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「自動車会議所で動かしていきたいのは人々の心」、豊田章男氏が会長就任で語った「クルマをニッポンの文化に!」

日本自動車会議所の会長に就任した豊田章男氏

 日本自動車会議所の定時総会および理事会が6月11日に開催され、トヨタ自動車 代表取締役会長 豊田章男氏が会長に就任した。豊田章男会長は、これまで自動車メーカーの業界団体である自工会(日本自動車工業会)会長を2度務めていたほか、現在は参加型モータースポーツであるスーパー耐久シリーズのオーガナイザーであるSTMO(スーパー耐久未来機構)の理事長も務めている。

 豊田章男氏は業界団体のトップとしてはもちろん、モリゾウ選手としても知られ、ラリーやサーキットにおいてもクルマの楽しさを発信している。その豊田章男氏が、自動車をはじめとした約160の業界団体が加盟する日本自動車会議所のトップとなって、どのような情報発信をするのかに注目が集まっていた。

自工会の会長でもあった豊田章男氏は、自動車工業会と自動車会議所は何が違うの?というテーマでもスピーチ

 日本自動車会議所の前身母体である自動車協議会は、民主主義的な自動車工業による国家再建を目指し、戦後間もない1945年(昭和20年)11月に豊田喜一郎氏を会長として設立。自動車製造や部品製造などの生産部門、全日本トラック協会などの利用部門、自動車販売協会などの販売・整備部門、損害保険協会などの関連部門など、自動車関連就業人口558万人が会員となっている総合業界団体。自動車産業の健全な発展のため、会員関係企業・団体と連携した活動を実施しているため、ある意味で自工会よりも活動範囲は広いものとなる。

 その最初のあいさつで豊田章男会長が打ち出したのは、「クルマをニッポンの文化に!」という合い言葉。この合い言葉とともに、「自動車会議所で動かしていきたいのは、人々の心」だという。もちろん業界団体である以上、団体の利益追求なども行なっていくと思われるが、豊田章男会長は何よりもまず多くの人にクルマの話をしてもらい、「クルマが我が国の文化だ」と語って欲しいという。

 具体的な活動はこれから表に出てくると思われるが、豊田章男会長が最初のあいさつで語ったクルマへの思いを全文掲載する。

豊田章男 日本自動車会議所 新会長あいさつ

 豊田でございます。本日より日本自動車会議所の会長を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 早速ですが先ほど行なわれました総会で、会員のみなさまにお話しました私の思う日本自動車会議所の合い言葉を、この場でお話しさせていただければと思います。

 こちらです、「クルマをニッポンの文化に!」。自動車会議所(会長就任の)のお話をいただき、発足当時の設立趣意書を振り返ってまいりました。昭和21年、79年前に書かれた趣意書の冒頭がこちらです。

「国民の生活維持と文化向上に車は不可欠」とあります。

 おかげさまで今、クルマは日本の人流・物流に欠かせないものとして、お役に立てているものと思っております。しかしながら、文化としてのクルマは日本のお役に立てているでしょうか? 少し不安になってしまいました。

 海外に行ったとき、「あなたの国はどんなところですか?」とよく聞かれます。みなさんだったら日本の何を自慢されるでしょうか?

 春夏秋冬、和食、伝統芸能、工芸品、治安のよさ。日本の自慢はいろいろあると思います。最近だとアニメもあるとも思われます。

 流行りのAIにもこの種の質問をしてみました。やはり文化・伝統・観光・自然が一番最初に出てまいります。技術産業はその次、そこに自動車産業もやっと出てまいります。

 同じようにドイツの自慢も聞いてみました。一番の自慢は経済と技術力。その代表選手が自動車という結果です。

 AIはネット上にあるすべての情報を読み込んでいるとうかがっております。ですので、おそらく本当にドイツの方に聞いても、こうやってお答えされるのではないかと思います。そんなドイツをうらやましく思いました。

 日本もドイツのように「クルマが我が国の文化だ」と、一番に答える国であったら、我々はどんなにうれしいだろうと感じます。

 ほかの誰かが「国の自慢なんです」と、クルマのことを話してくれてたら、自動車に携わる我々は、自分の仕事をもっと誇らしく思えるのではないでしょうか。

「あなたの国を自慢してください」、と聞かれた多くの日本人が、「日本の自慢はなんといってもクルマです」と答えるようにしていきたいと思います。さらに言えば、AIに聞いてもそう答えてもらえるぐらいにしていければと思っております。

「クルマをニッポンの文化に!」、この言葉を新たな合言葉として、我々日本自動車会議所は、これからさまざまな活動をしていければと考えております。

 みなさまよろしくお願いいたします。

 最後にもう1つ、ここにいらっしゃるみなさんが豊田章男に聞かなきゃと思っていることに、先にお答えさせていただきます。

 自工会(日本自動車工業会)との違いを一言で言うと、動かしたい相手です。

 自工会のときは、私は自動車産業が国から頼られる存在になっていきたいと言っておりました。動かしたい相手は国であり、政府だったと思います。

 それに対して今回、自動車会議所で動かしていきたいのは人々の心だと考えております。

 クルマが自慢したくなる文化になっていくためには、政府ではなく、日本のみなさまの心を動かさないといけないと思っております。

 それが私が思っている自工会と自動車会議所の大きな違いです。

 違いはどんな団体が会員に名を連ねているかにも表われていると思います。

 自工会には製造の会社が集まっておりますが、会議所には販売、整備、運行、そして保険、エネルギーといった自動車に関わるほとんどすべての業界団体・企業が集まり、今年からはユーザー団体のJAF(日本自動車連盟)も加わりました。

 そこにはあらゆる現場があり、クルマに関わるさまざまな仕事をしております。そのみんながクルマを日本の文化にするため、いろいろなアクションを始められたら、日本の経済や国の力にもっと役に立てるようになると思います。

 日本自動車会議所、多くの方にとっては聞き慣れない名前の団体だと思いますが、まずは会議所という名前とスローガンだけでも、本日覚えていただければと思います。よろしくお願い致します。ありがとうございました。