ニュース

ホンダ、従業員のアイデアや夢を実現する新事業創出プログラム「イグニッション」第3弾、海を可視化する「ウミエル」始動

2025年3月26日 発表
UMIAILE ASV(プロトタイプ)

 本田技研工業は3月26日、自社の新事業創出プログラム「IGNITION(イグニッション)」発のスタートアップとして「株式会社UMIAILE(ウミエル)」の設立を発表した。

 ウミエルは「“海の見える化”を通じて平和で豊かな地球を守る」ことを目指し、高速で水上を自律航行し海洋情報を収集する小型無人ボート「UMIAILE ASV(Autonomous Surface Vehicle:自律航行型無人船)」を販売するとともに、UMIAILE ASVを用いて海象や海洋生態系、海底地殻変動をはじめとする海洋地質などの海洋データを収集し、分析・提供する事業を2025年4月にスタートするという。

テスト中の小型無人ボート「UMIAILE ASV」開発船体

 UMIAILE ASVは、水中翼を用いた独自の船体姿勢制御技術により、高速・高効率な航行を実現。日本近海のような潮の流れが速い海域でも安定して海洋観測が可能なのが特徴。動力用パワーユニットには電動モーターを搭載しており、船体上面のソーラーパネルで発電することで、長時間安定した観測を行なえる。また、GNSS(Global Navigation Satellite System:衛星測位システム)を活用し、海上でも自己位置を正確に測位しながら、事前に設定したルートの自律航行が可能なほか、多数のUMIAILE ASVを観測エリア一帯に配置することで、高頻度・高密度の海洋観測もできる。

テスト中の小型無人ボート「UMIAILE ASV」開発船体

 具体的には、地震が多発する日本近海の海底地殻変動を高頻度に観測することで、地震のメカニズム解明および今後想定される南海トラフ巨大地震などに対する防災・減災に貢献するなど、目的に合わせてUMIAILE ASVにセンサー・カメラ・ソナーなどの多様な観測機器を自在に組み合わせて搭載することで、幅広い観測ニーズに対応できる。

UMIAILE ASV通信イメージ
活用事例:海底地殻変動観測

 ウミエルは、防災・減災貢献に加え、海洋生態系の調査やブルーカーボンの定量化など、平和で豊かな地球の実現に向けて、さらなる活用範囲の拡大を目指すとしている。

 UMIAILE 代表取締役CEOの板井亮佑氏は、「自身の技術やアイデアで地球を取り巻く社会課題を解決したいと思い、UMIAILEを起業しました。ホンダにおける電動モビリティやロボットの開発経験、自発研究テーマとして取り組んでいた船体姿勢制御技術から着想し、UMIAILE ASVを開発しました。海洋観測に課題を抱えるお客さまに革新的なソリューションを提供することで、将来にわたって人々が安心して地球に住み続けられるよう、UMIAILEは『海の見える化』に挑戦し続けます」とコメントしている。

UMIAILE ASVの開発と事業の提案をしたUMIAILE 代表取締役CEO 板井亮佑氏

 本田技研工業 取締役 代表執行役副社長 コーポレートベンチャリング審議会議長の青山真二氏は、「ホンダは『自らの技術で人の役に立ちたい』という創業者の強い思いから始まり、今でもそのチャレンジ精神は従業員一人ひとりに脈々と息づいています。板井さんの『技術とアイデアで地球を取り巻く課題を解決したい』という夢の実現を、ホンダはIGNITIONを通じて支援します。これからもホンダは独創的なアイデア・技術・デザインを大切に、オープンイノベーションを加速し、新しい価値の創造や社会課題の解決に取り組んでいきます」と述べている。

【IGNITION】小型無人ボート「UMIAILE ASV」(2分7秒)