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ベントレー、バッテリEVのコンセプトカー「EXP15」公開 未来のデザインビジョンを具現化

2025年7月8日(現地時間)発表
ベントレーが発表したコンセプトカー「EXP15」

 英ベントレーモーターズは7月8日(現地時間)、最新のラグジュアリービジョンコンセプト「EXP15」を発表した。

 EXP15は、1930年代当時のベントレー会長だったウルフ・バーナート氏が、南仏カンヌを出発した高級列車「ル・トラン・ブルー」よりも先にロンドンに到着したというベントレーの「スピード シックス ガーニー ナッティング スポーツマン クーペ(Speed Six Gurney Nutting Sportsman coupe)」をオマージュしたモデル。ブランド初となるBEV(バッテリ電動自動車)へと向かうデザインの進化を示す重要なステップになるという。

EXP15とスピード シックス ガーニー ナッティング スポーツマン クーペ

 またEXP15はコンセプトカーのため、2026年に登場予定のベントレー初の小型BEV量産モデルとは異なるが、一部のデザインがさりげなくEXP15のエクステリアに取り入れられているという。また、インテリアも将来の量産モデルに活かせるような先進的なデジタル技術やユーザーエクスペリエンスのアイデアが集約されいている。

クラシックとモダンを融合させ、爽快かつエレガントなエクステリアデザイン

 エクステリアは、液体金属のような質感を持ち、よく見ると金白色の繊細なハイライトが浮かび上がる「パラス ゴールド」と呼ばれるサテン仕上げの塗装が施されている。インスピレーションの源となったのは、歴代のベントレー「スピード シックス」に採用されていたニッケル製グリルやドアハンドルで、伝統的なモチーフを現代的に昇華させつつ、超極薄のアルミニウム顔料で仕上げている。また、今後販売するモデルに与える5つのエクステリアデザインの“プロポーション哲学”を具現化したという。

アップライトエレガンス

 ベントレーのフロントデザインは、「美しくまっすぐに立つ」というデザイン哲学に基づいていて、ただの直線ではなく、わずかに弧を描くような繊細なラインで構成し、品格と堂々とした佇まいを演出。あたかも歩き出したサラブレッドが誇り高く静止した瞬間のように、力強さと静けさが共存する緊張感のある美しさが、ベントレーならではの存在感を際立たせているという。

コンセプトカー「EXP15」

 フロントには、車両側面に向かって配されたスリムな4本のストリップライトが組み込まれ、上部2本は垂直に、下部2本は内側に向かって曲げられ、ホイールアーチの内側に沿って配置することで、車体の輪郭をシャープに際立たせると同時に大型フロントグリルの輪郭を縁取っている。

両サイドにはスリムなストリップライトが組み込まれる

アイコニック グリル

 アイコニック グリルは、EV時代に移行しつつある今も、ベントレーの“象徴的な顔”として継承されるべき重要なデザイン要素で、中央に縦のラインを配したグリルは、かつては内燃エンジンに空気を取り込むための機能パーツとして設計されていたが、現在はその役割を超えて、ブランドの美意識と個性を体現する表現の場へと進化させている。

ウィングドBエンブレムのすぐ下から垂直に伸びる中央のライトスパインがグリルを縦に2分割し、ベントレーを象徴するダイヤモンドキルティングのモチーフが横方向に再構成され、LEDライトによって現代的かつ立体的に浮かび上がるようデザインされている

エンドレス ボンネットライン

 エンドレス ボンネットラインは、かつて大型の内燃エンジンを搭載するために設計されていたクラシック ベントレーのプロポーションを継承するデザイン。サイドウィンドウの下から始まるラインが途切れることなく車体後部のピラーへと滑らかに伸びていく造形は、1930年の「ガーニー ナッティング クーペ」を彷彿させるもので、伝統と美学を融合させたもの。電動化によりエンジンルームのスペース的な制約が解かれたことで、EXP15はこの空間を2つのエレガントな収納スペースとして再構築。ピアノ式ヒンジを採用したエンジンカバーの造形は、過去の名車へのモダンなオマージュという。

サイドウィンドウの下から始まるラインが途切れることなく車体後部のピラーへと滑らかに伸びていく
フロントホイールアーチ直後に設けられた2つの大型通気口が空気の流れを整え、車体のボリューム感を視覚的に分割。空力性能だけでなく、グラフィカルなアクセントとしての効果も備えている

レスティング ビースト

 レスティング ビーストは、EXP15のサイドビューやトップビューに現れる力強さを表現。ベントレーの象徴的なスタンスは、リア・ホーンチ(後輪上部の筋肉のように張り出した形状)に最もよく表れていて、車体の全体バランスも「リラックスした水平姿勢」を重視。前のめりにも後ろにも偏らない、安定感ある立ち姿を追求している。プロポーションにも独自のこだわりがあり、エクステリア・デザイン部門責任者 ドメン・ルシガイ氏は、「キャビン:ボディ=1:2」の比率、キャビンが上部の3分の1、ボディが下部の3分の2を占める構成が理想であるという。

象徴的なリア・ホーンチ(後輪上部の筋肉のように張り出した形状)

プレスティージャス シールド

 最後の原則「プレスティージャス シールド」は、EXP15のリアエンドにおける存在感に集約。広くクリーンな面は、かつてのベントレー車においてラゲッジスペースとしてボディから独立していた部分に着想を得たという。EXP15では、この面がリアゲートに統合され、新たにデザインされたウィングドBエンブレムが中央にあしらわれている。周囲には精緻なダイヤモンドパターンのテールランプが配され、格式と先進性を融合したビジュアルに仕上がっている。

細く引き締められたライトが、広くクリーンなプレスティージャス シールド面を縁取るように配置され、空力的な効果を発揮すると同時に、ダイヤモンドパターンの緻密な立体表現と奥行き感を演出している
ルーフ後端から展開する2つのアクティブスポイラーと、車体下部のアクティブエアロディフューザーも備えていて、走行状況に応じて自動的に最適な空気の流れを制御するという

 上記の5つのプロポーション哲学に忠実に従いながら、ベントレーの現代的な造形美の進化を示す新たな方向性を表現するため、表面処理は、単なる金属加工を超えた彫刻的表現とも言えるもので、見る者に強烈な存在感を与える「動の美」を体現。デザインディレクターのロビン・ペイジ氏とデザインチームは、特に重要な3つのデザイン特徴を定義したという。

モノリシック プレゼンス

 車両全体が、まるで1枚の岩から削り出されたかのような圧倒的な存在感を放つように、ディテールごとに分断されるのではなく、すべての要素が一体となって統一されたビジュアルを形成し、モダンかつ堂々とした印象に造形。

マスキュラー フォーム

 ボディは張りと緊張感があり、潜在的なエネルギーをたたえた特徴的な造形を採用。鍛え抜かれたアスリートの身体のように力強く、視覚的に「動き出す前の瞬間」を想起させるダイナミズムを付与した。

カーヴド プレシジョン

 重量感と軽快さの絶妙なバランスを実現するのが“彫刻的な精緻さ”で、面の構成やラインは明確かつ洗練で、重々しさを感じさせずに、クラフツマンシップと現代的なエレガンスを両立させている。

EXP15のデザインスケッチ

自然素材と先進テクノロジーが融合する、新たなインテリア原則

EXP15のインテリア

 キャビン設計は、1930年の「スピードシックス ガーニー ナッティング スポーツマン クーペ」の車内にも影響を受けていて、座席数や機能といった要素は、具体的なレイアウトや形状をそのまま採用したのではなく、そこに込められた発想やコンセプトを取り入れた。VR(バーチャルリアリティ)技術を活用したデザイン開発のなかで、過去と未来をつなぐ4つのテーマを創出したという。

ウィング ジェスチャー

 ベントレーのキャビンで長年親しまれているウィング ジェスチャーダッシュボードは、羽を広げたベントレーのエンブレムをモチーフとし、空間に広がりと優雅さを付与している。

羽を広げたベントレーのエンブレムをモチーフとした「ウィング ジェスチャーダッシュボード」
ウィング ジェスチャーダッシュボード

ボールド グラヴィタス

 ラグジュアリー素材を惜しみなく広い面積で使用することで、触れた瞬間に“本物”を感じさせる演出。素材の質感がそのままブランドの重厚さを物語っている。

ラグジュアリー素材を惜しみなく広い面積で使用

コクーニング ヘイブン

 乗る人を優しく包み込むような空間づくりとして、後席には両側から背面を覆うように張り出すキャノピー(天蓋)が備えられ、プライバシーを保ちながら上質な安心感を両立。

シートはキャノピーも一体型となっていて一緒に移動する構造

アイコニック ディテール

 エアベントや刻み加工のスイッチギア、ダイヤモンドキルティングのシートなど、空間に品格をもたらす伝統のディテールなど、細部へのこだわりでベントレーらしさを表現している。

細部までこだりぬいたインテリア

 室内は3シートレイアウトを採用。パノラミックルーフの一部が上方向に開く構造で、より滑らかでラグジュアリーな乗降を可能としたほか、乗員がスムーズに降りられるように助手席は45度回転する設計になっている。

パノラミックルーフは一部が上方向に開く構造で、よりゆったりと乗降できる
助手席は45度回転する設計

 また助手席は、乗員の気分やニーズに応じて複数のポジションへ移動可能。例えば「コ パイロットモード」では運転席の隣に配置、「スタンダード設定」では後部座席に、「リラックスモード」では背もたれがリクライニングしてよりゆったりと座れる。この「スタンダード設定」「リラックスモード」では、広大な足下スペースが生まれ、床下収納システムによってフットレストが床へ格納され、ペットや手荷物用の収納スペースが出現するギミックも搭載。トランクを開けることなく車内からアクセスでき、荷物をしっかり固定できるバンドなども備えている。

助手席の位置はペットや手荷物用の収納スペースが出現する

 さらに、リアハッチを開けるとトランク内には2つのコンパクトなシートが展開され、周囲を照らす雰囲気のあるランプや、冷たい飲み物を収納できる冷蔵庫も完備。冷蔵庫は後部座席からスライドさせて移動でき、快適で実用的なテールゲートパーティー空間へと生まれ変わる。

トランクには2つのコンパクトなシートが備わっていて座ってくつろげる
後席中央部分には冷蔵庫も完備していてトランクへとスライド移動できる構造
ランタンのように灯してくれる照明も完備

 EXP15は伝統的な素材に加え、金属メッシュをアクリルで封入した「アクリル クチュール」という革新的な新素材も採用。素材は照明と組み合わせることでダッシュボードに鮮やかな立体感(3D効果)を生み出してくれる。

金属メッシュをアクリルで封入した「アクリル クチュール」という新素材

 さらに、ベントレーを象徴するキルティング模様が施されたドアパネルなどの内装部には、カットされた突き板の裏側にバックライトを仕込み、光によって浮かび上がる未来的な演出を可能にしている。

ドアパネルなどの内装部にはバックライトが仕込まれている

 そのほかにも、物理的な素材とデジタル機能を状況に応じて切り替えたり、自然に融合させたりすることを目指した新たなコンセプト「マジカル フュージョン」という発想を採用。これまでは、必要なときにはインフォテインメント画面を表示し、不要になると木製パネルへと回転して隠す「ローテーティング ダッシュボード」だったが、それを進化させてダッシュボード全体がデジタルインターフェースとして使える一方、オフにすればヴェニアの美しい表面が現れ、クラシカルで上質な雰囲気に変化する仕様へと進化。

 ダッシュボード中央の奥には、複数の細いパーツが動き・光る、時計のような装置が搭載されており、これはデザインチームによって「メカニカル マーベル」と呼ばれ、ナビげーションやバッテリ残量などの情報を表示するだけでなく、機械芸術のような美しさを持ったビジュアル系オブジェクトにもなる。

センター部分はバッテリ残量やカーナビなども芸術的に表示してくれる