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ブリヂストン、次世代タイヤ「エアフリー」装着のグリーンスローモビリティを使用した全国初となる実証実験を富山市で開始

2025年11月8日 開催
ブリヂストンはパンクしない次世代タイヤ「AirFree」を装着したグリーンスローモビリティ実証実験を富山市で開始。2025年11月8日に出発式を開催した

 ブリヂストンは、空気の充填が不要な次世代タイヤ「AirFree(エアフリー)」を装着したバスタイプのグリーンスローモビリティを使用した全国初となる実証実験を開始するにあたり、11月8日に富山県富山市にて出発式を開催した。

 出席者は富山市市長代理の富山市活力都市創造部長 深山隆氏、ブリヂストンから新モビリティ事業部門長 太田正樹氏、探索事業開発部門 探索事業AirFree開発推進部長 岩淵芳典氏、来賓としてブールバールエリアマネジメント富山 事務局長 市森友明氏、順天堂大学大学院 教授の米津雅史氏、アイカワ 専務取締役 相川喬氏だ。

富山駅に近い会場で出発式を開催。こちらは出席者によるテープカットのようす
会場近くには立山連峰が見えるビュースポットがある。春には手前に桜が咲き、桜と山の風景が楽しめるそうだ

 ブリヂストンはサステナブルの成長に向けた試験的な事業として、パンクしないAirFreeタイヤ活用を推進している。

 AirFreeは空気の代わりに、リサイクルが可能なスポーク形状の熱可塑性樹脂でクルマの荷重を支える。パンクの心配がないだけでなく、空気の充填が不要になることなどからメンテナンス性の向上と安定した稼動が期待できる。

 AirFreeの外観上の特徴であるスポーク形状の樹脂部には、薄暗い時間帯でも視認性を最大化できる青色を採用することで周囲から認知されやすくなるといった効果もある。こうした面からもAirFreeは安全・安心な移動をサポートするものになっている。

株式会社ブリヂストン 探索事業開発部門/探索事業AirFree開発推進部長 岩淵芳典氏がAirFreeについて解説を行なった
ブリヂストンが開発を進めるAirFree。空気の代わりにスポーク形状の熱可塑性樹脂でクルマの荷重を支える。スポーク部分が長い方が設計の自由度は高い。スポーク長については今後も研究していくという
AirFreeの構造で特徴的な部分。青色は薄暗い時間帯でも視認性がいいことから採用されている
トレッド面は平らではなく通常のタイヤ同様に少しラウンドしている。こうなったのは1年ほど前で、開発初期は平らだったそうだ。現状はタイヤに回転方向がある
ホイールサイズは12インチ。タイヤ直径は550mmほどで145/80R12相当
トレッドの山の高さは通常のタイヤと同じ。AirFreeはトレッドが摩耗したらトレッド部のみ張り替えて再利用ができる
AirFreeは内部の空洞やビードがないので、分割できる専用ホイールを使い挟み込んで装着する
装着した状態での路面との接地面。多少のたわみがあり、走行中もたわみを繰り返している。このあたりの具合も通常のタイヤと同じレベルとのこと

AirFree装着のグリーンスローモビリティ「Boule Baas」出発式

 富山市は公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくりを政策の柱に据えていて、その要となるのがグリーンスローモビリティ「Boule Baas(ブールバース)の運行事業。これは市内の主要な公共交通網を補完するものとして市民に大きく貢献している。

 このグリーンスローモビリティの運行事業とブリヂストンのAirFree事業は、共に地域社会のモビリティの維持や発展を目指すものであり、互いの考える方向性が同じことから、ブリヂストンと富山市は2025年2月13日に「グリーンスローモビリティ運行事業に関する連結協定」を締結している。そして今回の出発式はその取り組みの具体的なものである。

 現在もグリーンスローモビリティは利用者の利便性や安全性を高めるものではあるが、AirFreeの導入は地域住民の移動の質を改善し、さらには先進的なまちづくりに寄与するものとなる。

富山市 活力都市創造部長の深山隆氏

 今回の出発式では運行前に関係者によるあいさつが行なわれた。最初に登壇したのは富山市市長 藤井裕久氏代理の富山市 活力都市創造部長の深山隆氏。

 深山氏は藤井市長からのあいさつを代読し、富山市は人口減少と少子超高齢社会が進行する中、公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくりを政策の柱に据えてさまざまな施策に取り組み、将来を見据えた持続可能なまちづくりを目指しているという。

 そしてその要となる公共交通としてコミュニティバスの運行を始め、近年では新たなモビリティサービスとしてAIオンデマンドバスや自動運転バスのスローモビリティの運行事業などに取り組み、クルマを自由に使えない高齢者など交通弱者の生活の足の確保に努めている。そしてバスタイプのグリーンスローモビリティであるブールバールは、令和2年度から富山駅北地区において社会実験を実施し、令和5年度には本格運行が開始された。

グリーンスローモビリティーのブールバール
8輪車になっている
車内は対面のベンチシートで9人乗り
富山駅周辺で運行され、停留所も設けている。料金は100円/人

 そして2025年2月にブリヂストンと締結した連携協定に基づき、技術開発が進められている空気充填が不要な次世代タイヤのAirFreeを装着した車両による実証実験を行なうこととなったと説明。

 また、「多様化する市民ニーズや深刻化する労働力不足に対応するためには、官民連携での取り組みが重要であり、今回の実証実験が公共交通が抱えるさまざまな課題解決に向かうものとなり、公共交通のイメージアップや富山市の公共交通の活性化、地域振興に寄与することを大いに期待している」とも語った。

株式会社ブリヂストン 新モビリティ事業部門長 太田正樹氏

 次にあいさつに立ったのは、ブリヂストン 新モビリティ事業部門長 太田正樹氏。太田氏によると、ブリヂストンは2050年までにサステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値、顧客価値を持続的に提供している会社となるビジョンに掲げ、サステナビリティを経営の中核に添えたさまざまな取り組みを進めていくとのこと。

 そして社会価値の創造を目指す探索事業を新たな種まきと位置づける中で、空気充填が不要な次世代タイヤのAirFreeは、地域社会のモビリティを支えるというミッションのもと、その価値提供を通じて地域社会への貢献を目指し、開発実証、価値検証に取り組んでいると説明した。

 さらに「富山市北エリアの交通において、AirFreeが安心安全であることはもちろん、サステナビリティやメンテナンス効率化といった新たな価値を提供し、富山市の皆さまの移動を支えることができれば大変うれしく思います。ブリヂストンは安全を全てに優先するという安全宣言を経営の基盤に置いております。本日より開始する実証実験においても、利用者さま、運行者さま、その他全ての皆さまの安全を最優先に取り組んでまいります。そして来年には社会実装を目指してまいります」と結んだ。

ブールバールエリアマネジメント富山の事務局長 市森友明氏もあいさつ。グリーンスローモビリティの運行は同社が受け持っている
参加者によるあいさつの後はAirFreeを装着したブールバースが式場から乗客を乗せて運行開始。歩道に見えるがこのスペースは公園として整備されたところで、ブールバースは園内を走行する許可を受けている
園内をしばらく走行したあとは車道走行となる。車内は対面のベンチシートで9人乗り
2025年は11月まで運行。2026年の運行再開時はAirFreeの管理を富山市に任せた本格的な実証実験が開始される。富山市に行くことがあればAirFreeの走りを体験してみてはいかがだろうか