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TDK、スピントロニクス技術を用いたニューロモルフィックデバイス開発について「CEATEC2024」に出展
2024年10月3日 14:33
- 2024年10月2日 発表
TDKは、同社のスピントロニクス技術を用いた「スピンメモリスタ」がニューロモルフィックデバイスの基本素子として機能するのを実証したことなど、ニューロモルフィックデバイス開発の取り組みについて「CEATEC2024」(幕張メッセ:10月15日~18日)に出展する。
TDKでは2020年からフランスの原子力・代替エネルギー庁CEA(Commissariat à l'énergie atomique et aux énergies alternatives)と連携を開始し、「スピンメモリスタ」を用いたAIデバイスの開発に取り組んでいる。
CEAの協力を得ることで、スピンメモリスタを搭載したAI回路(3素子×2セット×4チップ)を開発し、音声分離デモンストレーションで機能することを確認。これによって、AI回路においてスピンメモリスタが基本素子として機能することを実証したとしている。
このデモンストレーションでは、3種の音声(音楽とスピーチとノイズ)を任意の比率で混ぜても、開発したAI回路が3種の音声をリアルタイムで学習しながら分離することができるとしている。一般的な機械学習では事前に学習したデータに基づいてAI動作をさせることに対して、同デバイスは環境の変化をリアルタイム学習できることが特徴としている。
今後、実用化に向けて東北大学の国際集積エレクトロニクス研究開発センター(以下、東北大学)と連携して、消費電力を100分の1に低減できるニューロモルフィックデバイスの実用化を目指し、産学官の国際連携で開発を推進していくとしている。
TDKが新事業として取り組む「ニューロモルフィックデバイス」
同技術に関する説明会が10月2日に開催され、TDKでは新事業として、ストレージ、光電変換、高性能サーバー、液浸冷却といったデータセンター関連部品に求められる新たな技術に取り組んでいて、高性能サーバーに応用可能な「ニューロモルフィックデバイス」の実現を目指していることが紹介された。
ニューロモルフィックデバイスの開発においては、人間の脳のシナプスとニューロンを電気的に模倣したデバイスを開発することを目指していて、ニューロモルフィックデバイスの実現には、デバイスに通過した電子の数をアナログ抵抗として記録する素子「メモリスタ」が必要という。
TDKでは、量産中のHDD向け磁気ヘッド、TMRセンサ、ファンダリで量産中のSTT-MRAMといったTDKのスピントロニクス技術を活用した「スピンメモリスタ」を開発。TDKでは、従来技術や従来設備に、新しいスピントロニクス技術や新しいAI技術を活用することで、「スピンメモリスタ」の量産化は技術的に可能として、開発を進めている。
これまでの既存のニューロモルフィックデバイスに用いられているメモリスタは、抵抗の経時変化や正確なデータ書き込みには制御が困難で、データを保持させるために制御が必要といった課題があったが、TDKの「スピンメモリスタ」ではそれらの課題を解決できる素子として、耐環境性と安定した記録動作が期待でき、リーク電流を低減することで省電力化が実現できるという。
CEAとの取り組みでは、コンセプトデモとして実素子を用いて基本機能を実証。今後、2024年〜2027年に向けて、TDK、CEAに東北大を加えた3者協力体制による開発で、素子のアレイと半導体回路を集積したチップで性能実証するチップレベルデモを目指すとしている。
説明会に登壇した取締役 常務執行役員 CTO 佐藤茂樹氏からは、「TDKはフェライトから始まる技術を活用して、様々な製品を世の中に提供しております。創業時には、フェライトコアを始めとするフェライト製品が中心ではありましたけれども、それらのプロダクトを木に見立てると、それまで小さかったものが、材料技術、プロセス技術であったり、いろんな改良技術を組み合わせることにより、木を成長させております。さらに、既存の技術を進化させ、さらに新しい技術を取り込んでいって、さらにこの木を大きく成長させていきたい」と新事業に対する意気込みが語られた。