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富士24時間予選、液体水素カローラAドライバーのモリゾウ選手は2分1秒401 「よい基準タイムを出すことができた」と語る
2024年5月25日 08:00
予選で2分1秒401を記録したモリゾウ選手
スーパー耐久富士24時間の決勝レースが、5月25日15時~26日15時に行なわれる。それに先立つ24日午後、予選が行なわれ決勝レースにおけるスタートグリッド順が決定した。
航続距離約1.5倍など数多くのアップデートを取り入れてきた32号車 ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept(モリゾウ/佐々木雅弘/石浦宏明/小倉康宏/近藤真彦/ヤリ=マティ・ラトバラ)、つまり液体水素カローラはAドライバーであるモリゾウ選手が2分1秒401を記録。Bドライバーの佐々木雅弘選手が2分を切る1分59秒070を記録し、AドライバーとBドライバーの合算により総合44位となった。
モリゾウ選手の予選は、高圧水素タンクの気体水素カローラ最終年である2022年に2分1秒554、円柱形液体水素タンクで重くなった液体水素カローラの初年度となる2023年に2分4秒960を記録しており、なんと3秒半速くなったことになる。
航続距離が約1.5倍伸びた異形液体水素タンクを搭載する液体水素カローラでは、タンクまわりの約20kgに加え、自動化された車載CO2回収装置で重くなり、車体まわりを見直した設計で20kg程度軽くなっているという。つまり、重さ的に前年と同程度、重量バランスは燃料タンクの変化により後ろに移動している。
予選を終え、Bドライバーである佐々木雅弘選手のアタックを見守るモリゾウ選手こと豊田章男 トヨタ自動車会長に、アップデートされた液体水素カローラの印象を聞いてみた。
今回記録した好タイムの印象については、「よかったでしょ、タイム」とニコニコ。モリゾウ選手は液体水素カローラのテスト時に2分2秒038を記録しており、自己ベストを出すことができて、とにかくうれしそうなのが印象的。出力は同等、重さも同等となる2024年版液体水素カローラにおけるタイムの大幅な短縮は、モリゾウ選手の進化を現わしており、予選後の疲れも見せず「よい基準タイムを出すことができた」とニコニコだった。
ただ、そういう話をしているときに、佐々木選手が2分を切ったという情報が入ってくると「さすが王子(モリゾウ選手は、佐々木選手を王子と呼ぶ)」と語り、自分自身が進化して記録できた好タイムが「ほかの選手のよい刺激になっているのかな」とも語る。
実際、2分に迫るタイムは大きく重いタンクを背負った液体水素カローラとしては速いタイムになるし、1956年5月3日生まれで68歳を迎えてなお進化できていることに「もう68歳ですから」(モリゾウ選手)と強調しつつ、ほかのドライバーに妙なプレッシャーを与えていた。
今回、液体水素カローラの航続距離が約30周に伸びたことで、ドライバーの負荷は約1.5倍となる。石浦選手は、「30周に伸びると、自分も大変になるなぁ。アハハ」とにこやかに語っていたが、フルに走ると単純計算で1時間以上ドライブすることになる。
その辺りの負荷の上昇をモリゾウ選手に聞いたところ、ドライブの難しい夜間走行はプロドライバーである佐々木選手や石浦選手が主に担っていくものの、走行状況によっては自分も長めのスティントをこなしていくだろうとのこと。「がんばりますよ」と明るく語ってくれた。
モリゾウ選手は、今後の選手としてのレース挑戦の目標を「ニュル24時間に再び挑むこと」と語っており、常に一歩先を見すえて走り続けている。そこに向け、自分自身が進化できたことが本当に楽しそうな予選後のコメントだった。
ちなみにモリゾウ選手は練習走行日に、新たに就任したSTMO(スーパー耐久未来機構)の理事長として全ピットを訪問。各ピットで、参加する選手やチームと積極的にコミュニケーションを取っていた。
世界トップとも言える自動車会社の会長が、プロドライバーと同等のタイムを出しながら24時間レースに挑みつつ、さらにスーパー耐久の新しい未来を作るために全ピットを訪問。STMO理事長としての仕事も精力的に行なっていたのも印象的なできごと。
STMO理事長就任時に語っていた海外からのレース参加についても、トヨタがタイで提携するCPグループのチアラバノン・カチョーン氏が59号車 2W Yamaguchi GR Supra GT4 EVOのドライバーとして参戦。日本の24時間レースから、アジアの24時間レースへ向けての変化も少しずつ始まっている。
液体水素カローラの進化にも驚いたが、モリゾウ選手の進化にも驚いた予選だった。