イベントレポート
【デトロイトショー 2019】電動化とスポーツは両立できる。日産の今後について常務執行役員 イワン・エスピノーザ氏に聞く
「GT-RやフェアレディZも進化させている」
2019年1月24日 16:54
- プレスデー:2019年1月14日~15日(現地時間)
- 一般公開:2019年1月19日~27日(現地時間)
1月27日(現地時間)まで開かれている「デトロイトショー 2019(North American International Auto Show 2019)」会場の一角で、日産自動車の常務執行役員 イワン・エスピノーザ氏に話を聞くことができた。同氏はグローバル商品戦略や商品企画など、日産ブランド全体を統括する立場にある人物。そこで、同ショーにおいて日産が世界初披露したEV(電気自動車)のコンセプトモデル「IMs」のことや、2019年ひいては将来的な日産の戦略についてうかがった。
その中では、多くの人が関心を抱いているであろう日産のスポーツモデルに関する話題も。同氏は電動化が十分にスポーツと両立できることや、既存モデルについても人員と開発費をかけてアクティブに進歩させ続けていることなどを話してくれた。詳しくは以下をお読みいただきたい。
GT-RやフェアレディZも進歩させ続けている
――まず、2019年のグローバル戦略と日本戦略において考えていることをお聞かせください。
エスピノーザ氏:総括的なビジョンとしては、数年前から日産が推し進めている「ニッサンインテリジェトモビリティ」のビジョンをさらに加速させていくことが大きいです。ニッサンインテリジェントモビリティには、「インテリジェントパワー」「インテリジェントドライビング」「インテリジェントインテグレーション」という3本の柱があります。
「インテリジェントパワー」については、さらなる電化を推し進めていきます。「インテリジェントドライビング」については、いかにユーザーに不安を感じさせることなくサポートしていくかを考えつつ、プロパイロットのさらなる進化を目指していきます。「インテリジェントインテグレーション」に関しては、より多様な電動化車両の生産と販促を強化し、多方面でお客さまに訴えかけていきます。この3本の柱をさらに加速させていきたいと考えています。
日本市場については、むろん日産は日本のメーカーであり、大切にしていることには違いありませんが、売り上げよりも以前に、重要度として最も重視している市場です。なぜなら、新しいテクノロジーに対してお客さまがどう反応するのかを敏感に感じ取ることができるからです。
例えば「e-POWER」は日本で最初に導入したもので、ご存知のとおり最初に「ノート」、次いで「セレナ」にも搭載したところ非常に好評で、よい手応えをつかむことができた。おかげで自信を持って今後これを進化させていけると思っています。
その前の「プロパイロット」も日本で最初に導入し、お客さまの反応からたくさんの得られるものがありました。また、新たに開発した「e+(イープラス)」も、日本でリーフに導入したばかりで、これもまさに日本市場でのお客さまの反応を見ているところです。日本市場でどんな反応を得られるかが非常に大事だと思っています。
――今回のIMsはどういう位置付けのコンセプトモデルでしょうか?
エスピノーザ氏:車名の「IM」は、もちろん“インテリジェントモビリティ”を指します。「IMx」(2017年の東京モータショーで披露されたコンセプトモデル)がSUVだったのに対し、今回のIMsはクロスオーバー。これが日産の考えるセダンの変革したカタチであり、そのビジョンのもとに開発したものとなります。スタイルはクロスオーバーになっていますが、将来的にセダンはこのように変わっていくと考えています。
――インテリジェントモビリティにおいて、最近、日産からあまりスポーツカーの情報の聞こえてこない気もしますが?
エスピノーザ氏:結論から述べると、日産というブランドにとってスポーツはルーツでありDNAでもあるので、もちろん重視しており、忘れてはいません。電動化を進めるといっても、決して自動車というものが退屈になるわけではなく、十分にスポーツと両立できると考えています。
その顕著な例として、CESで披露した新型EVレーシングカー「リーフ NISMO RC」が挙げられます。これはNISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)と開発した、リーフの中でもスポーツの部分を際立たせたモデルになりますが、こうしたクルマをこれからも出していくつもりです。
今回のIMsも、スポーティなテイストを狙っています。むろん電動化や自動運転も念頭に置いて開発しており、スポーティさと両面を持ち合わせています。これがセダンを含め、これからの自動車におけるデザインの主流になっていくと予測しています。マニュアルモードで運転する際には、360kWのパワーと800Nmのトルクを発生する2基のモーターにより前輪と後輪を駆動し、非常にスポーティなドライビングが可能となっています。コクピットはドライバーを中心としたレイアウトとなります。
もう1つ、日産として参戦しているフォーミュラEで得たノウハウをロードカーの開発にも反映させていきたいという狙いもあります。参戦するからには勝ちたいという思いはもちろん、モータースポーツ参戦の知見は、今後よりスポーティで運転の楽しいクルマを作っていくうえで役立つと考えています。
――「GT-R」や「フェアレディZ」など既存モデルについてはいかがでしょう?
エスピノーザ氏:特定のモデルに関する詳細はお伝えできませんが、それらの車種に関しても引き続き人員と開発費をかけて、ずっとアクティブに進歩させ続けています。
GT-Rに関しても、新しいモデルを追加したり、パワーパッケージなど、必ず何か新しいテクノロジーを入れたり、毎年のようにアップデートし、新型車でなくても少しずつだが常に進化を遂げています。進化し続けるというのはお客さまにとっても重要なことに違いありません。
フェアレディZについても、もちろん日産DNAの主幹をなすモデルであり、ひいてはパフォーマンスが命のクルマでもあり、しっかり進化させていくことは日産としても大事だと考えています。将来に向けての計画は着実に進んでいます。
――今回のショーでは、トヨタ自動車とBMWのコラボにより生まれた「スープラ」が話題となっています。日産の場合もルノーやアルピーヌとの関係がありますが、アライアンスというものをどのように考えていらっしゃいますか?
エスピノーザ氏:アライアンスというアイデアそのものは、それぞれのブランドが取り組んできて、1つのブランドではなし得なかったテクノロジーをシェアできるという大きな利点があります。それにより投資を抑えることもできます。
ただし、同時にブランドのコアをなすDNAを直接的に体現するモデルであればなおのこと、シェアするものとしないものの区別も重要だと思います。ある部分においては、共同開発によりブランドの尊厳が損なわれる危険性も潜んでいると考えられるからです。アライアンスがあるからといって、すべてをシェアして、同じような形にすべきではありません。それではアイデンティティが損なわれてしまいます。シェアすることとしないことの棲み分けもまた重要で、ユニークであることは必要だと考えます。
――CESで発表した、「Invisible-to-Visible(I2V)」のようなプラットフォームを、今後どのように活用していく考えでしょうか?
エスピノーザ氏:「I2V」は、コンシューマーのドライビングエクスペリエンスをより向上させるために、日産として何ができるかを考えたおおまかなビジョンです。現段階ではあくまでコンセプトであり、詳細はこれから考えていきますが、実際にそこに到達するにはさまざまなハードルがたくさんあります。むろん、膨大な量のデータが必要と認識していますが、そのお客さまから集めた膨大なデータをどうするのかや、セキュリティやプライバシーの問題もあれば、データをプロセスするためのデータスピードのインフラも必要です。それらはもちろん日産だけではなし得ないことです。
コネクティビティに関して言うと、日産としては近い将来、日産が生産し販売する全車をつなげることを最重要課題として目標に掲げています。コネクテッドの領域によって、最適なパートナーを見つけて提携するのか、日産が独自でやるのかは、都度判断していくことになります。
モビリティのコンセプトにはいろいろな要素が関連しており、たとえばEVについても、パワーグリッドとどのように連携していくのか、社会と融合した1つの移動手段として、どのようにより効率のよい、エネルギーを消費しないクルマを生産していくのか。そしてそれをお客さまに使っていただくのかなど、さまざまな要素が挙げられますが、日産としてはお客さまが求めるものを商品として提供していきたいと思っています。