ニュース

大幅改良したマツダ「ロードスター」説明会 新開発のアシンメトリックLSD採用など進化点を開発陣が解説

2023年10月5日 発表

10月5日より予約を開始し、2024年1月中旬に発売が予定される改良型「ロードスター」

 マツダは、オープンスポーツカー「ロードスター(ソフトトップモデル)」「ロードスターRF(リトラクタブルハードトップモデル)」を大幅改良し、10月5日より予約を開始する。発売は2024年1月中旬を予定している。

 マツダはオンラインで改良型ロードスターの説明会を開催し、説明会には商品開発本部主査の齋藤茂樹氏、デザイン本部 チーフデザイナーの岩内義人氏、国内営業本部 国内商品マーケティング部の大関卓也氏が参加した。

 まずは商品開発本部主査の齋藤氏からロードスターの概要が説明され、齋藤氏は「ロードスターは1989年に初代がデビューして以来、世界中の多くの方々に支えられ今年で34年目を迎えます。私たちは“誰もが主役であり幸せになること”を大切に考えて、お客さまの期待を超える感動、そしてクルマを楽しむ文化の発展のために継続して進化してまいりました。近年、自動車を取り巻く環境は大きく変化しています。より安全で環境にやさしいクルマづくりが求められています。そしてロードスターも例外ではありません。新たな国際法規への対応、新たな安全法規への適合が求められています。その中でロードスターを販売、生産し続けるには新しい取り組みが必要でした。また、時代の要請である先進安全技術を装備しながらも、ロードスターの柱である人馬一体の走りをどう進化できるのか、それが今回の開発テーマでした。長年ロードスターに乗っていただいているファンの皆さまから、まだロードスターを知らない若い世代の方まで、多くの方にロードスターの楽しみを提供し続けたい思いで今回の商品改良に取り組みました」と語った。

1989年にデビューした初代ロードスターからずっと進化し続けてきた「ロードスターの楽しみ」。その最新版となるのが今回のモデル。オンライン説明会ではあったが、マツダ側の力の入れようが伝わる内容だった
今回の改良のポイントは3つ

 齋藤氏は続けて今回の商品改良のポイントが3つあるとし、先進安全技術およびコネクテッド技術の進化、ダイナミクス性能の進化、デザインの進化を挙げ、先進安全技術については「このモデルより高速道路でのドライバーの負荷を軽減するマツダ・レーダークルーズ・コントロール(MRCC)を初採用しました。また、自転車も含めて検知するスマート・ブレーキ・サポート(後退時左右接近物検知機能・SBS-RC)も採用しています。これにより日常の駐車シーンから高速道路での遠出など、さまざまなシーンでより安全にロードスターを楽しめるようになりました。さらに快適なドライブをサポートするため、マツダコネクトも進化しました。ディスプレイを8.8インチとしつつ、画面の縁を極力狭くしたフレームレス構造を新たに採用。スマートフォンからアプリを通じて車両の状態を確認できるほか、万が一の事故の際には救急車を自動で手配するコネクテッドサービスも使用可能となりました」と説明した。

ロードスターにも待望のMRCCとSBS-RCが装備された
縁を極力狭くしたフレームレス構造を採用した8.8インチディスプレイを採用。また、スマホとの連動やコネクテッドサービスも利用可能となる
緊急時に救急車を呼べる機能も追加された

 走りについてのトピックは、新しいアシンメトリックLSDだ。齋藤氏は「新たに開発したアシンメトリックLSDは加速時と減速時、それぞれ最適な作動制限力を実現しています。具体的には減速側のLSD効果の作動制限力を強めることで後輪の荷重が減って不安定になりやすい減速時の姿勢を安定させました。加速側はマイルドにすることで、街中ではさらに軽やかになり、ワインディングでは安定性が格段に向上しています。このLSD効果に加えて、より軽やかで正確なステアリングフィールを実現するため、ステアリングシステムにも改良を加えています。内容はというと、ステアリングラックのメカニカルなフリクションを低減しながら、モーターアシストの制御ロジックをマツダ内製化し、より綿密に進化させることで従来以上に自然なフィードバック感を実現しています」と、新たな機能について説明した。

新開発のアシンメトリックLSD。加速側と減速側でカム角を変えることで、それぞれの状況で最適なLSDの効きを実現
パワーステアリングの操作感までも改良されている

 2つ目は機能変更されたDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)の話。齋藤氏は「マツダならではの新アイテムとしてより安全にスポーツ走行を楽しんでいただくため、サーキットに最適化したDSCの新モード『DSCトラック』を追加しました。この機能では横滑り防止回遊制御介入の閾値を通常よりも深く設定(ある意味効きにくく)しており、素早いスピン挙動に陥った場合に限ってドライバーのカウンター操作に応じた制御が介入、コースアウトやクラッシュのリスクを低減いたします。ただ、この機能はあくまでもクラッシュのリスクを下げるためのものであり、ラップタイムが向上するようなものではありません。DSCトラックはドライバーのスキルアップを邪魔するものではありません」とこの新しい機能を説明した。ちなみにDSCトラックのテストで試験車をパーティーレースで走らせていたということも語られた。

1.5リッターエンジンはセッティングを煮詰めることで出力を3kW向上。スロットルONの反応だけでなく、OFFのときの反応も向上させている
「DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)」をサーキット走行専用にチューニングした「DSC TRACK」のモードを追加。スピン状態になりそうなシーンのみで制御が介入するので、意図的なスライドを使う走りに対応

 齋藤氏のプレゼンテーションは以上となるが、最後に「エクステリア、カラーコーディネーションも進化させましたがここではユーザーの期待を上まわる進化をさせるため『More Road Star』というスローガンを掲げました。こちらの詳細はチーフデザイナーよりご説明させていただきます。どんな時代にあってもロードスターという人馬一体を感じるクルマをお届けしたい想いを胸に、私たちはこれまでまっすぐにロードスターと向き合ってきました。安全性と環境性がこれまで以上に求められる時代で、ロードスターはどうあるべきか、先進安全性のための機能を盛り込みながら、人馬一体の走りをどう進化できるのか、その答えが今回商品改良したロードスターとなります」と締めくくった。

デザインについて
「現代における最良のロードスターとは」というテーマを実現したのが今回発表のモデル

デザインの改良について

 デザイン改良の紹介はデザイン本部 チーフデザイナーの岩内義人氏が行なった。岩内氏は「ロードスターは世界中で広く愛されてきました。そしてこれからもブランドアイコン、デザインアイコンとして長く愛され続けたいと願っています。そのためにはお客さまの期待を裏切らない進化を続けていく必要があります。そこでわれわれは『More Road Star』のスローガンのもと、デザイン開発を行ないました。テーマとしてはよりロードスターらしく磨きをかけていくものになります。ここでは人がクルマを楽しむための『感』の部分の熟成をデザインでサポートしていきます。そのためにデザインにおいて、魅力あふれる豊かな表情、ライトウェイトスポーツの機能美、誰にでも愛される普遍性といった3つの切り口を達成していきたいと考えております」と概要を説明した。

デザインの改良テーマはよりロードスターらしく磨きをかけていくということ
エクステリアデザインでは3点の改良が行なわれた

 まずはエクステリアについて。岩内氏は「大きくデザインを変更した箇所がヘッドライトです。従来はバンパーにあったデイライトですが、改良モデルではヘッドライトの内部に組み込まれています。そしてこのランプはサイドターンランプとポジションランプを兼ねています。こうしたヘッドランプの刷新により表情が豊かになり、遠くから見てもロードスターとしての個性が際立ちます」と変更点を紹介。

手前が改良型、奥が現行型。ヘッドライトのデザインが変更されている
上が現行型、下が改良型
並びは同じでターンランプ点灯。改良型はターンランプが Bi-Beam LEDとなった。LEDのポジションランプがターンランプにも切り替わり、クリアかつシャープな光になっている

 今度はリアコンビランプ。岩内氏は「リアコンビランプに採用した丸目のメッセージはロードスターのDNAですので、イメージをキープしながら緻密に進化させています。デザインはジェットエンジンのアフターバーナーからインスピレーションを得ています。そしてフルLED化によって得られた強力な光の発散を感じられるデザインに仕立てています。ヘッドライト、リアコンビランプともにLEDを取り入れたことで、切れ味のある現代的な光の質感を手に入れることができました」と、変更内容と見え方のポイントを解説した。

上が現行型、下が改良型。ロードスターのDNAと呼ぶ丸目を組み込んだデザインは変えていない
リアコンビランプはフルLED化。点灯するとこのようになる。ジェットエンジンのアフターバーナーをイメージしたとのこと
ブレーキランプ点灯時
ターンランプ点灯時
バックランプ点灯時
改良型のランプ点灯時のイメージ

 次に岩内氏が紹介したのはアルミホイールだ。改良モデルには16インチと17インチのアルミホイールが設定されている。岩内氏によると「従来モデルは大径ホイール、小径ホイールともに同一のデザインでしたが、今回は意図を持ってデザインを変えています。小径の16インチは機能性と軽さを重視したパフォーマンスを感じるデザインとしています。そして大径の17インチは切削ホイールとすることによって、華やかで大きく見えるデザインにしています。このように2種類のホイールを用意したことで、グレードや車種ごとのキャラクターがより明確になるようになっています」とのことだ。

今回のモデルではホイールの径ごとにデザインを変えているのも特徴。上が16インチで下は17インチ
グレードや車種によって径とデザインを使い分けることで、それぞれのクルマが持つキャラクターを表現しやすくなった
改良モデルには追尾レーダー機能のMRCCが装備されているので、グリル部にはレーダーカバーが追加されている。カバーのデザインは目標物を捉えるレーダースコープからインスピレーションを得たという

インテリアの改良について

 次はインテリアデザイン。ここもロードスターファンの間では大いに話題になるところだろう。岩内氏は「インテリアにもいろいろと改良を加えました。まずはスピードメーターとナビディスプレイです。このモデルではメーターをデジタル表示の漆黒メーターに刷新しました。メーターは文字盤を漆黒としながら、フラットでハイコントラストなグラフィックやシャープな針に置き換えることで視認性を向上させています。ドライバーから見て左側のシリンダーはデジタル表示に変更しています。ディスプレイは縦長7インチから8.8インチのワイドモニターに変更。ソフトウエア面でも新世代マツダCONNECTにアップデートをしているので利便性が大幅に向上しています。もう1点、今回はルームミラーをフレームレスミラーに変更することですっきりした感じとしつつ、視認性を向上させています。また、ミラー周辺にはエマージェンシーコールシステムが追加されています」と説明した。

メーターとナビディスプレイが刷新された
デジタル表示の漆黒メーター。視認性は向上しているという
左シリンダーはMRCCの動作状況も表示する。インジケーターではトラックモードの表示も追加された
左が現行型で右が改良型。ルームミラーはフレームレスミラーとなった。赤い矢印の部分がエマージェンシーコールシステムのボタン
センターコンソールのデザイン変更点。現行型はプラスチックのハードパーツだが改良型はクッション入りの表皮巻きになった。新たにステッチも入れて質感も向上している
ドライバー席から見たもの

「Sレザーパッケージ Vセレクション」ついて

 改良型には「Sレザーパッケージ Vセレクション」と呼ばれる新グレードが設定された。岩内氏はこのグレードについて「今回のモデルではNAロードスターに設定されていたVスペシャルを彷彿させるようなヴィンテージな装いのグレードも用意しました。こういった仕様を待っていたお客さまも多いのではないでしょうか。ベージュカラーの幌はドリフトウッドという帆布や麻のような少しムラがある素材感のテクスチャーを使っています。そしてシートにはナッパレザー(スポーツタン色)を採用しました。また、ドアトリム、インパネ、センターコンソールはスポーツタンの合成皮革が巻かれたものになりました」と説明した。

NAロードスターにあったVスペシャルをイメージさせるグレードが設定される
Sレザーパッケージ Vセレクションの内装
人気が出そうなグレードだ
ブラックシートも改良
背面、座面の広い部分をスエード調の表皮とした。CX-60のプレミアムスポーツにも採用している素材とのこと。柔らかくて滑りにくいのでGを受けたときの走行姿勢の崩れを和らげてドライビングに集中できるとのこと
ボディカラーにはエアログレーという新色を採用
エアログレーはスムーズに勢いよく流れる空気をイメージした色とのこと。ソリッドカラーのようなモダンさとメタリックカラーならではの陰影感を併せ持つ
その他のカラーは6色。現行型から引き継いだ色だが、現行にあったプラチナクォーツメタリックは廃番になる

 以上が説明会の内容だ。繰り返しになるが改良型のロードスターは10月5日より予約が開始され、発売は2024年1月中旬予定。価格はロードスター(ソフトトップモデル)が289万8500円~367万9500円で、現行型にあった「990S」は廃止され、後継グレードも用意されない。リトラクタブルハードトップのRFは379万6100円~430万8700円となる。

初代ロードスターから現行までの累計販売数
国別の累計販売数。北米、欧州、日本が中心で全体の97%
世代別の販売数。ND型は初代に次ぐ販売台数となっている
スポーツカーの販売状況は最初がピークになることが多いが、ND型は8年目で過去最高の実績となっているのが特徴的な部分
スポーツカー全体の売り上げも伸びている。ロードスター、86/BRZなど手の届くスポーツカーがこれを牽引している
ロードスターの購入層の年代データ。40歳以上が多い
購入形態などのデータ。ロードスターからの乗り換えが一番多い。また、代替(クルマの乗り換え)ではなく増車というケースも多い
タイプごとの販売データ。ソフトトップモデルが多数。そしてソフトトップモデルでは約8割がMTを選んでいる