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マツダ、2025年3月期 上期決算説明会で毛籠勝弘社長が次期CX-5や新型4気筒エンジン「SKYACTIV-Z」について言及

2024年11月7日 開催

マツダ株式会社 代表取締役社長兼CEO 毛籠勝弘氏

 マツダは11月7日、2025年3月期 上期(2024年4月1日~9月30日)の決算内容を発表し、決算説明会を実施した。

 このなかで、マツダ 代表取締役社長兼CEO 毛籠勝弘氏からマツダが推し進めている「2030経営方針」の進捗状況についての説明が行なわれた。

3年間でマツダの売り上げは25%増加

2022年にスタートしたPHASE 1の大きな狙い

 今年度が2030経営方針で2030年までの期間を3つに分けた「PHASE 1」の最終年度となり、ここまでの3年間に取り組んできた経営戦略や電動化について毛籠社長は解説。

 PHASE 1では将来的な車両の電動化、カーボンニュートラルに向けた準備を進め、次の段階に向けた成長投資の原資を稼いでいくことを目標に定め、具体策として「ラージ商品や北米専用車などに投資した技術や商品資産を活用してトップラインを高める」「中期的な原価低減活動の基盤を整備して、サプライチェーン、バリューチェーン全体で原価低減を図る」「電動化技術や電池の準備を行なう」という3点を設定した。

 これらの取り組みの結果として、「トップラインの成長による成長原資の獲得」では、2022年~2024年の3年間で、この期間に半導体の供給不足や物流の制約といったグローバル規模の問題が起きた影響によって設定していた目標に対して5%ほど未達となったものの、マツダの主力市場である北米で販売台数が大きく飛躍。欧州や豪州でも堅調販売が推移した一方、中国を含むアジア地域では苦戦が続いていると説明した。

 収益では同期間に為替が円安傾向となったことが追い風になりつつ、材料費、労務費などが高騰してオフセットされる状況になっているという。これにより出荷台数目標は未達となったものの、マツダの売り上げは25%増加。売上単価と合わせたトータルの売上高は過去最高を更新しており、ROS(経常利益)は5%レベルの改善となっている。

 安定した増配を実施しながらROE(自己資本比率)は10%レベルを維持しており、成長に向けた原資の獲得という観点では同期間で当期純利益で累計約4900億円となり、それぞれの期初公表計画の累計を約1300億円上まわる見通しで、ネットキャッシュも約500億円から約3500億円程度まで伸びて財務体質の継続的な改善が進んでいるとの分析を示した。

「トップラインの成長による成長原資の獲得」

 2024年度は北米販売で対前年比21%増と想定通り好調に推移しており、下期にも価値強化を行なった2025年モデルイヤーの車両やCX-50 HEV(ハイブリッドカー)といった商品、金利の引き下げ効果などを活用して収益、インセンティブ、販売台数のバランスを健全化していくとアピール。直近10月の米国販売は対前年比59%増と好調をキープしていることも強調した。

 一方、グローバルではラージ商品のCX-60で品質課題に徹底対応するため、続くCX-90の一部モデルやCX-70、CX-80の発売を延期。これによってグローバルでの成長機会が後ろ倒しになっており、ラージ商品の4モデルが出そろう下期から巻き返しを図っていく。

 苦戦している中国市場では新型「EZ-6」の市場投入で反転攻勢を行ない、日本市場ではCX-80の発売を起爆剤とするほか、2025年初頭に東京・青山に「ブランド発信拠点」をオープンさせて都市圏におけるマーケット施策を強化。実車展示や試乗体験によって営業活動の取り組みを強化していくとした。

 このほか、昨今の世界的なインフレによって成長投資に必要な資金もコスト増になる傾向が見られており、PHASE 1の3年間は業績が比較的良好に推移したが、投資力を自己資本で生み出していくために投資の効率化を徹底し、さらなる利益の創出などに取り組んで挑戦のスピードを高めていく必要があるとの危機感を口にした。

次期「CX-5」では種類数を約60%削減

「原価低減活動の取り組み」

 自分たちの努力でコントロール可能な「原価低減活動の取り組み」では、「種類数の適正化」「調達構造の変革」「プロセス変革」「コスト構造改革活動」の4点を並行して推進。

「種類数の適正化」では、サプライチェーン全体に複雑性を生む要因である種類数の増加に対して抜本的な施策を実施。サプライチェーン全体の流速を高めて固定費を削減して、具体的にはユーザーニーズを徹底的に分析することで購入時に選びやすい選択肢を絞り込んでいくことにより、次期「CX-5」で現行モデル比で約60%の種類数削減を実現するべく取り組んでおり、CX-5以降のモデルにも取り組みを拡大していくという。

「調達構造の変革」ではサプライチェーンの階層フラット化、近場化を推進。現状はサプライチェーンで構成部品が国内、海外を行き来して階層を深めるところもあり、これを廃止して階層間で発生する無駄なコストを削減。海外の工場から輸入している部品をマツダの生産工場の近場で種類を生むよう変更して輸送費の低減、在庫の削減などを図っていく。これらにより、次期CX-5では既存の購入部品でも現行モデル比で約6%の原価効率化を実現していく。また、この取り組みは事業継続性やカーボンニュートラルにも有利な変革であり、積極的な展開を図っていくとした。

「プロセス変革」では、価格競合による点でのコスト低減から脱却。取引先が有する専門的な知見を企画段階から車両開発に取り入れ、原価企画と性能開発を同時に進める手法を採用。原価低減と性能向上を両立させるブレイクスルーとして大幅な原価低減を追求していく。

「コスト構造改革活動」では原価低減に向けたコスト構造改革活動をさらに加速させていくため、専任リソースとして原価低減のタスクフォースチームを10月末に発足。2027年3月期までに「3%≒1000億円」を目標とする原価低減にチャレンジしていく。

次期CX-5はマツダ製ハイブリッドシステムを採用予定

2030年までは走行用バッテリを外部調達する方針

 電動化の準備状況では、まず走行用バッテリについて、2030年までの段階を「電動化の黎明期」と位置付けており、走行用バッテリを外部から調達する方針を決定。パナソニック エナジー、パナソニック オートモーティブシステムズ、AESCジャパンの3社とBEV(バッテリ電気自動車)向けのバッテリ供給で合意して、2030年に想定されるキャパシティの確保にめどを立てた。また、これに合わせてパナソニック エナジーから調達する走行用バッテリのモジュール・パック工場を山口県内に建設することも決定している。

 自社開発に取り組む次世代電池技術では、GI基金(グリーンイノベーション基金)事業として先端電池技術を研究開発する試験ラボを社内に開設し、モデルベースを活用した効率的な開発で予定どおり進捗しているという。

2030年までを視野に入れたマルチソリューションラインアップのロードマップ

 電動化技術を採用する商品開発では市場の受容性を勘案しながら開発を進めており、既存資産を活用しながら電動化によって「マルチソリューションラインアップ」を強化。CX-50にはトヨタ自動車製のハイブリッドシステム搭載モデルをラインアップに追加して市場投入しており、一方で次期CX-5ではマツダ製のハイブリッドシステムを採用予定。このマツダ製ハイブリッドシステムはラージ商品にも技術要素を展開していく計画となっている。

 2027年の市場導入を予定するマツダ初のBEV専用プラットフォームを採用するBEVについても、このBEV専用車台を活用して低い投資によってPHEV(プラグインハイブリッドカー)向けの商品派生を行なうことも検討しているという。

 中国で20年来のパートナーシップを結んでいる長安汽車との合弁会社「長安マツダ」で製造している「EZ-6」では、パワートレーンにBEVとレンジエクステンダーEVの2種類を用意。さらに長安汽車との合作第2弾となるクロスオーバーSUVの開発も順調に進捗していると説明された。

新型4気筒エンジン「SKYACTIV-Z」は2027年度中に市場投入

電動化に対応する内燃機関について

 電動化と並行して、マツダの看板技術であるロータリーエンジン開発も続けられ、エミッション適合性開発は「大変困難な挑戦」としつつ、果敢な挑戦によって良好な進捗を見せていると毛籠社長は紹介。

 また、既存のガソリンエンジン「SKYACTIV-G」「SKYACTIV-X」に続く新型4気筒エンジン「SKYACTIV-Z」の開発も進められており、将来的には6気筒エンジンにもSKYACTIV-Zで培われた燃焼技術を移植して環境性能を高めることも想定。エンジン全体としては選択と集中を行ない、種類数を段階的に集約して大幅な効率化につなげる計画としている。

 SKYACTIV-Zでは理論燃焼である「ラムダワン燃焼」を採用。低回転から高回転までの幅広い領域でスーパーリーンバーン燃焼を行なって高い熱効率を実現。優れた環境性能と走行性能を提供し、欧州の「Euro 7」や米国の「LEV IV」「Tier 4」といった厳しい環境規制にも適合するエンジンとして、2027年度中の市場投入を目標に開発を進めている。

 電動化を加速させる社内体制の強化では、2023年11月に「電動化事業本部」を発足。現在は300人の人員が所属して、電動化に向けた事業戦略、技術戦略、商品開発についてワンストップで取り組むため、組織を従来の7階層から3階層にフラット化して取り組みスピードを倍速で進めている。また、ソフトウェア人材の採用強化を図るため、R&Dのソフトウェア部門、人財採用部門を東京に移転。希少人財へのアクセスを強化しているという。

 最後に毛籠社長は、PHASE 1では取り組みがおおむね想定に沿って進捗しており、今後も引き続き電動化に向けた環境や経営を取り巻く環境は変わり続けると想定しており、計画変更も柔軟に行なう余地を残しながら、意思決定を適切なタイミングで行なっていくと述べている。

発表内容のまとめ