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日産、2025年度上期決算は売上高6.8%減の5兆5787億円の一方、為替や関税、インフレのマイナス影響で営業損失277億円、当期純損失2219億円

2025年11月6日 開催
2025年度上期の決算説明会で登壇した日産自動車株式会社 社長兼最高経営責任者 イヴァン・エスピノーサ氏

 日産自動車は11月6日、2025年度上期(2025年4月1日~9月30日)の決算を発表した。

 2025年度上期の売上高は前年同期(5兆9842億2100万円)から6.8%減となる5兆5786億8700万円、営業利益は前年同期(329億800万円)から赤字化して-276億5300万円、営業利益率は-0.5%、経常利益は前年同期(1160億5700万円)から赤字化して-779億3000万円、当期純利益は前年同期(192億2300万円)から赤字化して-2219億2100万円。また、グローバル販売台数は前年同期(159万6000台)から11万6000台減の148万台となった。

2025年度上期の日産自動車財務実績

2025年度上期は売上高以外の主要財務項目が赤字化

日産自動車株式会社 CFO(最高財務責任者)ジェレミー・パパン氏

 2025年度上期の決算内容については日産自動車 CFO(最高財務責任者)ジェレミー・パパン氏が説明。

 前年同期(159万6000台)から7.3%減の148万台となったグローバル販売台数については、中国を除く販売台数は前年同期から4.5%減となっているが、第2四半期からは改善の兆しが見えはじめ、北米市場の販売台数は前年同期比で6.7%増となり、中国市場での販売についても6月以降は15か月ぶりに前年実績を上まわる結果となっている。

 好調な北米市場では、メキシコで販売台数が8%増でマーケットリーダーの地位を維持。また、中国での直近5か月では「N7」が販売を牽引して前年超えとなっている。

 日本市場では上期実績が対前年比16.5%減となっているが、7月から開始したマーケティングの強化、販売会社を対象としたプログラムの変更などによって回復の兆しが出てきているという。欧州市場でも苦戦が続いているが、これはモデルイヤーの切り替え、競争の激化という要因の影響が一時的な減少を招いたものとしている。

2025年度上期と第2四半期の市場別販売台数

 財務実績については、277億円となった営業損失は当初想定していたものより改善した内容と説明。また、純損失となった2219億円については、主に持分法適用会社の利益減少とリストラクチャリング費用、減損処理が理由になっているとした。

 営業利益の増減分析では、「為替」で645億円、「関税」で1497億円、「インフレーション」で500億円の減益要因となり、増益要因の「販売パフォーマンス」「モノづくりコスト」といった営業努力や、第1四半期に行なったサービス補償費の減少や米国での排出規制変更に伴う引当金取り崩しといった「一過性」などの要因でも打ち返せなかったことを説明した。

2025年度上期における営業利益の増減分析

通期業績見通しの売上高を11兆7000億円に下方修正

2025年度通期の業績見通しで売上高を12兆5000億円から11兆7000億円に下方修正。営業利益は-2750億円、営業利益率は-2.4%とした

 2025年度通期の業績見通しでは、7月30日に行なった第1四半期決算説明会で公表した売上高を12兆5000億円から11兆7000億円に下方修正したほか、これまで未定としていた営業利益を-2750億円、営業利益率を-2.4%と発表。当期純利益については引き続き未定としており、これについてパパンCFOは「Re:Nissanの取り組みがさまざまな影響を生み出しており、現時点でも正確な予測を示すことが困難だった」としている。

2025年度通期の生産台数見通しはこれまでどおり300万台
2025年度通期業績見通しにおける営業利益の増減分析
2025年度上期決算のサマリー

Re:Nissanは目標実現に向けて着実に進捗

経営再建計画「Re:Nissan」の進捗状況について説明するエスピノーサ社長

 パパンCFOによる決算説明に続き、5月に発表した経営再建計画「Re:Nissan」の進捗状況を日産自動車 社長兼最高経営責任者 イヴァン・エスピノーサ氏が説明した。

 エスピノーサ社長は「コスト構造の改善」「市場・商品戦略の再定義」「パートナーシップの強化」の3点を主要な柱として、2026年度中に自動車事業の営業利益とフリーキャッシュフローの黒字化を目的に取り組んでいるRe:Nissanの内容を改めて説明したあと、それぞれの項目における進捗状況を説明。

 変動費の削減では発表から約半年となる11月現在で4500件の改善案が提出され、2000億円相当の改善効果を発揮できると算出。このうち3分の2以上が技術的な解決策で、「ヘッドライトの設計変更による効率化」「シート設計の最適化による材料費削減」といった具体例が示された。重要な原価低減策はグローバルモデルである「ローグ」「キックス」、北米向けの「パスファインダー」、日本向けの「セレナ」といった量産モデルで集中的に行なわれるとする一方、ユーザーが求める安全や信頼性、性能などを損ねない「品質第一」の考え方がすべてにおいて重要であるとの姿勢も併せて示された。

 このほかにも生産、物流、部品点数削減、サプライヤー企業との協業なども推進され、こういったアイデアの多くはコンセプトの段階からすでに実行に移っており、体系的な取り組みによって信頼性の高い持続可能なコスト低減を商品設計、事業運営に定着させながら「品質第一」を担保しているとした。

 固定費については上期で800億円以上の経費削減が決定され、2025年度末までに1500億円以上の削減を目指して取り組みが進められ、2026年度末までに目標の2500億円削減を達成すると自信を見せた。

 生産拠点では予定する7か所のうち6か所についてすでに発表。メキシコにあるコンパス工場については11月後半に生産を終了する予定となっている。開発コストではエンジニア1人に対して単価を20%削減するという目標に対し、現時点で12%まで進捗。部品点数の削減では大部屋活動の取り組みによって成果が生み出され、次期型ローグでは先代比で6割以上の部品点数を削減するという。

 このほか資産の最適化の重要な一歩として、神奈川県横浜市にあるグローバル本社で「セールスアンドリースバック」を実施。リース期間20年の契約を結んで施設売却を行ないつつ、引き続きグローバル本社で活動を続けながら地域社会にコミットしていくと述べた。本社売却で発生する利益の一部はAI主導のシステム構築やデジタル化の推進に充てられて改革に必要な投資に利用される。このような取り組みにより、コスト削減と同時にスリムでアジャイルな組織作りによって日産が勝ち残っていく体制につなげていくと述べた。

Re:Nissanでは3本の柱を中心に取り組み、2026年度中に自動車事業の営業利益とフリーキャッシュフローを黒字化する
変動費で2500億円、固定費で2500億円の計5000億円のコスト削減を行なう
変動費2500億円削減の目標に対し、すでに2000億円分の削減案が創出され、多くが実行段階に移っている
グローバル本社は20年契約の「セールスアンドリースバック」で売却。従業員や事業に影響を与えずコスト削減につなげる

 市場・商品戦略では発表しているように、2027年度までに9種類の新型車を市場投入。今後はBEV「リーフ」のような日産のDNAとイノベーションを体現する「HEARTBEAT」モデル、「キャシュカイ e-POWER」「キックス」といった重点市場をリードする「CORE」モデル、販売開始からの6か月で累計4万台を販売した「N7」や軽自動車「ルークス」のようなパートナーとの協業で日産のカバー率を拡大させる「PARTNERSHIP」モデルに注力していく。

 また、「パートナーシップの強化」によって次世代のモビリティ時代における日産の立ち位置を強化。8月にはBOLDLY、プレミア・エイド、京浜急行電鉄と4社で横浜市で共同実施する「自動運転モビリティサービス実証実験」について発表。さらに9月には英国のWayveと協業して次世代プロパイロットに「Wayve AI Driverソフトウェア」を搭載すると発表。さらに10月には中国で販売する新型「ティアナ」にファーウェイのスマートコックピット「HarmonySpace5.0」をガソリン車として初採用しており、いずれも単純なパートナーシップにとどまらない戦略的な取り組みで、「日産をインテリジェントモビリティのトップランナーに押し上げるもの」と評価した。

販売するモデルを「HEARTBEAT」「CORE」「PARTNERSHIP」の3種類に分ける商品戦略
パートナー企業と協力して技術力を強化していく

 Re:Nissanの進捗説明が終わったあと、エスピノーサ社長は2025年度上期決算について総括。「上期の結果は当社が複数の課題に直面していることを物語っていますが、同時に日産が着実に回復に向かって歩を進めていることを示しています。当社は大きく前進しており、まだやるべきことはあるものの、将来の発展に向けた土台作りはできています。利益を回復するために断固たるコスト削減対策を実施しながら、今は次の段階に向け、新型車や重点市場、ブレイクスルーとなる技術について優先的に取り組みを加速させていきます」。

「下期も複数の課題に直面することが予想されますが、ブレない活動と規律正しい取り組みをもってすればよりよい結果を出せると信じています。日産には成長と価値創造を実現するために必要な戦略と商品群、そしてチームがそろっていります。日産は力を合わせてこれから進む道を切り拓き、自信を持ってチャンスをつかみ、イノベーションをリードしていきます」と締めくくった。

日産自動車 2025年度上期決算発表(44分32秒)