECシステム
SOEC用セルスタックの開発
セルスタック開発の取り組み
セルスタック開発の取り組み

水素だけでなく多様な燃料が使える発電機「SOFC」

 大杉氏は水素などの燃料と酸素の化学反応による発電機である「SOFC」について説明した。SOFCはセラミックを電解質として600℃~800℃で作動する、ちょうど前述のSOECの逆反応となる。燃料は水素だけでなく都市ガスやプロパンガスなど多様な燃料が使える燃料電池であるとした。車載もできるほかの燃料電池と異なり、定置型という特徴もある。

環境ニュートラルシステム開発部 NEGP開発室 大杉乙允氏

 そこで、なぜSOFCが必要かというと、水素が普及するまで多種多様なカーボンニュートラルな燃料が混在することから「燃料多様性を持つSOFCは、現在から水素社会にかけて、シームレスに対応できるCO2削減の救世主と考えている」と説明した。

 デンソーのSOFCの技術としては効率や耐久性で、セルスタック出口燃料の再利用や、最大効率が出る温度へ温調することが自動車分野で培った技術とし、自動車分野の技術をほかの製品に応用していく取り組みは全社を通じて行なわれていると説明した。

 そして、デンソーでは発電効率の高い製品にすることを目指し、現在は社内の工場などに設置して実証評価をしている段階とした。

 大杉氏はSOFCで「カーボンニュートラルの燃料がすぐに普及してくるという段階ではないので、まずは高効率なSOFCで始めて、カーボンニュートラルの燃料が普及し始めたと同時に、脱炭素に向けて貢献していく」としたほか、「分散型電源の特徴を活かして、エネルギーセキュリティの面でも貢献していきたい」と語った。

SOFCとは
なぜSOFCが必要なのか
なぜ多様な燃料が使えるのか
デンソーのSOFCの技術とは
デンソーの目指すものとは

SOECは2025~2030年の市場投入を目指して開発。SOFCは2024年度中の量産を目指す

 続いてディスカッションパートでは、水素社会実現に取り組む意義や、水素との関わり、課題などについて、話し合いが行なわれた。

 大杉氏は水素社会について「全ての燃料が水素になるという意味ではなく、水素が身近にある状態を水素社会と呼び、カーボンニュートラルのいち手段であることは今後も変わらない」と述べた。

パネルディスカッション 水素社会実現に取り組む意義
パネルディスカッション 水素社会実現の課題

 中島氏は「自分たちができることをみんなに知ってもらって、アイデアを組み合わせることで相乗効果が生み出せるような議論をしていくことが大事」と協力を呼びかけた。

 林氏は「クリーンな水素だから買いたい人もいるが、だからといってコストが高いのは許容されないと思っている。そうなると全部デンソーでやれるわけではないので、いろいろな企業と一緒につくりあげていく必要がある」と具体的な協力体制について語った。

 そして、開発の先にある販売はいつになるかという質問には、林氏はSOECについて「2025年~2030年には市場投入していきたいというつもりで開発を進めている」とし、SOFCについては大杉氏が「2024年度中の量産を目指して開発を進め、4.5kW機の開発をしているが、大型化も見据えたい」と少し具体的に語った。