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住友ゴム、2023年12月期 第2四半期 決算発表会 「最新のアクティブトレッド技術の詳細を10月のジャパンモビリティショーで発表する予定」と山本悟社長

2023年8月7日 発表

決算報告を行なった住友ゴム工業株式会社 代表取締役社長 山本悟氏

2023年上期は全セグメントで増収増益を達成

 住友ゴム工業は8月7日、2023年12月期 第2四半期 決算発表会を実施した。登壇したのは代表取締役社長の山本悟氏、代表取締役専務執行役員の西口豪一氏、取締役常務執行役員の大川直記氏、経理財務本部長の荒木伸治氏の4名。

 2023年上期の経済環境について山本社長は、「インフレとウクライナ情勢による経済成長の懸念が見られるほか、為替や物価の動向など、不確実性の高い状況が続きました。当社グループを取り巻く環境としては、エネルギーコストの上昇や半導体不足による自動車生産台数の減少の影響が残るものの、海上輸送コストが低下し、原材料価格の高騰影響も一服感が見られます」と解説。加えて「2027年を目標年度に作成した中期計画の実現に向けて経営基盤強化を目指し、プロジェクトを強力に推進するとともに、顧客ニーズに対応した高機能商品を開発増販するなど、競争力の強化にグループを挙げて取り組みました」とグループの動向を説明した。

第2四半期の決算ハイライト

 2023年上期の住友ゴムグループの業績は、売上収益が前年同期比110%の5612億円、事業利益は前年同期比120%の171億円、営業利益は前年同期比134%の168億円、四半期利益は前年同期比48%の82億円と、売上収益は全セグメントで増収、事業利益も全セグメントで増益となった。営業利益も同様に対前年同期で増益だが、四半期利益は対前年同期で減益となっている。

 この結果について山本社長は、「主に前年同期に為替評価益の影響が大きかったこと。加えて一部の海外子会社の影響で、連結ベースの法人税率が上昇したことによるもの」と説明した。

2023年1月~6月 連結決算

 タイヤ事業では、売上収益が前年同期比109%の4711億円。事業利益は前年同期比127%の98億円。国内新車用タイヤでは、半導体不足の影響が一部残るものの前年の販売を上まわった。国内市販用タイヤでは冬タイヤの販売が好調だったことに加え、夏タイヤも値上げ前の仮需要を取り込み、前年同期を上まわっている。

 また、海外市販新車用タイヤは、コロナからの回復により販売を伸ばし、海外市販用タイヤでは、ゼロコロナ政策が撤廃された中国や、ファルケンブランドの北米向け4×4&SUV用タイヤ「WILDPEAK(ワイルドピーク)」シリーズが好調な販売を維持し、売上収益と事業利益ともに前年同期を超えた。

2023年1月~6月 セグメント別 連結売上収益。事業利益
タイヤ海外市販 年間販売本数 地域別推移

 続いて、今期2023年度通期の業績予想について山本社長は、「経済環境は海上輸送コストの低下や原材料価格の高騰の影響には一服感が見られるものの、エネルギーコストの上昇や半導体不足による自動車生産台数の減少など、引き続き予断を許さない状況である」と解説。その結果、連結業績予想について、売上収益は前期比106%の1兆1700億円、事業利益は前期比228%の500億円、営業利益は前期比274%の410億円、当期利益は前期比244%の230億円と、増収増益を予想していると説明。また、2023年の設備投資額は659億円、減価償却費は584億円と、年初の予想通りのまま変更なしとした。

 2023年末のタイヤ生産能力に関しては、ブラジルと北米を伸ばすことで前期比1.3%増の月産6万9930tを予定し、2023年度の年間生産量は前期並みの63万1000t、年間稼働率は84%(予想)としている。

2023年度 連結業績予想
設備投資額、減価償却費(有形)の推移
タイヤ設備稼働率、生産量の推移

 今後については、自社の資本コストを意識したポートフォリオ最適化経営の浸透や、資本収益性(ROE・ROIC)の底上げ、構造改革の早期実行など、2027年目標の新中期計画を前倒しで達成させ、PBR(株価純資産倍率)1.0倍以上の実現を目指すとしている。

2027年に向けた新中期計画は、2025年がターニングポイントになる

 続けて山本社長は、今年2月に発表した新中期計画(2023年~2027年)の進捗状況に触れ、北米における体質変換については、「日本からの支援や現地での取り組みによって計画通り生産が改善し、米国工場品の赤字は縮小傾向になっている一方で、ROIC(投下資本利益率)系の観点から、あらゆる選択肢を継続検討している。北米事業は一時的に赤字になっていたが、販売面ではワイルドピークシリーズを年間で前年比120%に伸ばす計画で好調だ」と説明したほか、管理コストを節約するために「同時に低採算品やSKU(ストック・キーピング・ユニット)の削減も進めている」と言及。

 生産面も計画通り改善していて、原材料・海上運賃など外部環境のプラスもあり、2023年は北米事業の黒字化を見込むほか、2024年は高機能品の生産構成増による収益向上も見込めるという。

北米工場・北米事業の取り組み

 続いてタイヤ事業の運営組織体制の再構築に関して山本社長は、「DX経営への取り組みを通じ、フラットな組織運営で効率化し、最適化を図るためにタイヤ事業の新組織を2024年に向けて準備中です。デジタル人材の育成については、あらゆる部門でDXリテラシー教育に取り組み、専門性の高い人材育成を開始し、計画通り進捗しています」と紹介。DXリテラシー教育にはeラーニングを活用し、テストも設けるなどして、全体レベルの底上げを図っているという。

タイヤ事業に関する2025年までの取り組み進捗

 また、2030年までに材料調達量ベースでサステナブル原材料比率40%達成を目指しているほか、これらの技術に加えて“静粛性”に効果の高い「サイレントコア」や、そのサイレントコアに対応する「タイヤパンク応急修理キット(IMS)」など、独自技術を組み合わせることで、将来のモビリティ社会のニーズと期待に幅広く貢献するとしている。

 新技術搭載商品については段階的に市場へ投入するとしていて、高性能EVタイヤを中心に順次展開し、2027年には転がり抵抗を30%低減、軽量化20%(ともに2019年比)を実現する次世代EV用タイヤを発表。また、独自のアクティブトレッド技術を採用した次世代オールシーズンタイヤを2024年にに投入し、2027年に発表する次世代EVタイヤにも、アクティブトレッド技術を採用するとしている。

 このアクティブトレッド技術の詳細については、10月のジャパンモビリティショーで発表する予定であることも山本社長の口から明かされた。

新技術搭載の商品を段階的に市場へ投入
アクティブトレッド技術

 センシングコアの事業化については、センシングコア技術を自動車メーカーに納入する「新車納入ビジネス」をステップ1として2024年から開始。すでに約40社に提案していて、「2024年の納入が確定した海外メーカーもある」と山本社長は明言。今後も自動車メーカーへの納入を拡大させ、2030年には30社以上と取引する計画だという。

 ステップ2では、この日発表した米国のベンチャー企業Viaduct(バイアダクト)の車両故障予知サービスなどのように、他社サービスとの組み合わせた新サービスをビジネスとして提供。ステップ3は、メンテナンスや保険、リースなどを組み合わせた「トータルフリートサービス」を提供するビジネスに発展させ、2030年にはセンシングコアによる事業利益100億円以上を目指す。

センシングコア 故障予知ビジネス
センシングコアの事業化

 最後に山本社長は、「2025年までにタイヤ事業の運営と組織体制を再構築すると同時に、現在推進しているDXリテラシー教育もおおむね完了するので、現在着手しているさまざまな分野の変革プロジェクトが一気に加速していきます」と期待を述べた。