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デンソー、2023年3月期第3四半期累計決算は増収増益 取引先との価格問題の対応として調達グループ長に副社長を任命

2023年2月3日 実施

デンソーが2023年3月期第3四半期決算説明を行なった

 デンソーは2月3日、2023年3月期 第3四半期決算説明会をオンラインで実施。登壇したのは、CFO 取締役 経営役員の松井靖氏と、経理部 経営戦略部担当 執行幹部の篠田吉正氏の2名。

 決算発表によると、2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日) 第3四半期累計の売上収益は4兆6357億円(前期比15.6%増)、営業利益は2679億円(同4.6%増)、当期利益は1978億円(同2.3%増)の増収増益。

2023年3月期 第3四半期累計 連結決算

 この結果について松井氏は「売上収益は、中国での新型コロナウイルスの感染症の拡大や半導体不足などの影響があるものの、対前年では車両生産が回復途上であること、また電動化などの注力領域を中心とした拡販の実現および、為替の円安傾向もあり前年比で増収。過去最高の売上収益となりました」と報告。続けて「営業利益は電子部品を中心とした部材費、物流費の高騰など外部環境の影響があるものの、車両生産の回復や拡販効果、為替の差益、合理化、変動対応力の強化などによって、前年比で増益となりました」と増収増益であったことをアピール。

 また年間の業績予測については、為替前提の変更と足下の車両減産リスクを反映して、売上収益を6兆2000億円、営業利益を4200億円に修正。それでも年間予想の売上収益、営業利益ともに過去最高になると告げた。

営業利益増減要因(前年比)

 営業利益の増減要因について松井氏は、「成長領域の意志を持った投入や構造改革費用などに加えて、素材エネルギー費、部材物流費の高騰もあるものの、合理化、変動対応力強化の効果や操業度益、為替差益により前年比で増益となった」と解説。

 所在地別セグメント情報では、売上収益は車両生産の回復や拡販の実現によって全地域で前年比で増収。営業利益は外部環境の悪化などがあるものの、グローバルで採算改善努力を実現。松井氏は「物流費や部材費などの高騰影響が特に大きい北米、中国での新型コロナウイルス感染症の拡大影響や、構造改革費用などがあるアジアを除いて各地域で前年比増益となった」と説明した。

所在地別セグメント情報(前年比)

 設備投資の当期実績となる2548億円については、「電動化安全先進安全の注力分野への必要な投入を加速させつつも、足下の不透明な事業環境も踏まえた投資精査を行ないながら規律を持った運営を推進していく」と語ったほか、「電動化進展に貢献するためにパワー半導体の競争力強化に加えて、日本と北米に引き続き中国や欧州によるグローバルでの生産体制強化を着実に推進する」と述べた。

設備投資・償却費・研究開発費の推移

 さらに年間予想は足下の車両減産リスクを踏まえて、より一層の規律を持って案件精査を行ない、償却費の範囲内の投入という規律を持つこととして、前回公表3650億円に対してマイナス100億円の3550億円に修正、研究開発費についても同様に、前回公表に対した5500億円に対してマイナス100億円の5400億円に修正すると発表。

 通期の見通しについても、為替前提の変更と足下の車両減産リスクを反映して、売上収益は前回予想の6兆3100億円に対してマイナス1100億円の6兆2000億円に。営業利益は前回予想の4800億円からマイナス600億円の4200億円に修正すると説明した。

2023年3月 通期予想

 最後に、電子部品を中心とした部材費や物流費、エネルギー費などの高騰影響への対応については、市況などの客観的な指標のモニタリングに加えて、サプライヤーの声に真摯に耳を傾けて対話を重ね、高騰影響の適正な価格反映を進めていると報告。

 具体的には、総調達額の10%弱に相当する1500億円の価格反映を実施して、サプライチェーン全体での競争力向上、経済循環に貢献を目指すほか、サプライチェーン内の取引適正化や法令遵守、人権尊重など、高まる社会要請により積極的スピーディに対応すべく、新たに副社長を調達グループ長に任命したことを明かした。さらに、調達サステナビリティ推進室の新設も実施したといい、今後もサプライヤーとのより一層の緊密なコミュニケーションと協議を継続するとした。

部材費・物流費・エネルギー費などの高騰影響への対応

 なお、これらの対応について松井氏は「買う方も売る方もちゃんとやらないと業界として正の循環が回らない。お客さまへの説明は9割ほどカバーできていると思っているが、第4Qで残りも説明してきっちり完了させる。これらの取り組みは元々社内で始めていたが、公取(公正取引委員会)の指摘があったので、当初よりもオープンな状態にしている。隅々まで行き届いていない面があったと思うので、調達グループ長に副社長が担当することで、業界を変えていけば、業界全体の経営環境もよくなると思う」と説明。

 また、通期業績の下振れについて松井氏は「車両生産による下振れは年初から中間まで減産が続いていたため、期初は12%ぐらい下振れすると思っていたが、現状では14%くらいになりそうとみている。中国や日本といった収益力の高い地域が下振れするので、影響が大きく結果600億円減とみている」と補足した。

得意先別売上収益
製品別売上収益