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日産の新EVレーシングカー「リーフ NISMO RC」に乗ってみた

将来のEVレースや“レースカーのシェアリング”に向けて開発

2018年12月1日 開催

11月30日に世界初公開した新型EVレーシングカー「リーフ NISMO RC」

 日産自動車とNISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)は12月1日、富士スピードウェイにおいて11月30日に世界初公開した新型EV(電気自動車)レーシングカー「リーフ NISMO RC」(以下、RC_02)の説明会を実施した。

 今回のRC_02説明会では、NISMO 代表取締役 兼 最高執行責任者(COO)の松村基宏氏が「主にドライビングと動力性能を高めたいということで設計・開発しました。NISMOのレーシングテクノロジーとEVのテクノロジーを合体して約8か月ほどかけて開発を行なっています」と述べるなど、RC_02の概要について解説。

説明会にはNISMOの開発陣や開発ドライバーを務めた松田次生選手も出席
ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル株式会社 代表取締役社長 兼 最高経営責任者(CEO)の片桐隆夫氏
ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル株式会社 代表取締役 兼 最高執行責任者(COO)の松村基宏氏
開発ドライバーを務めた松田次生選手

 2代目「リーフ」をベースにする、リーフ NISMO RCとして2代目にあたる今回のモデルでは、初代リーフ NISMO RC(以下、RC_01)が主要なパワートレーンをキャビン後方にレイアウトして後輪を駆動する2WD(MR)を採用していたところ、シャシーの両端に2つの電動モーターをレイアウトするとともに、新開発の4輪駆動システムを搭載。各120kWのモーターを2基搭載することで最高出力は240kW、最大トルクは640Nmとなり、RC_01の100kW/280Nmから大幅にパワーアップ。また、バッテリーパックは先代モデルと同様に車体中央に搭載するとともに、電動モーターとインバーターを前輪・後輪上の最適な位置に配置することで、シャシーの重量バランスの最適化も図られている。

 これによりRC_01の0-100km/h加速6.9秒、最高速150km/hを大幅に上まわる、0-100km/h加速3.4秒、最高速220km/hを実現。松田次生選手のドライブによる袖ヶ浦フォレストレースウェイのラップタイムについては、RC_01のラップタイムを5秒以上下まわる1分10秒34をマーク(RC_02はミシュランスポーツタイヤ、RC_01はブリヂストンスポーツタイヤ)した。ちなみにRC_02にスリックタイヤを履かせたところ、1分8秒18を記録したとのことで、これは袖ヶ浦フォレストレースウェイのコースレコードになるという。

 また、バッテリー容量がRC_01比で約2.5倍になったことから車両重量は300kg増加したほか、重量配分はホイールベースが伸びたことことなどによってフロント43%:リア57%を実現。車体にはカーボン補強したロールケージ付きのカーボンモノコックを用い、前後にカーボンサブフレームが付く構造で、サブフレームはRC_01ではスチール製(35kg)だったところ、RC_02では26kgと、約25%の軽量化に成功したという。車両重量としては1220kgを実現したとのこと。

12月2日のNISMOフェスティバルで日本初のデモンストレーション走行を行なった日産フォーミュラEマシンとRC_02
RC_02のボディサイズは4546×1942×1212mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2750mm。RC_01と比べて全長が100mm、ホイールベースが150mm長くなった。スリーピース構造の車体には、脱着可能なフロント・リアセクション、固定式のウィンドウ、LEDヘッドライト&テールランプ、調整可能なリアウィングを搭載する
RC_02のカウルを外したところ。前後ともプッシュロッド式ダブルウィッシュボーンサスペンションを採用
RC_02のインテリア

 概要については上記の通りだが、RC_01も含めてそもそもこのリーフ NISMO RCを日産とNISMOが開発する理由はどこにあるのか松村氏に聞いたところ、これには大きく2つの理由があり、1つはEVカテゴリーのレースがまだ少なく、将来的にEVレースができ始めたときにドライバーに“操る楽しさ”を体感できる車両をタイムロスなく提供したいということ。

 そしてもう1つは、将来的に“レースカーのシェアリング”が発展する可能性があるためで、車両の保管やメンテナンスといったサービスをNISMOが行ない、複数のドライバーでサーキット走行を楽しむ。そのような展開の可能性も視野に入れ、リーフ NISMO RCの開発が進められたとのことだ。

プレゼンテーション資料
RC_02とRC_01の主要諸元比較
RC_02RC_01
全長×全幅×全高4546×1942×1212mm4446×1942×1212mm
ホイールベース2750mm2600mm
トレッド(前/後)1723/1714mm1750/1700mm
タイヤサイズ(前/後)235/40 ZR18225/40 ZR18
車両重量1220kg920kg
重量配分(フロント)43%41%
モーターEM57×2EM57×1
バッテリーNISSANNISSAN 24kWh
最高出力240kW100kW
最大トルク640Nm280Nm
0-100km/h加速3.4秒6.9秒
最高速220km/h150km/h
袖ヶ浦フォレストレースウェイのラップタイム1分10秒341分15秒86

ドリフトコースでRC_02に試乗

 説明会のあと、短時間ではあるがRC_02に試乗できる機会も設けられ、記者も実際にステアリングを握ってみた。コースはドリフトコースをパイロンで仕切り、スラロームやちょっとしたストレートが楽しめるレイアウトだ。

 ドアを開け、幅のあるカーボンモノコックをまたいでフルバケットシートに収まり、想像以上に車体が大きいなあと感じながらステアリングに備わるスイッチを「N(ニュートラル)」から「D(ドライブ)」にしていざスタート。

 出力特性を1~4の4段階で変更できるうち、一番マイルドな出力特性という「1」で走ったが、出だしから市販車のリーフとは訳が違うレーシングギヤボックス(ギヤレシオは6.028)の音が車内に響き、“いかにもレーシングカーに乗っています!”という雰囲気がただものじゃない。レーシングカーといってもEVなんだから無音なんだろうな、という乗る前の想像とはまったく違った。

 短いストレートでアクセルを踏むと、EVらしくリニアに加速するのがとにかく楽しい! コーナーはどのくらいのスピードで進入すればよいのかまったく分からなかったので恐る恐る行き、またストレートでちょっとだけ踏む。そんなことを2周繰り返してあっという間に試乗は終了。

 素人の筆者ではRC_02の性能を発揮させることはまったくできなかったわけだが、一方でEVのレーシングカーという新ジャンルが近い将来確立されるのではないかというワクワク感、レースカーのシェアリングという新しいサービスが提供されるようになれば自分もRC_02を所有できるかも? という期待感を抱いた。RC_02の今後の展開に期待したい。

松田次生選手によるリーフ NISMO RCデモ走行