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トヨタの新体制方針テーマ「電動化・知能化・多様化」についてワークショップ開催 クルマの新価値を提供する知能化、そしてMT仕様のバッテリEVも登場?
2023年6月13日 05:00
- 2023年6月13日 発表
トヨタ自動車は、東富士研究所において新体制方針のテーマ「電動化・知能化・多様化」に沿った新技術に関するテクニカルワークショップ「TOYOTA TECHNICAL WORKSHOP 2023」を開催した。テクニカルワークショップには副社長である中嶋裕樹氏をはじめ、BEVファクトリー Presidentの加藤武郎氏、水素ファクトリー Presidentの山形光正氏など多くの技術者が参加して新技術についての解説を行なった。
本稿では知能化を中心に紹介していく。
アリーンOSなど知能化技術
トヨタはテクニカルワークショップにおいて、先進安全技術やマルチメディアをはじめ、時代の進化に合わせた機能のアップデートを全てのクルマに順次広げていくことを発表。次世代音声認識では、素早い反応や臨機応変な提案によりまるで人と会話しているような感覚を実現するなど、アリーンOSによりクルマの知能化を加速させていく。
次世代BEVでは車両OSの進化とともに、走る、曲がる、止まるにこだわった「乗り味」のカスタマイズも可能にしていく。加えて、クルマの素性をより磨き上げることで、もっとFun to Driveなクルマをハードとソフトの両面で実現していくという。
アリーンOSは最先端のソフトウェアプラットフォームであり、「クルマのソフトウェアを効率的に開発/評価するためのツール群」「最先端のソフトウェアを容易にクルマに搭載するための開発キット」「人とクルマ、クルマと社会が相互に作用するための仕組み」の3つの柱によってクルマの知能化を加速し、新たな価値を提供していくとのこと。
次世代音声認識については最新のAI技術を活用し、まるでオペレーターと対話しているような高速・高性能なレスポンスや場面や好みに合わせた提案により、ユーザーの快適なキャビン体験を実現していく。また、アリーンOSで200以上の車両機能を操作可能とし、クルマの知能化を加速させていく。
この次世代音声認識については次期グローバル量産モデルに搭載する予定としている。
また、デザイナーとAI(システム)のコラボレーションにより、デザイン発想力を無限に拡張するとともに、意匠開発スピードを抜本的に改善することを目的としたツールも導入していくという。
ここでユニークなテスト車両2台を紹介したい。
1台はBEVのソフトをアップデートすることで、乗り味やエンジン音などをオンデマンドで変更可能にするというもの。昔乗っていた懐かしのクルマ、走りを追求したスポーツタイプ、将来乗ってみたいクルマなど、ユーザーの希望に合わせてアップデートできるというのが新しい。
もう1台のMT仕様のBEVはクルマ屋ならではの取り組みだ。実際にテストコースで走ることができたのだが、かなりの出来栄えに正直驚いた。
まずBEVなのにクラッチが付いていて、アクセルを吹かすとスピーカーからエンジン音が聞こえてくるのがおもしろい。そしてクラッチを切って1速に入れて発進しようとすると……いきなりエンスト(のような演出)。気を取り直してしっかり回転数を上げる(ような動作をする)と、電動車らしく伸びやかに気持ちよく加速していく。
逆に4速→3速、3速→2速と減速していくときはしっかり回転数を合わせないとギクシャクしてしまうギミックも。ホンモノのエンジン車&MT車のような作り込みがなされていて、1周走るだけだったが思わず笑顔が出てしまうほど楽しい!
ポイントは楽しく走りたいときはMT仕様に、高速道路などでラクに走りたいときはAT仕様にと自由に切り替えられることだろう。今回のモデルはテスト車両となるが、その作り込みへのこだわりにクルマ屋としての意地を見た。
社会課題解決にも貢献する知能化も進めていく
一方で社会と繋がり、社会課題解決にも貢献する知能化も進めていく。例えばリアルタイムの交通情報を活用し、輸送効率を高める物流システムや、最適なエネルギーマネジメントを行なうシステムなど、社会実装を進めていくという。
また、モビリティのテストコースと位置付けたWoven Cityでは、人、クルマ、社会を繋げるさまざまな実証実験を行なっていく。例えば物流領域でのコネクティッドサービスを社会実装し、そこで明らかになった課題を再びWoven Cityで改善し、再度社会に実装する。こうしたサイクルを進めることで社会の知能化も加速させていく。
会場で公開された高効率輸送オペレーション支援システム(E-TOSS)は、車両データ、コネクティッド技術を活用し、リアルタイム輸配送の仕組みを実現したもの。正確な輸送・配送計画を通じ、CO2排出量、作業人員、物流コストの約15%低減に寄与するという。
地図自動生成(Geo)はトヨタの膨大な車両データを活用して、道路勾配情報の解像度を飛躍的に向上させるというもので、3D地図の更新頻度を6か月から即日へと変更。より快適で安全、かつ燃費/電費効率の良い運転を可能にするという。
また、登録した駐車パターンをベースに、自動運転技術によって障害物などのイレギュラーな事態にも対応し、「多様な場所」で「賢い駐車」を提供する新たな次世代自動駐車機能も発表。
そのほかe-Paletteについては、多様な用途向けに運転席なし(自動運転)と運転席あり(手動運転も可能)の2タイプを公開。今回は移動コンビニ仕様として、広い車内空間を利用することでさまざまなサービスを実現可能にする車両も公開した。
なお、e-Paletteではトヨタ、ウーブン・バイ・トヨタ、デンソーで開発中の自動運転システムを搭載。大量データによる知能化と、長年蓄積してきた安全の知見をもとにした、クルマ屋ならではの自動運転でMobility for ALLへの貢献を目指すとしている。