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ヤマハ、4ローターエンジンのような「ハイブリッド航空機用4連結電動モーター」を人とくるまのテクノロジー展2025横浜に出展

2025年5月21日~23日 開催
入場無料(事前来場登録制)
ヤマハが開発中の高出力な「ハイブリッド航空機用4連結電動モーター」

 ヤマハは、パシフィコ横浜で開催されている(会期:5月21日~23日)「人とくるまのテクノロジー展2025 YOKOHAMA」に、技術ビジョンを体現する取り組み例として「ハイブリッド航空機用4連結電動モーター」、汎用性の高い自動車用電動駆動ユニット「e-Axle(イー・アクスル)」、二輪車の走行をさらに楽しく広げる電子制御CVT(無段変速機)「YECVT」、および電子制御シフト機構「Y-AMT」を出展している。

 まるで4ローターエンジンのような見た目のハイブリッド航空機用4連結電動モーターは、時代の要請に応えつつ、五感を目覚めさせる新たなモビリティ体験の実現を目指す製品および技術ブランド「αlive EE(アライブ エレクトリックエンジン)」の1つ。

 さまざまな業界の電動化を可能にする連結式モーターで、ヤマハがこれまで内燃機関で培ってきた冷却技術を応用した油冷冷却システムを採用することで、単基で最高出力500kW(680PS)を発生でき、展示されている4連結仕様は最高出力2MW(2720PS)、最高回転数10000rpm、電圧1000Vを誇る。

ハイブリッド航空機用4連結電動モーター。その名の通り4つの電動モーターを連結させていて、まるで4ローターエンジンのような見た目が印象的

 このハイパワーモーターは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)や国内企業数社が一緒に開発を進めている、ジャンボジェット機の胴体尾部に推進用ファンを装着することでBLI(Boundary Layer Ingestion:境界層吸い込み)効果を用いた推進装置による効率向上を目標にした「WAT(Wake Adaptive Thruster:胴体後流適応型推進器)コンセプト」用技術の1つ。

 旅客機の羽に搭載されるジェットエンジンが後方へ排出する排ガスを利用して発電し、その電気で4連結電動モーター×2基を稼働することで、大きな推進力を発生させるのが目的。バッテリを積んでしまうと重量が増加してしまうため、発電するのと同時に推進力へと転換させるシステムを想定している。

2023年5月にJAXAにて「MEGAWATTプリプロジェクトチーム」が発足している

 これにより高コストな航空燃料の使用量を削減できるだけでなく、CO2排出量削減にも貢献でき、従来技術と次世代技術を活用して、2045年ごろまでに燃費削減45%を目標に掲げている。

 ただし、WAT(Wake Adaptive Thruster:胴体後流適応型推進器)コンセプトを実現するには、「尾部ファン形状」と「電力供給」の課題があるといい、尾部ファン形状をJAXAが、電力供給はジェットエンジンの後方に搭載する発電機をIHIが開発を推進中。また、住友精密工業がJAXAと共に電動機用冷却器の開発に参画。そして2MW級の推進力を発生するための電動機の開発をヤマハが担っている。

課題の1つが「尾部ファン形状」
もう1つの課題が「電力供給」
2MW級の推進力を発生するための電動機の開発をヤマハが担当
2023年3月時点での全機システムの概念設計

 また、ヤマハでは旅客機だけでなく、より大きな推力が必要となる大型船への応用も想定していて、最高出力500kWの単基をベースにすることで、直列4基の2MWのほかにも、2MWを並列に4つつないでプロペラを回したり、直列3基で1.5MW、直列2基で1MWなど、フレキシブルにさまざまな大きさのモビリティへも転用できることを想定しているという。

大型船への利用も想定している

 ヤマハブースではそのほかにも、汎用性の高い自動車用電動駆動ユニット「e-Axle(イー・アクスル)」、二輪車の走行をさらに楽しく広げる電子制御CVT(無段変速機)「YECVT」、および電子制御シフト機構「Y-AMT」を出展している。

自動車用電動駆動ユニット「e-Axle」は、ハイパーカーに要求される高出力、軽量、コンパクトを実現した3in1構造が特徴。最高出力200kW(272PS)~450kW(611PS)、最高回転数15000rpm、電圧350V~800Vを誇る。レーシングチーム「ABT」のフォーミュラEマシンGEN3 Evoには、最高出力350kW(476PS)の同システムを供給している
YECVTは、主に小型スクータへ搭載する電子制御式無段変速機構(CVT)で、ヤマハが日常使いの利便性を損なうことなく、走る楽しさを追求することを狙いに開発、実用化した製品
電子制御シフト機構「Y-AMT」は、従来のMT車のギヤチェンジで行なう、左手によるクラッチ操作と、左足によるシフト操作をアクチュエーターが担うことで、ギヤチェンジを自動化したシステム
ヤマハブースはノース館(N51)