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ル・マン24時間を運営するACO、液体水素ハイブリッドレーシングカー「H24 EVO」公開 トヨタの参戦はあるのか?

2025年1月28日(現地時間) 発表

ル・マン24時間レースを運営するACOが水素レーシングカープロジェクト「MissionH24」で、液体水素を採用することを発表。同時に液体水素レーシングカー「H24 EVO」プロトタイプを公開した

ル・マン24時間レースに導入予定の水素レーシングカーが液体水素を採用

 ル・マン24時間レースを運営するACO(Automobile Club de l'Ouest:フランス西部自動車クラブ)は1月28日(現地時間)、水素レーシングカープロジェクトである「MissionH24」において、新たなチャレンジである液体水素ハイブリッドレーシングカー「H24 EVO」プロトタイプを公開した。

 ACOは2018年に初めて水素レーシングカー構想を発表。そのプロジェクトは「MissionH24」と名付けられ、当初は水素を燃料とする燃料電池と高圧水素タンクの組み合わせで進めていたが、2023年5月の富士24時間レースにACO ピエール・フィヨン会長が来日した際に、水素を燃焼して燃やすH2ICE(水素エンジン)搭載車の参戦も可能と発表していた。

液体水素レーシングカープロジェクトのパートナー企業

 それに呼応するように100周年を迎えた2023年のル・マン24時間レースには、豊田章男会長がモリゾウ選手として70MPaの高圧水素タンクとH2ICEを搭載した水素カローラでデモランを行なったほか、液体水素エンジンを搭載し回生エネルギーを回収するための電池を搭載した水素ハイブリッドレーシングカー「GR H2 Racing Concept」を展示。「MissionH24」プロジェクトへの参加は表明しなかったものの、後押しする姿勢を見せていた。

TOYOTA GAZOO Racingが2023年に発表した水素レーシングカー「GR H2 Racing Concept」。パワートレーンは、水素エンジン+ハイブリッドシステム

 2024年のル・マン24時間レースにおけるACOのプレスカンファレンスでは、2028年のル・マン24時間レースで水素レーシングカープロトタイプが参戦可能とする発表を行ない(当初の発表では2024年からだったが、コロナ禍などさまざまな要因もあり導入が遅れている)、ACOとして着実に取り組みが進んでいることを示している。

 今回、新たな水素レーシングカーである「H24 EVO」構想を発表。燃料を高圧水素から液体水素に切り替えたことになる。液体水素を採用した理由としては水素の搭載量を挙げており、70MPaの高圧水素では40kg/m 3 の密度であるのに対し、液体水素では71kg/m 3 になるという。つまり、同じ容積であればより多くの水素燃料が搭載できることになり、より耐久レース向きのレーシングカーフォーマットであると判断したのだろう。

 このH24 EVOに組み合わせられるパワートレーンは、300kWの燃料電池、エネルギー回生のためのリチウムイオンバッテリ、最大650kWもしくは872HPのモーターとしており、液体水素タンクを搭載することで水素の搭載量を11kg~14kgと想定。40分の航続距離を目指している。

 今後のスケジュールとしては、2025年5月にデザインを決定し、6月のル・マン24時間レースで水素車展示エリアで公開。2026年4月にはトラックテストを行なっていく。

 ACO ピエール・フィヨン会長は、「気体水素をレーストラックに導入した後、H24EVOを擁するMissionH24は現在、2つの挑戦、すなわち液体水素を競技に投入し、従来の内燃エンジンとの競争に打ち勝つという重要な新段階に着手している。このミッションはレースでCO2排出ゼロを達成するために不可欠である」とコメントを発表。従来の内燃エンジンに勝るレーシングカーの実現を目指している。

液体水素の採用理由
液体水素レーシングカーの構成要素
今後のスケジュール
将来構想

液体水素と言えばトヨタ、液体水素レーシングカーでル・マン参戦はあるのか?

 このACOの発表により、航続距離が大切になるル・マン24時間レースにおいて液体水素が採用されることになった。現在の導入時期は2028年、順調にいけば2026年には走る姿を見ることができる。

 そこで気になるのはスーパー耐久レースで液体水素カローラによるチャレンジを行なっているトヨタの動向。トヨタは現在、H24 EVOのパートナー企業に名を連ねていないが、H2ICEや液体水素タンクなどによるレースで豊富な知見を持っている。スーパー耐久での活動もFIA(国際自動車連盟)との調整を取りながら続けており、国際的な水素レースの下地になるデータをFIAに提供している。

 ACOのフィヨン会長も2024年7月に来日した際は、スピリット・オブ・ル・マン賞を直接トヨタ 豊田章男会長に手渡すとともに、水素レーシングカーに関して意見交換をしている。相当突っ込んだ会話も行なわれており、ACOの進めるMissionH24プロジェクトへトヨタの参加や協力もあるのではないだろうか。

 トヨタは水素エンジンを搭載した水素レーシングカーのプロトタイプ(発表時は高圧水素タンク)を公開はしているものの、レースへの参戦は現時点で表明していない。トヨタは水素に関する豊富なレース経験を持つこと、現在のル・マン24時間レースへ参戦しているメンバーでもあることから、その動向が注目される。