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藤島知子の「FCR-VITA KYOJOクラス」参戦レポート

第3回:2025年シーズンの締めくくりに120分の耐久レース「MEC120」に参戦しました

2025年12月20日 開催
240号車「OPTIMUS☆BBS☆MOMOVITA」で参戦した藤島知子選手(左)と見崎清志選手(右)

 2025年12月20日、富士スピードウェイの富士チャンピオンレース 第7戦において「MEC120」が開催された。2025年は「VITA-01」を使用する「FCR-VITA KYOJOクラス」に参戦してきた私、藤トモはレジェンドドライバーの見崎清志さんとペアを組んで「VITAクラス」に参戦することになった。

「MEC」はMinutes Endurance Challengeの略で、その名の通り、120分を走りきる耐久レース。MEC 2025シリーズは第1戦がモビリティリゾートもてぎ、第2戦は鈴鹿サーキット、第3戦は岡山国際サーキットで開催されてきたもので、第4戦となる今回は最終戦となる。参加車両はウエストレーシングカーズが製造しているレース専用車両「VITA-01」の33台、2.0リッターエンジンを搭載してよりパフォーマンスの高い「v.Granz」の24台がエントリーし、グリッドがフルに埋まるほどのレースとして盛り上がりをみせている。

 昔と比べると、モータースポーツは下火ではないかと思われている人もいるかもしれないが、ここ10年を見ているかぎり、参加型レースは盛り上がりをみせている。公道を走れるナンバー付きの単一車種で競い合うトヨタのヤリスやGR 86、スバル BRZ、マツダ ロードスターなどもその一例なのだが、MEC120の耐久レースについては、3名までのドライバーが登録できるもので、レース中は給油を伴う2回のドライバーチェンジが行なわれる。

「MEC120」第4戦のクラス分けは「VITA-01」と「v.Granz」それぞれに、アマチュアドライバーで構成する「Ama-Amaクラス」、プロとアマチュアドライバーで構成される「Pro-amaクラス」に分けられている。レースと言うと、とにかく速いドライバーが活躍して結果を出すことが正義とされがちだが、このレースはあくまでもアマチュアが主役。Aドライバーに登録するドライバーは必ずアマチュアでなければならない。

レーシングドライバーの福山英朗さん

 このレースのアドバイザーを務めるレーシングドライバーの福山英朗さんによると、「MEC 120はアマチュアがレースを学ぶ場」だという。レースは経験を積んできたドライバーほど、レースはただ走ればいいというものではないことの重要性を知っているものだ。エントリーする手続き、練習走行、予選を走り、決勝ではスタート進行に始まり、フォーメーションラップからスタート、もちろん駆け引きもある。何かあればセーフティカー(SC)が出たりして、運用された際はルールに従って走行しなければならない。戦う上で何がリスクになり、どう対処すべきなのかは、そうした一連の流れを経験することで、スポーツマンシップに則って、安全に戦い抜くドライバーに育つ場になっていくというワケだ。

240号車「OPTIMUS☆BBS☆MOMOVITA」で参戦するTeam Phoenix
240号車「OPTIMUS☆BBS☆MOMOVITA」で参戦するTeam Phoenixのピット
「MEC120」最終戦の富士スピードウェイは雨模様

 12月中旬の富士スピードウェイは気温も路面温度も低い。よりによって予選、決勝が行われる当日の天候は雨。240号車「OPTIMUS☆BBS☆MOMOVITA」で参戦する私たちTeam Phoenixは、木曜日からサーキット入りしていたが、それまでドライコンディションで走っていたため、気持ちはウエットモードにチェンジ。

 15分間の予選は見崎さんが出走。気温は10℃、降っていた雨は一旦上がり、他のカテゴリーのクルマが走ったことで路面は徐々に回復方向に向かっているように見えた。全車がニュータイヤでの走り始め、後半になっても全体のラップタイムがドライの時よりも10秒以上遅いところを見ても、乾いてきたように見ても、コンディションはまだ厳しい様子。

1番グリッドは空白のため56番グリッドからのスタート
VITA-01 Ama-Amaクラス参戦がわかるステッカーが貼られる
VITA-01 Ama-Amaクラスには4号車「グッドスマイル初音ミクVITA」の岡本悠希選手と片山右京選手も参戦

 決勝レースは全体で55番、VITAでは22番グリッドからの出走。私、藤トモがスタートと3走目を走ることになり、気温は13℃まで上がってきたものの、小雨が降り続き、これから強い雨になるという予報が出ている。当初はローリングスタートをする筈だったが、安全を考慮してセーフティカー先導による周回から始まり、5LAP目に差し掛かるタイミングで信号灯にグリーンフラッグが表示され、スタートが切られた。

決勝レースがスタート

 オープニングラップの1コーナーは予想していた通りに挙動を乱した車両が出て、イエローの信号灯が点滅している。100Rに差しかかると、上位クラスのv.Granzがラップタイムで遅いVITAを追い越していくが、100Rでラインをじゃましないようにと慎重にイン側のラインを辿っている隙に後方から来たVITAに抜かれてしまった。

 スタート直後は前のクルマのタイヤが巻き上げたウォータースクリーンで視界が悪い。全長4.5kmに及ぶ山間に面したコースはとあって、西側のエリアの方が明らかに雨量が増している。ストレートエンドで少し早めにアクセルオフして様子をみながら走ったが、その後、前の集団に近づこうとブレーキをつめていこうとすると、ABSがついていないタイヤは簡単にロックして、思う場所にアプローチできず、リズムがとれない。最終コーナーの途中でアクセルを踏み込んだら、リアが滑り出してカウンターをあてるはめに。レコードラインを外して、少しでもグリップが得られそうな路面を探しながら走ってみる。

 少しずつ前の集団に近づいたが、接触だけはしまいと慎重に走ってしまったら、ダンロップコーナーの進入でさらに一台に抜かれてしまう。背後を追いかけていくと勾配がきつい「GR-GTコーナー」でスピンしていた車両がいて、イン側にいた車両が逃げ場を失ってスピン。自分の走りに集中して前を目指す。

 バイザーが曇っているのか、それとも打ち付ける雨が強くなっているのか分からない状況の中、路面の雨量はますます増えている。ヘアピンの立ち上がりから300Rの入口に川ができ始めているので、足を取られないよう注意しながら加速していく。急勾配が続くセクター3でアンジュレーションが仕掛けられた路面はちょっとアクセルペダルを多く踏み増すとズルっと滑る。コース上に留まりながら走っていると、40分ほどでサインボードに『P』の表示。ピットロードの制限速度に注意しながらメカニックが待つ作業エリアに到着して、給油を行う。

120分の耐久レース「MEC120」の決勝

 各マシンが各々のタイミングでピットインをこなす中、この時点で私たちの「OPTIMUS☆BBS☆MOMOVITA」は全体で35番手。給油を伴うピットインは計測開始ラインから、ピットアウトラインを通過するまで、200秒以上滞在しなければならない。見崎さんがコックピットに乗り込んで走行を開始。50番手からコースに復帰し、雨量が多い状況で徐々にペースを上げていく。途中、後方から追い上げてきたv.Granzと軽く接触してスピンがあったが、再スタート。約40分の走行を経て、ピットインして給油。再び私が乗り込み、コースに出て行く。

 降りしきる雨で路面の水かさは増している状況だ。コース上を見渡すとイエローフラッグが出て、コースアウトして停車している車両が増えていた。MEC120はVITA-01だけで戦うスプリントレースと比べると、v.Granzと混走することが難しく、一方でレースを面白くする見どころでもある。

 VITA-01はドライもウエットも量産車のタイヤに近い溝付きのスポーツラジアルタイヤで走るものだが、v.Granzはドライ用のスリックタイヤもしくはグリップするレインタイヤを履き分けられるマシンで、パフォーマンスが大きく異なる。

レースは「Vitz RS」のエンジンを搭載する「VITA-01」と2.0リッターの「M20-FKS」エンジンを搭載する「v.Granz」との混走
2.0リッターの「M20-FKS」エンジンを搭載する「v.Granz」

 車速差が大きいマシンが混走する耐久レースは速いマシンにどう抜かせるか、また、それらに自分のペースをかき乱されずに淡々と戦っていく冷静さと賢さ、雨でも果敢に挑戦する強い気持ちが求められると痛感させられた。と言いつつも、気持ちを強く持とうと1コーナー手前のブレーキを攻めると、ロックしたり、オーバーランしてしまったりして、気持ちと実際の走りが噛み合わないのがもどかしい。その後、大きなトラブルはなく走り続けたが、私たちは最終的には全体で48位、VITA-01 Ama-Amaクラス17位でチェッカーを受けた。

最終的には全体で48位、VITA-01 Ama-Amaクラス17位でチェッカー

 私たちが参戦した「VITA-01 Ama-Amaクラス」で見事に優勝を勝ち取ったのは714号車「FinalLapRacing」の金本きれい選手と藤原大暉選手。「VITA-01 Pro-Amaクラス」では、121号車「ビーンズスポーツ☆SPM☆VITA」の大野俊哉選手、徳升広平選手、三上潤選手が優勝を獲得した。

 MEC120の総合優勝としては、v.Granz Pro-Amaクラスで参戦した15号車「岡部自動車アイフォア神戸v.Granz」で参戦した長島正明選手、前嶋秀司選手、銘苅翼選手が優勝を獲得している。

v.Granz Pro-Amaクラスの表彰台
VITA-01 Pro-Amaクラスの表彰台
v.Granz Ama-Amaクラスの表彰台
VITA-01 Ama-Amaクラス

 レーシングドライバーとしてまだまだ課題がいっぱいだが、今どき珍しく、ABSや横滑り防止装置などが付いていないアナログなマシンは、そのときの環境に応じてマシンをどう操るか、どういうセッティングがどういう挙動をもたらすのかを学ぶ上で勉強になることがたくさんある。一台のマシンを数人のドライバーで共有し、自分の強みと弱みに気づき、共に切磋琢磨していける環境が得られることは素晴らしいと思う。57台ものマシンがエントリーするMEC120。来季の展開にも注目してほしいと思う。