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日産、2025年度第1四半期は営業利益-791億円、当期純損失1158億円の赤字

2025年7月30日 開催
日産自動車株式会社 社長兼最高経営責任者 イヴァン・エスピノーサ氏

 日産自動車は7月30日、2025年度第1四半期(2025年4月1日~6月30日)の決算を発表し、オンライン配信に加えて神奈川県横浜市のグローバル本社で決算説明会を開催した。

 2025年度第1四半期の売上高は前年同期(2兆9983億9500万円)から9.7%減となる2兆7069億600万円、営業利益は前年同期(9億9500万円)から赤字化して-791億2400万円、営業利益率は-2.9%、経常利益は前年同期(651億2800万円)から赤字化して-1092億3100万円、当期純利益は前年同期(285億6200万円)から赤字化して-1157億5800万円。また、グローバル販売台数は前年同期(78万7000台)から8万台減の70万7000台となった。

2025年度第1四半期の日産自動車財務実績

変動費改善の効果が収益に表われるまでは少し時間がかかる

経営再建計画「Re:Nissan」の中核となる3要素

 説明会では決算の内容に先立ち、日産自動車 社長兼最高経営責任者のイヴァン・エスピノーサ氏から5月13日に公表した経営再建計画「Re:Nissan」の活動進捗について解説された。

 エスピノーサ社長はRe:Nissanの内容についてあらためて紹介。Re:Nissanでは2026年度までに自動車事業の利益とフリーキャッシュフローの黒字化し、これを土台として持続可能な経営回復を実現するため「コスト構造の改善」「市場・商品戦略の再定義」「パートナーシップの強化」という3点を計画の柱として活動を進めており、今回はこの中からコスト構造の改善と市場・商品戦略の再定義について説明した。

 コスト構造の改善では、2024年度実績から変動費で2500億円、固定費で2500億円の計5000億円を2026年度までに削減するためコスト構造の見直しを行なっており、変動費削減に向けて断固たる措置を講じて、大部屋活動によってスピード、規律、測定可能な効果を挙げるため改革を推し進めているという。

 活動では300人の専属人員に加え、3000人が長期的なプロジェクトを一時的に中断してコスト構造の改善に従事。これまでに4000以上のコスト削減に向けたアイデアが創出され、すでに1600件が実行段階に移っている。これらの活動により、現時点でコスト削減目標の3分の2に相当する効果のめどが立っており、規律あるコスト管理と迅速な改善に向けて固い決意で取り組んでいると述べた。

2026年度までに計5000億円のコストを削減する
3か月間の集中的な取り組みで4000以上のアイデアが創出され、すでに1600件が実行段階に移っている

 固定費削減の取り組みとしては、最終的に7か所について統合・削減すると発表した生産拠点のうち、同日発表したメキシコ・シバック工場を含めて5か所について具体的な内容を決定。

 これまでに発表しているように、アルゼンチン工場で生産しているピックアップトラック「フロンティア」「ナバラ」をメキシコにある生産拠点に移管。インドにあるルノーとの合弁会社「PNAIPL(ルノー日産オートモーティブインディア)」の持株51%をルノーに売却し、日産車の生産については継続。日本国内でも追浜工場の生産車種を日産自動車九州に移管して、2027年度末で車両生産を終了。2026年度末で日産車体 湘南工場に生産委託している「NV200」の生産を打ち切り、同工場における日産車の生産を終了。

 メキシコではシバック工場からアグアスカリエンテス工場に生産を統合し、2025年度末でシバック工場における車両生産を終了。これら以外にも、タイでは工場にある組み立てラインの一本化、米国と英国では勤務シフトの変更を実施するなど複数の効率化を推進している。

 生産以外の固定費削減を加速させるため、専門のタスクフォースチームを結成して、これまでに第1四半期期間だけで300億円以上のコスト削減を実現。通年での目標達成にも道筋が見えていると述べた。

 また、「開発費で1時間あたりの平均単価を2割削減する」という目標についても達成に向けて明確なロードマップが策定され、タスクフォースチームはコスト効率を向上させるあらゆる機会をとらえ、バリューチェーン全体で経費総額の見直し、設備投資の精査を行なっているとした。

固定費削減の進捗状況

 市場・商品戦略の再定義の取り組みでは、2024年度の第4四半期に発表した新型車は好評を得ており、さらに2025年度第1四半期にも複数の新型車をデビューさせ、年度後半とそれ以降もラインアップ拡充を図っていく。この第1四半期期間にはクロスオーバースタイルに変貌を遂げた新型「リーフ」を発表し、2025年度中に米国、欧州、日本市場で発売する。

 さらに日本市場では軽自動車の次世代モデルや新型「エルグランド」を発表する計画となっている。米国でもPHEV(プラグインハイブリッドカー)の「ローグ」や「アルマーダ」「パスファインダー」「インフィニティ QX60」といったSUVラインアップを強化。さらに北米のコアモデルである「セントラ」も新型車を発売する予定。

 欧州では電動化された車両が市場をけん引していることから、BEV(バッテリ電気自動車)の「マイクラ」と次世代e-POWERを採用する「キャシュカイ」をすでに発表。販売シェアで首位をキープしているメキシコでは、好評を得ている「マグナイト」など、複数の新型車によってシェア拡大を目指していく。中国市場では新型「N7」などNEV(新エネルギー車)販売が好調に推移して、今後は中国製車両を輸出していく準備を進めていく。

2024年度から2025年度以降に予定する商品計画の概要

 2025年~2027年の計画であるRe:Nissanにおいて現在は過渡期であり、取り組みを決定しながら実行を開始。計画に沿って段階的に取り組みを進め、マイルストーンを設定しながら説明責任を持って活動していると強調。変動費改善については2025年度末から目に見える成果が出てくるとしながら、成果を刈り取るために事業運営の枠組みを変える必要があるため、効果が収益に表われるまでは少し時間がかかると語った。

 すでに説明しているように、生産体制の再編は2027年度の完了に向けて計画どおり進捗。パワートレーンの生産体制でも再編が進み、この進捗状況については時期が来た段階で説明するとコメント。人員削減も段階的に進め、これに合わせて各拠点の体制見直しを実施中。販売管理費の見直しも進み、開発のスリム化も順調に推移して、2027年度上期には成果が出はじめると見込んでいると説明。

 最後にエスピノーサ社長は、持続的な価値創造を目指しているRe:Nissanの取り組みでは、献身的で厳格な活動が推進されていると評価して説明を終えた。

Re:Nissanの進捗概要

売上高は9.7%減の2兆7069億円ながら、営業利益-791億円、当期純利益-1158億円の赤字

日産自動車株式会社 CFO(最高財務責任者)ジェレミー・パパン氏

 決算内容については日産自動車 CFO(最高財務責任者)のジェレミー・パパン氏が説明を担当。

 第1四半期の結果については「推定どおり控えめなスタート」と表現し、営業損失となった791億円については、一過性の増益と固定費の削減が進んだことが寄与して想定を上まわる水準になっていると説明。自動車事業におけるフリーキャッシュフローは3905億円のマイナスだが、手元資金となるキャッシュポジションは2兆円を超えており、堅調な水準を維持しているとアピールした。

 また、流動性のさらなる向上を目的として、7月に8600億円分の普通社債と転換社債を発行。これによって2025年度に満期を迎える負債の返済を十分にまかなえることになり、7月末現在の総流動性は3.1兆円となり、このうち2.1兆円は手元資金、1兆円は販売金融に向けた貸し付けになるほか、1.8兆円を未使用のクレジットラインとしている。

2025年度第1四半期のサマリー
資金調達と流動性の状況

 対前年比8万台減の70万7000台となったグローバル販売台数は、依然として厳しい状況が続いている中国市場が大きな原因になっていると説明。中国では市場競争が激化して、日産の合弁ブランドが主戦場としているノンプレミアム市場が縮小している一方、中国メーカー間で価格競争が激しさを増していることを受け、販売台数は対前年比で27.5%減少した。

 また、日本市場では「軽自動車セグメントの競争再燃」と「日産に対する消費者の信頼低下」を原因として対前年比11.1%の販売減。北米市場でも「関税の影響」と「競争環境の変化」によって対前年比2.4%の販売減となっており、米国製車両の販売活動を強化しつつ、個人向けの小売り販売を優先してレンタカー販売を抑制する施策で対応。この施策が徐々に成果を発揮して、月を追うごとに小売りシェアが改善していると説明した。

 そのほかの市場では、ブラジルで販売する「キックス」がモデルチェンジ時期を迎えていることで販売が頭打ちになり、一方中東では好評を得ているマグナイトと新型「パトロール」の導入が販売を牽引していることなどを紹介した。

2025年度第1四半期の販売台数と生産台数

 -791億円となった営業利益の増減分析では、米ドルとカナダドルの下落の影響により「為替変動」で397億円、「関税影響」で687億円、「インフレ」で259億円をそれぞれ減益要因として説明。

 250億円の増益となった「モノづくりコスト」では、変動費が増加した一方で固定費の改善、生産設備の償却費減少を要因として紹介。また、サービス補償費引き当ての見直しを行なったことによる「一過性影響」として289億円を増益要因としている。このほか、販売金融とリマーケティングによって190億円の増益要因が出ているが、CO2排出規制に関わるコンプライアンスコストが発生してこの効果を打ち消しているという。

営業利益の増減分析。「一過性影響」を除いた場合は1090億円の営業損失となっている

 2025年度の通期見通しでは、5月の期初発表で示した325万台の年間販売台数について変更を行なわず、売上高についても期初公表の12兆5000億円をそのままとしたが、市場環境で米国の関税政策によって不透明な状況が続いていることから、営業利益、営業利益率、当期純利益などの詳しい通期見通しの提示は現時点で控えたいと述べた。

 なお、すでにスタートしている第2四半期については、売上高2兆8000億円、営業損失1000億円、営業利益率-3.6%、自動車事業のフリーキャッシュフローは-3500億円を想定しているが、季節的なパターンによって下期には自動車事業のフリーキャッシュフローがプラスに転じる見込みだとパパン氏は語っている。

 最後にパパン氏は、「Re:Nissanの実行を急ぐことが求められています。同時に、第2四半期は一過性の項目を除いた第1四半期に対して一定の改善を見込んでいます。先ほどエスピノーサがお伝えしたように、Re:Nissanは単なる目標ではなく、日産の全社的なコミットメントです。明快な監督体制と機能横断的な実行により、Re:Nissanは当社の競争力向上に寄与します。従業員とパートナーの皆さまの強い決意とご協力にあらためて感謝申し上げます」と締めくくった。

2025年度の通期見通しでは、営業利益、営業利益率、当期純利益について前回同様未定とした
グローバル販売台数は325万台、生産台数は300万台を見込む
日産自動車 2025年度 第1四半期決算発表(46分46秒)