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住友ゴム、タイヤセンシング技術「SENSING CORE」について年末社長会見で言及 2023年ごろ提供開始を目指す
2021年12月14日 05:30
- 2021年12月13日 開催
ダンロップ、ファルケンのブランドでタイヤの製造販売などを行なう住友ゴム工業は12月13日、2021年度を振り返る社長会見を実施した。同社グループを取り巻く情勢は天然ゴム価格や石油系原材料価格の高騰や海上輸送コスト高騰など厳しい状況にあるとしたほか、タイヤ空気圧管理に関するタイヤソリューションビジネスへの取り組みの説明を行なった。
材料高騰や輸送コスト高騰の影響を受けている
住友ゴム工業 代表取締役社長の山本悟氏は、会見の冒頭、7月に判明した品質管理に係る不適切事案について説明した後で2021年を振り返った。世界経済動向として経済全体は回復傾向、国内では新型コロナウイルス感染症の影響や半導体をはじめとした部品不足で生産は低調、そして、住友ゴム工業グループを取り巻く状況は「アメリカや中国をはじめ多くの市場で回復基調となるなど明るい兆し」があったとするものの、タイヤの原料でもある天然ゴム価格や石油系原材料の上昇、海上輸送コスト高騰の影響を受けていると説明した。
2025年に向けた中期計画のうち高機能商品の開発・増販では、タイヤについて米国工場やブラジル工場での増産投資や名寄タイヤテストコース内に設置した「NICE」と呼ぶ屋内氷上試験施設を1月に開設したことを挙げた。NICEは国内最大級の屋内氷上試験施設で、全長100mの制動試験路と30m四方の旋回試験路を備え、天候に左右されずに高性能な試験ができるようになり、NICEを活用することで冬タイヤのさらなる高性能化と開発のスピードアップを図るとしている。
商品面では、オールシーズンタイヤの拡充を挙げ、「ALL SEASON MAXX AS1」で4月にサイズラインアップの拡大、国内初のVAN用オールシーズンタイヤ「ALL SEASON MAXX VA1」を3月発売、9月にはタクシー専用の「ALL SEASON MAXX AS1 for TAXI」を発売、「雪道でも走行可能なオールシーズンタイヤは履き替えの手間が不要であり、お客さまに安全・安心を提供できる商品として好評で、着実に市場が拡大している」と強調した。
また、新車用タイヤの納入拡大については、ダンロップブランドではレクサス初のEVモデル「レクサスUX300e」などの納入、ファルケンは海外で拡大しているとした。今後はEVの特徴に合わせた製品開発も重要であるとした。
さらにスポーツや産業ゴムについても取り組みを進めているとした。
ESG経営では、工場から排出されるCO2を2030年に2017年対比で50%削減、2050年にはカーボンニュートラルを目指す。8月に発表したサステナビリティ長期方針「はずむ未来チャレンジ2050」では、サスティナブルな社会の実現を目指して調達、輸送、開発、製造、使用に至るまで、サプライチェーン全体を通じて、CO2、原材料のバイオマス化およびリサイクル化、サスティナブルな商品開発を続けていく。中でもサステナビリティ商品の自社基準の制定なども行なう。製造では、水素を活用することとして実証実験に向けた取り組みをスタートさせた。
また、タイヤ空気圧や摩耗状態、路面状況などを検知して、独自のタイヤセンシング技術である「SENSING CORE」を核として、CASE、MaaSなど進化に貢献、安全安心の環境負荷の少ない新たなソリューションサービスも提供することで、住友ゴム工業ならではの循環型ビジネスの確立を目指すという。
タイヤの空気圧・温度管理のソリューションサービスは、一般向けにも提供開始
山本氏が「本当に力を入れて進めている」というソリューションビジネスでは、新出光およびそのグループ会社であるイデックスオート・ジャパンに加えて数十社と空気圧・温度管理サービスの実証実験をしてきた。そのなかでさまざま提供価値が確認でき「タイヤトラブルの未然防止や、点検作業の効率化、工数削減、燃費改善に貢献できた」と説明した。
空気圧はホイールに取り付けたTPMSから取得した空気圧情報をクラウドに蓄積、その推移をモニタリングすることで、スローパンクを発見できることを確認したとし、「今後は自動的にスローパンクを発見する機能を追加する予定」とした。
また、サービス導入後の点検業の効率化では、点検時間をツール導入前の1台あたり180秒から20秒へと90%の短縮が図れたとし、レンタカーやリース業者では短縮した時間を車内清掃などに活用できて好評だという。燃費の改善効果では、タイヤ空気圧が適正と15%低下の差では約3%の改善があるとした。
実証実験では、空気圧・温度管理サービスは、顧客の事情に合わせてサービスを提供できるよう、車両停車時に使うハンディ式から、クルマに取り付ける運転者通知式、さらに停車した状態で自動的にデータを収集する駐車場管理式、走行中でも情報を取得するテレマティクス式まで4タイプを用意しているが、一般向けには運転者通知式として福岡県のタイヤセレクト店舗の2店舗限定で提供を開始したほか、事業者向けの正式なサービスは2022年からの販売に向けて、準備をしているところだとした。
山本氏はソリューションビジネスについて「本当に力を入れて進めている」とした上で、現在開発中のタイヤ回転による車輪速信号からタイヤ情報を検知する「SENSING CORE」について「センサーのようなハードウェアを全く使用せず、空気圧や荷重、摩耗、走ったときの路面の状況まで感知する特有の技術を提供する。タイヤの状態を推定し、その精度は高い」説明した。
この情報は「路面の状況が雨ですべりやすいなど、そういった情報をタイヤから収集して、その情報を発信するなどの技術を前に進めているところ」と説明、さらに「SENSING CORE」の提供開始は2023年頃になると見通しを示し、さらにその先、2025年以降、外部パートナーと協業した循環型のビジネスも進めているとした。