ニュース
日産、新経営体制について会見 新社長のイヴァン・エスピノーサ氏「安定性と成長を取り戻していきたい」
2025年3月11日 19:53
- 2025年3月11日 開催
日産自動車は3月11日、同日に開催された取締役会において、4月1日付の代表執行役および執行役とその担当業務を決議。同社代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)の内田誠氏の後任として、現在、チーフ プランニング オフィサーを務めるイヴァン・エスピノーサ氏が新たにCEOに就任すると発表した。
この発表を受け、内田社長、イヴァン・エスピノーサ氏、独立社外取締役 取締役会議長の木村康氏がオンライン会見に参加し、新経営体制などについて説明を行なった。
まず木村議長より一連の決議について説明が行なわれ、日産が置かれている状況を踏まえると経営体制を刷新することは必要かつ適切なことと述べるとともに、今の日産のトップに立つにふさわしい人物がエスピノーサ氏だと説明。
また、エスピノーサ氏について「これまで商品企画の領域を担当し、メキシコでのキャリアを含めグローバルな経験を有しています。長年の日産キャリアを通じて日産愛が強く、情熱とスピード感をもって日産の業績回復およびさらなる発展をリードしてくれるものと信じています。私自身も指名委員会の一員として候補者選定プロセスに関わり、彼には十分その資質があると判断いたしました。会社の現在置かれている状況、彼にとっては大変厳しい船出でありますが、取締役一丸となって彼をサポートしていく所存です」と述べた。
以下、内田社長とエスピノーサ氏のコメントを記す。
内田誠社長
内田でございます。先ほど木村議長から説明があったとおり、今月末をもって職を退くことになりました。進退については従前からあくまで指名委員会、取締役会の判断に委ねられるものであると申し上げてきましたが、私自身としては先月の決算発表の場で述べたとおり、1日も早く今後日産が進むべき方向性を明確にし、そのうえで後任に速やかにバトンタッチする。それが社長としての責任の取り方であると考え、これまで業績回復に向け取り組みを進めてきました。しかしながら、昨年秋にターンアラウンドの取り組みを発表以降、事業運営を行なっていく中で私に対する経営責任を問う声が、社外だけでなく弊社の従業員からも出てくるようになりました。
今の日産にとって、最優先事項は足下の状況から1日も早く脱却し、会社を成長軌道に戻すことです。そのためには従業員の力を結集し、一丸となって課題に取り組める環境を作ることが不可欠と考えています。しかしその従業員の一部から信任を得られなかったこと、そして今回取締役会からの要請があったことを踏まえると、新しい経営体制に移行し、1日も早く再スタートを切ることが会社にとって最善と、私自身も判断しました。
なお、ターンアラウンドの進捗状況については、2月の決算発表で申し上げたとおりですが、現在、さまざまな追加リスクへの対応と、中期視点での会社のあるべき姿、その実現のために必要な構造改革について、聖域を設けずに議論をしており、そこには新社長も含め、新体制のメンバーも参加しています。
また、そのあるべき姿を具現化し、企業価値を最大化するための戦略検討も進めています。多角的な視点から新たなパートナーシップの機会を模索しており、現在さまざまな選択肢の検討が始まっています。今後これを具体的なプランにまとめ上げ、速やかに実行していくことのためには、新体制のもとで進めていくことが適切ではないかと考えています。
この5年4か月を振り返ると、これまでの拡大路線からの転換、元会長の事件に伴う企業イメージの悪化と業績不振への対応など、日産固有の課題に加え、コロナ禍による社会の混乱、それに伴う事業への影響、自動車業界の急速な構造変化など、新たな課題にも次々と直面し、非常に難しい経営の舵取りが求められました。
事業の立て直しについては、2020年5月に「NISSAN NEXT」を発表し、2023年度までの4年間、事業基盤の強化に取り組みました。地政学的なリスクに伴う原材料費の高騰や半導体の供給問題、中国市場の急速な変化などさまざまな課題に直面した中で、残った課題はあるものの、一定の成果は出せたと思っています。
また、2021年11月には「NISSAN NEXT」の先、会社が進むべき方向性を示す羅針盤として、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を策定しました。これまで短期的な経営目標をベースにして事業運営をしてきた日産にとって、こうしたビジョンの策定は初の試みでした。
また、ルノーとの関係改善にも積極的に取り組みました。(ジャン・ドミニク・)スナール会長に加え、2020年7月にルノーのCEOに就任した(ルカ・)デメオ氏とは未来志向の議論を重ねながら、信頼関係を構築してきました。その結果が、2023年2月のリバランス実現に繋がったと感じています。実現には多くの課題が伴いました。1つひとつ諦めることなく真摯に交渉を重ね、互いに納得できる形で合意をすることができたことは、会社にとって大きな意義があったと感じています。
最後の1年は取引先との関係改善、ホンダさんとの戦略的パートナーシップの検討に加え、急速に悪化した足下の事業状況から脱却するため、ターンアラウンドの取り組みを進めてきました。こうした状況で、次の社長にバトンを渡すことになったことに対し、忸怩たる思いですが、新しい経営陣の下、従業員の力を最大限引き出し、日産を再び成長軌道に戻していってくれることを心から願っています。
新社長に就任されるエスピノーサさんは、私と同じ2003年に日産に入社し、2023年7月からはエグゼクティブコミュニティのメンバーとして、ともに経営課題に取り組み、私を支えてくれました。年齢も40代と若く、エネルギッシュで自他ともに認めるカーガイですので、今のこの難局を乗り越え、会社を未来へと力強く牽引してくれると期待しています。
最後になりますが、厳しい経営状況においても日産を応援し支えてくださっているお客さまと、全てのステークホルダーの皆さまに対し、改めて心から感謝申し上げます。私は2019年に社長に就任して以来、「日産はこんなものじゃない」と言い続けてきました。その思いは今も変わっていません。日産はこの先必ず復活できると確信しています。今後も何卒変わらぬご支援、ご声援を皆さまから頂戴できれば幸いです。
イヴァン・エスピノーサ氏
皆さまこんばんは。本日お時間いただきましてありがとうございます。正直申し上げて私はまだ任命されたばかりですので、今は多くは語ることはできません。このような困難な時期に取締役会が私を信頼し、会社を率いるよう要請していただけたことに心から感謝の意を表したいと思います。
私は日産とともに成長し、長年にわたり世界中でさまざまな役割を担ってまいりました。この間私はクルマへの愛情と自動車業界への情熱を深めてまいりました。そして日産に対する情熱を深めてきました。私は才能あふれる同僚から学び、さまざまな市場を経験する機会に恵まれ、何が日産の独自性と高い価値を実現しているかについて理解を深めてまいりました。
私は日産を再び輝かせるために取り組んできた内田さんの後を継ぐことになり、大変わくわくしております。私は「日産はこんなものではない」と心から信じております。そして、多くの先輩方の努力を土台とし、世界中の才能あふれるチームと緊密に協力しながら、この会社に安定性と成長を取り戻していきたいと考えております。
4月1日に就任した後、メディア関係者の皆さまとお会いできることを楽しみにしております。ご清聴ありがとうございました。