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フォルクスワーゲングループ、2023年年次会見をドイツ ベルリンで開催 オリバー・ブルーメCEO「半導体不足は2023年のうちに改善、納車台数950万台を目指す」

2023年3月14日(現地時間)開催

ドイツ ベルリンで2023年の年次記者会見を開催

 フォルクスワーゲンAGは3月14日(現地時間)、ドイツ ベルリンにおいて2023年の年次記者会見を開催し、フォルクスワーゲングループの最高経営責任者(CEO)であるオリバー・ブルーメ氏、最高財務責任者(CFO)兼COOのアルノ・アントリッツ氏が2022年の振り返りを行なうとともに、今後の戦略などについて語った。

 オリバー・ブルーメ氏は、2022年9月にフォルクスワーゲングループ CEOに就任(ポルシェAGのCEOは続投)したばかりということでこの半年を振り返り、「本当に光栄に思っています。フォルクスワーゲングループには30年働いておりましたが、チームが温かく迎えてくれたことを非常に嬉しく思います。その中で明確な戦略的ロードマップが必要でした。過去数か月の間に多くの非常に重要な意思決定を行ない、その中で実際にわれわれが予定したよりも非常に多くのステップを踏み出せました。より長い時間がかかるはずのものを数か月でということで、非常に圧縮した時間の中で行なうことができました」とコメント。

 そして2022年についてはグループをプロフェッショナルな形で管理し、ポルシェとフォルクスワーゲングループのトップという2足のわらじでありながら、両者を率いるメリットにより成果を上げていることができたと述べるとともに、「9月に私たちは75の行動分野を定義し、それをフォルクスワーゲングループのトップ10というプログラムにまとめました。そのモットーは分析し、優先順位をつけ、決定し、実行すること。その上で、私たちは強固な財務体質を持つ健全な企業となりました」と報告。

 また、「われわれは今、しっかりとした財務状況がある強固で健全なグループなのです。欧州や中国で頑丈なポジションを維持しながら、米国で野心的な成長計画を進めることによって、グローバルでのポジションをさらに強いものにしていきます。CARIADによる活動を新たに整理したことによって、デジタル面でのポジションも強化していきます。また、バッテリやローマテリアルの供給を継続的に確保するなどの新たなビジネス分野を定着させていきながら、グループの耐久性を高めていきます。そしてより持続的になっていきます。e-モビリティや再生可能なエネルギーにより、排出を大幅にしかも継続的に下げていきます」と今後の方向性を示すとともに、一番感銘を受けたのが66万人の従業員がこれら全ての項目に意欲的に取り組んでいることであり、「誇りに思っている」と述べた。

フォルクスワーゲングループ 最高経営責任者(CEO)のオリバー・ブルーメ氏

 一方、ロシアのウルクライナへの侵攻によりエネルギー価格が高騰したことについては全ての自動車産業が影響を受けているとし、プランニング ラウンド(フォルクスワーゲンの5か年計画)、プロダクト、中国、北米、CARIAD、プラットフォーム&テクノロジ、バッテリ、モビリティソリューション、サステナビリティ、キャピタルマーケットという「10項目の課題を引き続き推進することがより一層重要」とした。

 また、2022年の業績については「2022年は非常に堅実な業績を達成しました。営業利益は225億ユーロとなりました。売上高においては前年比11.6%増の2792億ユーロ。これは、やはりより良いプロダクトミックス、それからコストカットの成果と申し上げることができます」と振り返っている。

2022年の営業利益は225億ユーロ
売上高は2792億ユーロ

フォルクスワーゲングループは厳しい環境の中で堅実な業績を達成

フォルクスワーゲングループ 最高財務責任者(CFO)兼COOのアルノ・アントリッツ氏

 より細かい年次バランスシートについてはアルノ・アントリッツ氏が解説するとともに、各ブランドの振り返りを行なった。

 主要ブランドのトピックとしては、フォルクスワーゲンでは新型BEV「ID.Buzz」について触れ、「自分でも運転しましたが、伝統と最先端技術の組み合わせというのがお客さまにも非常に好評であることを喜びをもって申し上げたいと思います」と報告。

 また、アウディではBEVの販売が好調であり、前年比44%増の納車を行なった。ベントレーでは「2022年は1年間で1万5000台以上の納車を行ない、素晴らしい記録を達成いたしました。過去最高益です。また、営業利益も素晴らしく、7億800万ユーロ。純利益は20.9%となり、新記録を達成しています」と報告し、ランボルギーニも目覚ましい成長を遂げ、全世界で9000台以上の車両を納入。2021年に達成した販売記録を10%上まわったという。

 さらにIPO(新規株式公開)を行なったポルシェの売上高は376億ユーロに達し、前年比で13.6%の成長を遂げた。販売台数も30万9884台とし、2021年と比較して2.6%の増加に成功している。

 こうした結果を受け、アントリッツ氏は「フォルクスワーゲングループは厳しい環境の中で堅実な業績を達成いたしました。同時に、私たちの戦略的な主要な分野で重要な進展を遂げ、そして改革を強力に推進しました。これこそ私たちのビジネスモデルの堅弄さ、そしてわれわれの変革への強い意志を物語っております。フォルクスワーゲングループは2022年の営業成績が堅調に推移し、堅固な財務基盤のもとで事業を転換しております。本当に全て従業員に感謝を申し上げたいと思います」とコメントした。

アントリッツ氏のプレゼン資料

 一方、2023年度については各地域の成長や経済指標は依然として厳しい状況であるとしつつ、半導体の供給不足の状況は2023年のうちに改善し、原材料や物流における供給も徐々に安定化することが予想されるとし、「当社は全ての主要セグメントにおいて魅力的な製品を提供するブランドを有し、西ヨーロッパだけで約180万台の受注を有しております。2023年度の納車台数は950万台を、売上高は前年から10~15%上まわることを見込んでいます。また、営業利益率は確実に7.5~8.5%という高い水準を維持することを予想してます。フォルクスワーゲングループとしては、2023年度のネットキャッシュフローを60~80億ユーロと予想しております」と述べた。

2023年度の納車台数は950万台を目指す

 なお、アントリッツ氏は内燃機関についても言及し、「われわれは内燃エンジンというのが市場にある限り、競争力を維持すべきと考えておりますし、維持するつもりです」と述べるとともに、「フォルクスワーゲンは業界の中でも最も魅力的、最も強く、最も価値のあるブランドを束ねて所有しています。そこにおいては、個々の強力なブランドというのが今後も差別化要因であることは疑いの余地がございません。しかし、同時に私たちはテクノロジとモビリティサービスのグループへと変革を遂げなければいけません。つまり、BEVハードウェア、そして統一されたソフトウェアスタックのようなプラットフォーム、またはモビリティサービスや自動運転システムなどに焦点を当てる必要があります。これらの意思決定と資本配分というのも、やはりこのような目標をもって導かれると信じております。私たちは会社を変革するための明確な計画を持っております。そして、私たちはお客さまやステークホルダーの皆さまのために将来的に各ブランドをよりよく位置付け、可能な限りシナジー効果を発揮し、コストと効率の向上に努めてまいります。われわれはBEVプラットフォームのスケールメリットをさらに図り、関連する自動車用のソフトウェアスタックも開発し、将来を見据えたモビリティサービスへの投資を続けてまいります」としてプレゼンテーションを締めくくった。

ID.7、ID.Buzz ロングホイールベースバージョン、ティグアンなど新型車続々

 そしてふたたび登壇したオリバー・ブルーメ氏は、冒頭に触れたトップ10の課題を2023年にどう進めていくか説明。

 プランニング ラウンドについて、フォルクスワーゲンは2021年12月に2022年~2026年の5か年投資計画「プランニング ラウンド70」を発表しており、電動化やデジタル化への投資を拡大していくことを示した。その際は電動化やデジタル化への投資が全体の投資額の56%となっていたが、今回2023年~2027年の5年で総額1800億ユーロのうち68%の投資額になることが明らかにされた。

 ブルーメ氏は「総額1800億ユーロの投資のうち、3分の2以上はデジタル化、そしてe-Mobility化という未来の分野に投入されている予定です。投資実績は2025年にピークを迎え(内燃機関モデルへの投資をまだ積極的に続けながらBEVの分野にも投資しなければならないため、2025年の投資が一番多くなる)、その後は継続的に減少していく予定です。これらの投資により、私たちは将来の競争力を高め、最も魅力的な成長市場での活動を強化し、製品ポートフォリオの全体を強化してまいります」と述べるとともに、「プラットフォーム、ソフトウェア、バッテリ技術、自律走行、そして何よりもエモーショナルな自動車であるというのがわれわれのゴールです。感動をもたらす自動車というグループの将来、技術に投資いたします」と説明した。

 プロダクトについては2023年に新型ID.3(ビッグマイナーチェンジ)、ID.7、ID.Buzzのロングホイールベースバージョン、ティグアン、CUPRA タバスカン、アウディ Q8 e-tronといった新モデルを発表することが予告された。

 また、中国についてブルーメ氏は「国境が開いた後、1週間ほど中国に出張しましたが、やはり技術的に猛烈なスピードで変化をしております。そこでポールポジションを確保するためには正しい戦力と正しいスピードが必須となってまいります。このために、私の同僚であるラルフ・ブランドシュテッター(中国部門の責任者)のリーダーシップのもと、この地域での意思決定と開発、プログラムを大幅に加速させ、ブランド間のシナジー感をさらに引き出すためにブランド間の横断型委員会を導入しました。これはチャイナ2030のビジョンの基礎を決定するものであり、4月に開催される上海モーターショーで示します」と報告。なお、中国におけるID.シリーズの販売は、2022年に前年比で倍増以上の結果を示したという。

 一方、北米ではバリューチェーンをさらに拡大するため、カナダにバッテリセル工場を建設することを発表。また、発表済みであるオフロード車ブランド「スカウト」を電動モデルとして米国に導入することにも触れ、「ピックアップセグメントは米国市場における3分の1以上を占めているので、北米における当社の存在感と収益性を図るための重要な一歩となります。2週間前にわれわれは米サウスカロライナ州に電気自動車専用工場を建設する計画を発表いたしました。20億ドルの投資により、最大4000人の雇用が創出されます。工場がフル稼働した場合、年間20万台以上のスカウトを生産できるようになる予定です。これによりフォルクスワーゲングループは世界第2位の自動車市場において、確固たる地位を築くことになると思っております」との見方を示した。

 最後にブルーメ氏は、「自動車業界は世界的に大きな課題に直面しております。私たちは正しい考え方とチームスピリットを持ち、われわれの強固な構造と再編成を通じて広範囲な行動領域を見失うことなく、強みのある立場から行動していきます。このようにして、私たちはBEV、デジタル、自動車の世界で主導的な役割を果たしたいと思います」と抱負を述べている。